プロローグ
蒼創彼方は碧空の空を見て思い出す。
この空の下で散っていった自分の姉、行方を。
思い出して苦笑いをする。
「どうしようもない事、なんて思い出したって仕方無いんだけどなぁ」
そう、あの時はどうしようもなかった。
この力も、自分の運命も、姉の覚悟も知らなかったのだから。
では、何故思い出す? 気になったのだ。 自分の姉が、今この時にどんな思いだったのか。
自分が今立っているこの立場、自分の自信につながっている能力、全てが姉のお下がりである。
『そろそろ時間です、準備してください』
ホルスターの中、銃から声が響く。
自分の思考に耽ていた彼方はその声で現実へと引き戻された。
「うわぁ……」
現実に引き戻され、正面を向くとそこは異世界だった。
「なぁアリス、本当にあれが対象なのか?」
綺麗な碧空、その空の下には綺麗な空とはあまりにもミスマッチな魔腐で満ち溢れていた。
直視するだけで常人なら精神崩壊の危険性があるほどの禍々しさだった。 知識として知っていて、映像を見ていた彼方ですら初めての実物を目にし胃酸が込み上げて来ている。
『はい、間違いなくあれが我々の駆逐対象、魔腐です。 ただし、あの数、あの濃度なら魔人はいません、ただの使い魔です。 新しい駆逐者である彼方のデビュー戦としてはまずまずの相手だと言えるでしょう』
「それもそうだ、あれ以上の濃度が初見だったら吐き気で駆逐どころじゃなかったよ」
『弱気にならないでください、行方のデビュー戦は魔人"シンク"だったのですよ?』
「あーやめてくれ、俺の劣等感を煽るな」
彼方は本当に不貞腐れたような顔をする。
『大丈夫です、彼方も行方も初戦の能力値は同じような物でした。 自信を持ってください』
「ありがとう、姉ちゃんよりメンタルが下回りながらも自信を持ってやらせてもらうよ」
ホルスターから銃を抜き、魔腐の群れへと向けた。
「駆逐者、蒼創彼方! 及びアリス! これより空を取り戻す!」
『初陣としては様になってますよ、彼方』
彼方の相棒、アリスを魔腐に向け引き金を引いた。