天葬騎士団
「あーあ…」
「もう…イセトがバカみたいな事言い出すから…」
「はぁ?僕じゃないでしょ!?レイルが……どっちにしてもルナ姉を怒らせちゃったのが間違いだったよね…」
二人は集落のはずれでとぼとぼと肩を落として歩いていた。気を落としているせいか、その足取りに目的はなく、二人はここまで歩いてきたことさえ分かっていないのかも知れない。
「ねぇ、そう言えばさ、イセトってもう浮術はどこまでできるようになったの?」
「僕?僕はね、我浮と、後は別浮がちょっと出来るくらいかな。まだ連浮とか浮念とかは全然だけど…」
「じゃあさ、私が浮術を少し教えてあげようか?私は連浮も大体できるくらいになってきたし」
「なんか、レイルに教えられるのはちょっと癪だけど、お父さんに褒めてもらう為には仕方ないよね。じゃあお願いするかな」
「じゃあ、私がいつも練習してるとこ行こっか」
「うん」
二人は練習場に向かおうとしたが、レイルだけがすぐに足を止めた。イセトもそれに気付き、振り返った。
「どうしたの?レイル」
「ねぇ、あれ…天葬騎士団じゃない?」
レイルの指差した方向は集落の入口でそこには青と銀の甲冑を身に纏った騎士が数人佇んでいた。
「てんそーきしだんって何?」
「天葬騎士団ってのはね、国が抱える三つの騎士団の内の一つよ。確か、指揮権は左大臣か元老だった筈。後は戦争担当大臣をしている、通称、血雨のゼーヴンが団長を務める烈皇騎士団、それにたったの十人で構成された少数精鋭の厳禅騎士団があるのよ」
「ふーん。やっぱり、レイルは物知りだね。流石は医者の娘だ。その騎士様達がこんなとこに一体何の用だろうね?」
「なんでもかんでも医者の娘で済まさないでくれない?まぁ、私がなんで騎士様達が来てるかなんて知る訳ないじゃない。でも、なんか嫌な予感がする…」
「まぁいいじゃん。僕達は関わらない方がいいってさっきあれほどルナ姉に怒られたんだからさ」
「そうだよね。行こっか」