おおゆうしゃよはーれむばかりつくってなさけない
ハーレムよりもっといろいろほしいと思わんのかな?
「なあ山田、なぜ最近のクズ勇者ってのは魅了使ってハーレム作る奴ばかりなんだ?」
久々に休みがそろった俺たち3人は神都市に有名な抹茶氷を食べに来ていた。5月なのに暑苦しい日中には本当においしい。
シャクシャクと食っていると、そんなことを聞かれた。
「クズだから片っ端から女をモノにしたいっつうことだろ」
「いや俺が疑問なのはそこじゃない。宮川、仮にお前がファンタジーの世界に召喚され、いわゆるチート能力を得るとする。どう使う?」
俺ら3人のうちの唯一の妻帯者で子供もいる宮川が聞かれた。宮川は学生時代はモテモテで高校の時には「血のバレンタイン事件」と呼ばれる騒動を起こしたくらいモテた。その割には彼女も作らず結婚もずいぶん最近であったが。
「僕なら民衆の生活の糧になるような使い方するなぁ。でなくばチートっていうくらいだからこの世界に戻るためにその方法を探す」
「王の命令を聞いて魔王倒しに行くとかはどうだ?」
「僕はあんまりそういうのに興味ないからね。極大火炎魔法や核撃なんか使えてもたぶんやらない。蹂躙できても生き死にに手を染めるのは嫌だ」
「だそうだ山田。それでな、俺なんだが」
「伊勢、お前がハーレムつくるとかガラじゃねえわ」
最初に俺に問いを投げた伊勢は真面目系クズのデブである。ただクズなのは仕事上の能力とかであって人間性とかでクズなところは皆無だ。多分異世界に召喚されたら最初に死ぬ。隠し事をする王の嘘を見抜いたり、危険な場面で誰かをかばったりして死ぬ。能力が得体のしれないほうにとんがっている。
「俺が言うのもなんだがそう思う。ガラじゃないのもあるが、どうも美女よりどりみどりってのが想像できねえ。モテナかったことの弊害か?」
「それもあるだろう。あと俺から指摘するとすれば、お前は人間関係が煩わしいタイプだから仮にハーレム作れても作らねえわ」
「だよなぁ。そこで俺は指摘したい、なぜどいつもこいつもチートで得た能力を女ゲットに使うのに優先するんだ?俺は宮川と違いそういう危険なことに手を染めるのに躊躇がないタイプだから、多分魔王倒しに行くわ。魔王倒すのが目的で、結果として女性を得たとしてもそれは結果であり目的ではない。そうでなくば、復讐とかな」
「復讐系はすでにいるな。主人公だが」
「女性に興味ないわけじゃないけど、伊勢はそれよりも優先するほかがあるよね」
「目に見えるようだわ、魔王倒して帰ってきても姫との婚姻とか望まず、多分図書館とか魔術師ギルドとか作ってそこに籠る」
「僕もそう思う。伊勢はハーレムとかよりも自分の好奇心満たす方向に走る。知らないけど絶対そう」
意を得たりといった風で伊勢がポンと手を打つ。
「そこで話の最初に戻る。クズかつ俺のように女以外の自分の欲求を満たす奴がいてもいいと思わねぇ?ある意味クズ勇者は誠実だよな。そのまま第2の魔王となってこの世に君臨せず、ちゃんと魔王は倒しに行って帰ってきてるし」
「帰ってきて既存の王家とか姫とかを好き放題したいんじゃねえの?」
「そこが限界なんだよな。魔王倒して自分が世界最強とかなら、自分で国を興して自分で人集めとかやってみたいと思わんのかね?」
「国作り<<<女ってわけか」
「いや国作りと女集め並行してやってもいいんやで?実際に国の運営とか素人に無理だし、SIVみたいなわけにはいかんけどさ、傍若無人なわりには微妙にせせこましいというかなんというか。もっとゼロから俺がこの世を牛耳るぜ!みたいなクズ勇者おらんのかね」
「そんな気概のある奴はクズじゃねえんじゃねえの?」
「僕もそんな気概はないなぁ。嫁と子がいればそれでいいや」
「なんだかなぁ。せっかくのチート能力を持ち腐れているようで俺はどうも嫌だわ。第3者視点から見てるともったいない」
伊勢が苦々しい顔で腕組みをする。
食べ終わった器を店員さんが下げに来た。
「まあお前の言いたいことはわかった。そういうクズ勇者いないか俺も探しておくわ」
「僕も見ておくね。言われてみれば居なさそうでちょっと興味ある」
「おう、今度は愛知行ってみそかつでも食べようぜ。弓場とんは看板はよく見るが混んでて入ったこと無いから気になる」
「デザートは山に行くか」
「山は興味あるが恐ろしいなw」