おいしい店には裏がある
「おう、ここだ」
コッズが案内してくれたのは、黒板にあるメニュー表が店の前に置かれ、少し日本にあるような穴場カフェのようなこじんまりとした賑わっていない店だった。
おいしい料理の匂いが店の外まできている。
「おしゃれな店じゃないか。日本にありそうだな」
扉におそらく開店中と書かれてあり、取っ手を引いてなかに入るとカランと小さく音が鳴った。
喫茶店みたいだ。
「「いらっしゃいませー」」
「!」
思わず後ろによろめき、コッズにもたれかかってしまった。
「あれ?あれ?」
「初めてのお客さん?」
「「だったら驚くよねー」」
髪型、体型、服、アクセサリーの位置、全てにおいて揃っている男二人がそこにいた。
「ふ、双子か」
声が少し違うくらいで外見まったく同じじゃないか。
しかもなんてもん着てるんだこいつら。
青と赤のハーフ&ハーフのスーツって・・・しかもピアスに小さい鈴か、あれは。
「俺はメリー。兄な!」
「俺はミリー!弟!」
「「あとはねぇちゃんと3人で絶賛営業中!」」
すごい、自己紹介をくるくる回りながらこいつら始めてきた。
なんだここは。
まぁ、いいや。
「席、勝手にすわるから」
わけのわからんもんはスルーだ。
コッズが呆れ顔で双子を見ているが、それを無視して裾を引っ張り入口近くの席に勝手に座る。
「とりあえず水とここのオススメ3人前ちょうだい」
メニューも見ずに勝手に注文をつけると、コッズからジト目で見られた。
「お前、適当に決めるなよ」
「なに、食えないのでもあるの?」
好き嫌いは良くないぞ。
じっと見つめ問いかけるとまたため息。幸せこれで何回逃げた?
「ない。あーもう、それで」
私の髪の毛をぐしゃぐしゃと乱すのはやめてもらおうか、まったく。
むしゃくしゃしたなら自分の髪でやれ。
「「はいはーい!ねぇちゃん!今日のオススメ3つ~」」
シュッと目の前に銀の何かが横切った。
「メリー」
「・・・は、はい」
「ミリー」
「ははははいぃい!」
「お姉ちゃんじゃないでしょう?」
「「はい!すみませんでした!シェフ!」」
髪の毛を綺麗にまとめてお団子に縛っておられるコック服を着たお姉様がいた。
どうやら先ほど双子から聞いた姉のようだ。
眼鏡を掛けていて、とても美しい。
しかし、今の銀色のものは一体・・・・あ、なんか扉のとこに刺さってる。
「おい、マリー。あぶねぇだろうが」
コッズが扉に刺さっているナイフを引き抜き、お姉様に渡す。
「あら、私の腕は知っているでしょう?」
美艶と微笑んでナイフを受け取り、こちらの方へにっこりと笑顔を振りまいてこられる。
「あら、可愛らしい。ねぇ、こんな髭づら親父なんか弟たちに任せて一緒にどこか行かない?」
こ、これは世に言うナンパ!?
ど、どうしたことか・・・・女なのにどきどきしてきた。
「やめんか。さっさと注文したやつ作れよ。こっちは食いに来てるんだ」
思わずハイと返事をしそうになったがコッズが割って入り、マリーさんは厨房に戻って行った。
弟たちに低い声でさっさと水をお出ししろと言ったのは気のせいだろうか。
青い顔してるぞ、双子。
「この店、店員はああだが、飯は美味いぞ」
ああね。
なんとなくあまり人がいない理由がわかった気がする。
私たちしかいないからか、双子が机の上で腕相撲を始めている。
何してんだこいつら。
「オススメ3つ上がったわよ」
腕相撲3回勝負でミリーが勝ったところで注文していたオススメが届いた。
一つを外にいるムーに食べさせてあげるように頼むと、双子は料理を乱暴において外へバタバタと目を輝かせて出て行ってしまった。
なんだ、ここの接客は。
こいつらが原因で繁盛してないんじゃないか?
まぁいいや食べよう。
旨いと言ったコッズは正しく、今日のオススメはオムライスだった。
半熟とろとろのデミグラスソースのようなものをかけてあり、スープ付き。
あつあつの料理の後はデザートもついていた。
バニラスフレのようなものと、酸味が聞いたアイスと甘酸っぱいベリー系の果物がかわいらしく1プレートに載っている。紅茶と一緒に頂いた。
とっても満足。
会計をコッズに任せて外へ出ると、ムーが双子に触られていた。
「もふもふー」
「ふっかふかー」
「「ねぇ、こいつちょうだい」」
満足度が100になろうとした時点でレストランから出たのに、こいつら見たらパーセンテージが下がった。
10mくらい双子から距離を取って、双子に向かって手を降る。
「なんか手降ってる?」
「振りかえすか」
「「おーい」」
にこやかに笑顔で手を振り返した二人に向かって助走していく。
1m前に飛び上がり、両足を双子が重なって見える位置へ向けた。
「な、なにおっ」
「ちょ、ちょいっ」
誰が聞くか
「「げふっ!!」」
双子から少し離れたところで膝についていた塵埃を取る。
「私は自分の我が儘しか受け付けんのだ」
少し頭を打ったのか双子は目を閉じて唸っている。
それを踏んでチョコの元へ。
会計が終わったのかコッズが出てきたが、すぐに頭を抱えてしゃがんでしまった。
なんでだ。
登場人物一気に増えました。