取り調べ
ムーを手に入れた後コッズに町の入口近くにあった警備隊詰所に連れてこられた。
年代物らしい建物は、外観がボロボロで、中に入ると素人が補修したのだと
すぐにわかる修繕跡でいっぱいだった。
そして男だらけでむさくるしい。
「で、坊主。一応職務上質問しなきゃならないから答えるように」
簡易的なテーブルと椅子がある部屋に通されて、そこに座らされる。
どうやら職質みたいなことを行うらしい。
真面目に答えなければ。
「この町に入ってきた人間は全てチェックしている。で、新顔がいればすぐわかるわけだが・・・
お前さん、この町初めてだよな?」
「はい」
「どこから来た?」
「エペ草原」
「・・・・・ここに来た理由は?」
「住む場所探しに」
「・・・・・・・・・ここに知り合いがいるのか?」
「パン屋の息子サイク」
「ああ!あの坊主の知り合いか!」
「エペ草原でさっき初めて会った」
「・・・・お前さぁ、真面目に答える気、ある?」
失礼な。真面目に答えた。嘘は言ってない。
ただ、本当のことも言ってないけど。
言ってもわからんだろう。
やはりここは穏便に済まそう。
「すまない、田舎から出てきてな。大陸の辺境から来たからいまいち喋ることに慣れてなくて」
「辺境?南の方か?」
「ああ、南の近くの村でも名前の知られていない洞窟に住んでいてな。
小さい頃親と離れ離れになってその洞窟に住んでいたじいさんと暮らしてたんだが、
つい先日じいさんが亡くなってな・・・遺言で人間と関わって生きろって・・・」
・・・・ちょっと嘘がすぎたかな。
ちらりとコッズの方を見ると目に涙を溜めている。
「お、おまえ、苦労したんだなぁ!」
顔がえらいことになってきた。
これは嘘だと言えんな。突き通すか。
「こんな身の上話聞かせてすまない。それでじいさんには言葉と護身術ぐらいしか習ってなくてな・・
字が読めないし、世界情勢も知らないんだ・・・」
コッズ、いいやつだな。こいつに嘘をつくのはこれっきりにしよう。
顔を見ただけで不憫に思えてきた。
とりあえず泣き止んでくれ。
「そ、そうか!よし!お前、うちに入れ!」
「え?」
顔をぐしぐしと袖で拭って汚いなと思っていたら何を言い出した。
「今日からお前は警備隊だ!」
・・・・・だめだろうそれは。
「だめに決まっているだろうが」
今まで話していたゴッズの代わりに妙に顔の整っているメガネ男が現れた。
下を向くとガンっと本の角で頭を叩かれたコッズが頭を抑えている。
「総長!ひどいじゃないですか!」
「ひどいのはお前の頭だ。コイツの嘘も見抜けないとはな」
「え、嘘なの?」
「ええ、まぁ」
スローモーションのように顔を隠してひどい!と床に倒れこむコッズ。
女々しいわ。
「で、本当のところどうなんだ?」
「あー、なんか嘘ついても通じなさそうなんでいいますけど。
私は頭がおかしいとかじゃないですから。言った後の苦情は受け付けませんよ?」
そのメガネが光ってちょっと怖い。先生を目の前にしたかのようだ。
最初から話すか。言ってだめならその時はその時で。
かくかくしがじかで、異世界からどうやってゴーラ港まで来たことを話してみる。
「アキとやらがどういう経緯でゴーラに来たのかはわかった。
問題は、異世界・・・ということか」
「そうですね、やはり首都にある魔術研究所に・・・」
いつの間にか復活したゴーラとメガネさんが話し込んでいる。
ん??
なんかおかしな単語が・・・
「あ、あのー、魔術って、あの魔術ですか?火を出したり水出したり」
「「あたりまえだろう」」
まじか!!!
登場人物が増えてきました。次回メガネ男の名前がわかります。