表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

『選定』

 勢いよく扉を蹴破り、男が家に足を踏み入れた。

「失礼すんぞ」

 青と銀で彩られた甲冑を身に纏い、青色の短髪をしたその男、オーダイは自分と同じ身なりをした騎士を数人連れてきていた。

「な、なんじゃ貴様らは!」

「あんたがガンドか?」

「そうじゃが、人の家に入る時の礼儀ってものを知らんのか!だいたい―――」

 説教を始めようとしたガンドにオーダイはその冷たい視線で一瞬にして怯えさせた。

「黙れよ」

「うっ…」

「俺は天葬騎士団、副団長のオーダイってもんだ。お前がこのクソ民族で族長の次に偉い奴だと聞いてきたんだが、あってるか?」

「あぁ、間違いはないが…一体何の用じゃ?」

「実はな、あんたらの族長、名前はなんて言ったかな?まあいいか。その族長だが、明日処刑されることになった。処刑理由だが、謀反罪と傷害及び破壊行為によるもの。あんたらの族長はこちら側の決定に従わず、会議中に暴れ出してな、怪我人を数人出したんだ。それで、これが処刑執行許可書の写しだ。取っておけ」

 オーダイはガンドが座っていたテーブルに封書を乱暴に投げ渡した。ガンドはそれを開き、中身を読み進めていくうちにみるみる顔色が悪くなっていった。

「こ、これは…本当なのか?」

「あぁ、事実で決定事項。もう誰も変えられない。だが、俺がここへ来た理由はそんなことを伝えにきたわけじゃない。ここからが本題だ」

「??」

 話を見えないガンドを余所にオーダイは話を進めた。

「既に族長自身の処分は決まったが、このクソ民族の処分はまだだ。あんたらがスナス人の子孫であるか、どうかのな。そこで、ラーゲベルダ元老が下した処分を伝えにきた」

 淡々と話を進めるオーダイだったが、その表情は今にも胸糞悪いと言葉を吐き捨てそうなものだった。

「俺は気に喰わないが、元老はこんなクソ民族にも慈悲を与えてくれるそうだ。だから、選択しろ。最初の処分通り、民族の繁栄禁止及び滅亡か、或いは―――」

「ガンドさん!大丈夫ですか?」

 話を遮ったのはルナとログダンだった。二人は入ってくるなり、すぐにガンドに駆け寄った。

「おい!じいさん、怪我はないか?」

「ちょっと、貴方達!一体何の用なの?」

 二人は威勢良く騎士に刃向かう態度を見せた。オーダイは明らかに浮遊族にとって招かれざる客だった。

「存続の為にこのクソ民族の浮術だったか?あれの全てを国に渡し、そしてこのクソ民族に徴兵制を敷き、国の管理下で生活するか。まぁつまり、国の奴隷になれってことだ」

「な、なんと言うことを…本当にそれが元老の総意だというのか?」

「ラーゲベルダ元老は前の甘っちょろいクソじじいとは違う。お前達は張本人だから、この国が抱える民族問題くらいは知ってるだろう?多種族が自分勝手に横行しているこの国が変わる時が来たと、国の意志が統一される時だとラーゲ様は仰った。それが『選定』だ」

 気分良さそうにその事実を突き付けた。

「お前達は選定の第一号になれたんだ。喜ぶんだな。あの男は答えを出さずに暴れ出したから、処刑されるのさ。まぁ、これは選定という名の迫害だがな。暴れてくれたのは有難かったぜ?ハハハハハハ!あぁ、そうだ。おい!」

「はい」

 背後にいた騎士から書類を受け取ると、それをガンドの目の前に差し出した。

「もし、後者を選ぶのならこれに署名してくれな。一応、今日一日は待ってやるからよ。答えが出たら、こっちまで来てくれよ。ここは田舎だから泊まれる街もねぇし、その辺でキャンプしてるからな。じゃあ、用も済んだし俺は帰るぜ」

 オーダイと数人の騎士は踵を返し、家を後にした。

「ガンドさん。これはいったいどういうことなんですか?」

 ルナの質問を意に介せず、ガンドは神妙な面持ちで言い放った。

「ルナにログダンよ。皆を集めてくれ。この村の大人達全員をだ」

「は、はい」

「分かったぜ、じいさん」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ