7、優しくされる分にはいいものだ
1、理由の聞き取り
大聖堂内には、アルン、ウルン、エルンの三王がいる。
三王どころか、今回の件に一切関係ない国の王も来ている。
関係ないどころか、フリッカ教と対立しているヨルズ教の国王もきている。
地位はあるが仕事がないという暇な人間が、観光がてら俺を見に来ているようだ。
彼らにとって、俺は信仰の対象ではないが、
会いたいときに神に会えるという立場にいる雲上の存在ではある。
一目見ようということらしい。
俺の「なぜにウルン国戦闘飛行艦隊は越境したのか?」という質問に、
ウルン王ではなく、タニア枢機卿が答える。
知らない人は、なぜにと思うかもしれないが、
ここでは枢機卿の地位は大国の王と同等がそれ以上だ。
タニアが言った通り、王は枢機卿に従うほど弱くはない。
しかし、神事においては、枢機卿の地位も低くはないのだ。
ついでにいうと、大陸枢機卿は14人おり、三ヶ国周辺の担当はタニアである。
「それは、アルン国が、ルーン河の河口を通過するウルン国の船舶に
極めて高い関税をかけようとしたからです。」
「ふむ。では、なぜに、アルン国はウルン国に高い関税をかけようとしたのか?」
「それは、元アルン国属州だったウルンが大国となったことが原因です。
近年はアルン国の貴族に対し、ウルン国の貴族の態度が大きくなっています。
そこで、アルン貴族は自尊心を傷つけられたと感じ、
その報復に、ウルン国を困らせてやろうと考えました。」
「ふむ。エルン国の参戦動機は?」
「近年、エルン王国は、エール砂漠の開発に成功しだしました。
しかし、砂漠で無理をしていることもあり、農作物の価格はウルン産に比べてかなり割高です。
少しばかりの関税をかけてもウルン産の方が安く、
エルン国内においても、エール砂漠産は売れません。
売れないことからエール砂漠の開発中止を求める声も出てきています。
そこで、ウルン産農作物に高い関税をかけ、相対的にエール砂漠産の農作物の価格を低くし、
エール砂漠産の売り上げを伸ばそうと考えたようです。
そのようなおり、アルン側から話があったため、渡りに船とばかりに参戦したのでしょう。」
なお、エルン国王妃はエール砂漠出身です。」
エルン国王妃が恥ずかしげに顔を赤くする。エルン王は、惚れた女のためにがんばっているようだ。
結婚に至るまでには紆余曲折があり、最近では一番人気のあるサーがになっているそうだ。
こうやって理由を聞くとアルン側の理由が一番しょうもないな。
「以上で相違ないか?」
ここで、三人の王に声をかける。
当事者に弁論の機会を与えるのは不満解消の上で有効な行為である。
かといって最初から聞くと、自己に都合の良いことばかり言だす可能性があり、
そうなると端的な説明を聞くことができない。
「相違ございません。」
自身には、まったく非はないと言わんばかりにウルン王がうなずく。
「たしかにそのような見方もあります。」
恋女房のためにという点が恥ずかしいのか、便乗値上げ的で恥ずかしいのか、
少し恥ずかしそうに、エルン王が肯定する。
俺から見れば自国の農業保護であり、立派なことに見えるが、
この大陸にはそういう考えはあまりないとのことだった。
アルン王は黙っている。アルン国の理由は小さい。
はっきりいって落ちぶれた国が何いっちゃってるのって感じだ。
3ヶ国の王のみならず、大陸中から何人も王がきている中で実に恥ずかしい。
タニアが理由を言った瞬間、何人かの王は吹いていた。
この大陸では、くだらん見栄で国策を誤ることは非常に恥ずかしいこととされている。
「た、たしかに、一部の貴族の中にはウルン国に対しそのように思っている者もおります。
しかしながら、そのようなくだらない見栄が原因ではなく、
貿易赤字が続くわが国の政策といたしまして、また、国際河川を管理する立場からも、
増税を考えたしだいであります。」
「ほほぉ」
なかなか立派な理由もあるようだ。タニアも酷である。
なにか恨みでもあるのだろうか。
「では、以上の各国の主張を踏まえて和平案を考え、次回に提示したいと思う。
これにて本日は解散とする。」
2、和平案を考えよう
和平案の提示は業務範囲外であるが、ウルン軍を平和的に撤退させれば
そこで今回の仕事は終わるので、案を考えることにした。
フリッカ教会から執務室を借りる。
どでかい机とふかふかのりっぱな椅子がある部屋だ。
今回の待遇は今までの仕事の中で最高である。
部屋の中には、俺以外に二人いる。
タニアとセレリアさんだ。
タニアは俺を膝の上に抱っこして、一緒に椅子に座っている。
元々は、この部屋はタニアの執務室とのことだ。
タニアに頬ずりされ、両手で体中をまさぐられたりする。
気持ちはいい、長身の美女も好きだ。
それに、長身シリーズ物がけっこう好きで、こういうプレイもいつかしたいと思っていた。
ところが、どうにも精神的に嫌なのだ。
外見の影響が心にまできたのだろうかと少し考える。
最近の小学生は男女仲良く遊ぶらしいが、俺が小学生の時は女の子と遊ぶなんてことはなかった。
硬派を気取っていたわけでもないが、何か気恥ずかしいものがあったのだ。
小学校高学年ともなると、できるだけ女の子と話をしないようにしていた。
そんな小学生当時の心理状態になっている気がする。
俺はこの時の心理状態をかなり後悔している。
素直に女の子と遊ぶんだったと、
幼馴染フラグを立てておくんだったと非常に非常にかなりきわめて後悔している。
若返って人生やりなおせるなら、男なんかと遊ばず女の子と遊びまくろうと思うほどだ。
さらには、年若くて綺麗なママさん達とも遊びたいと考えていた。
だがしかし!
いざ、若返ってみると年上のお姉さんとキャッキャウフフフと遊ぶ気がおきない。
それどころか、いやらしいことをされると嫌悪感を感じるようになってしまった。
「かわいい、かわいいです。」
もう何度目のかわいい発言だろうか、部屋に入ってからひたすらこれである。
「いいかげん触りまくるのは止めてくれ」
「そんなぁ、じゃぁ最後に」
といい終わる前に、俺はセレリアさんにお姫様抱っこされていた。
いったい最後にどこを触ろうとしたのか
タニアがある一線を越えようとするとセレリアさんが助けてくれる。
それにしても、どうやってタニアの腕の中から俺を取り出したのか、
魔力の流れは一切感じなかった。神業である。
セレリアさんは、俺を優しく降ろしてくれる。
年齢不詳のおねぇさんだ。ヴァーレア総司教もだが、
フリッカ教徒の年齢は外見からはよくわからない。
これもフリッカ社長の加護の一つとのことだ。
「そろそろ和平案を考えよう」
「はーい」
タニアが女子高生みたいにかわいく返事をしてくれる。
俺は、30過ぎてもかわいいノリを大切にするこういう女は好きだ。
タニアにはシーナに通じるものがある。
「基本方針は、三方一両得で」
「三方一両損ではなく?」
「うん、全員が満足する和平案を思いつくのは難しいけど、
せめて案を出したフリッカ教会が恨まれないようにはしたい。」
「なるほど、悪知恵二人の三方一両得ではなく字義通りの意味でですね」
「そそ。なので、まずは情報が欲しい。三国が欲しいものや、いらないものの情報がね」
フリッカ教会の情報網は大陸一である。
相談、懺悔、愚痴を聞くのが教会の仕事であるから、
当たり前といえば当たり前でもあるが。
教会の情報部を仕切っているのはシーナ派ではないが、問題なく情報は集まる。
なぜなら、教会内に派閥はあるが、派閥間抗争は基本的にないからだ。
フリッカ神には14人の娘がおり、その娘達が布教したのがフリッカ教とされている。
人々は自分の生き方にあった教え、つまり派閥を選び、その派閥の戒律を基に生きる。
中の良い夫婦でも派閥が異なることはよくあることだし、
派閥の異なる者に自派の戒律を強要することはない。
そもそも、他派の行動を自派の戒律で判断することは
絶対にしてはならないことと全派でされている。
但し、あの戒律はアホだよねと批判や馬鹿にすることは許される。
このヨルシア大陸でもっとも信者が多いのはシーナ派だ。
神話の時代に、敵対神ヨルズをこの大陸から追い出したのがシーナとされている。
シーナにとって、この時の話はかなり自慢らしく
今でも酔っ払うとこの時の話をしだす。
「わかりました。セレリア、ヒイアカとナマカを呼んでちょうだい。」
と、タニアがセレリアさんに命じる。
セレリアさんは、優しく俺の手を引き部屋から出る。
タニアと二人っきりにはさせておけないということだろう。
それがわかっているタニアは憮然とするも何もいわない。
途中ですれ違った女性に、2名の呼び出しを伝え
俺とセレリアさんは、厨房にいく。
セレリアさんが甘くて美味しいおやつを作ってくれた。
口元を拭いてくれたりする。こういうふうに優しく世話をされるのはいいものである。