(3)
「パートナー、って誰かわかったりしないのか」
彼方は自室で呟く。 とても面倒臭そうな気持がその言葉には込められていた。
『私をなんだと思っているのですか、わかるわけがないでしょう』
アリスは呆れ半分で生返事した。
『彼方が気にしないといけない事はそのような事ではありません、勉学の事です』
「勘弁してよ、今日は疲れたんだ」
疲れた、という言葉にウソは無い。
初めての実戦、文字通り命懸けで戦って疲れない人間なんていうのは壊れているだけだ。
『別に良いですが、次の戦闘までに学ばなければ彼方の駆逐者としての資格は全て剥奪されますよ』
「え、まじ?」
『当たり前です、そのレベルで彼方は物を知らないのだと自覚するべきなのです』
「面倒くさいなぁ」
『逆に考えてください、あまりにも常識が無いので当たり前の所だけでも学べばどうにかなります』
「言い過ぎだよな、流石に?」
『事実です』
「あー、わかったよ」
頭を掻き毟りながら彼方は呟いた。
「今日、徹夜で学んでやる。 だから、明日は俺の自由にさせろ」
『……いいですけど、自由にさせるってどういう事ですか』
「外出する、アリスもついて来い」
『何処へ行くつもりですか、そもそも学校にも行かずに何処かへ行くなんて行為を葵さんが許してくれると思っているのですか』
「今回はしてくれる、そもそも無断で出て行ったって多分見逃してくれる」
彼方の顔に少し苦笑が映る。
「ま、駆逐者になったんだ。 挨拶ぐらいしておくべきだ」
『なんの事かわかりませんが、今すぐ準備してください』
「勉強? ゆっくりでよくないか? 徹夜でするんだろ」
『明日、空きませんよ?』
アリスの声には自分勝手な上に常識が無さ過ぎた彼方への怒りで満ちていた。 行方の強すぎるが故の無謀な突撃から無知故の神風に等しき突貫に悩みの種が変わるとは夢にも思っていなかったのだ。