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3、俺の話を聞いてくれ

まずは、深呼吸をして落ち着くことにする。

もうすぐ不惑の40歳になる。人生の方向が定まって迷わなくなる年だ。

この道で生きていくと決めた。借金は返しきった。

このペースなら、年収億越えも夢ではない。

年収200万前後だった最底辺派遣の俺がだ。


冷静に考えれば女に持てる能力なんかいらない。

愛は買えないが、美人は買える。

おれの勘は、この依頼を断れと囁き続ける。

勘に従うべきだろうか?


俺のいままでの人生はどうだったか?

勘にしたがって良かったことはあったか?

ギャンブルは一切しない。

勘に頼って人生の選択をした記憶がなかった。

いつも楽な方、楽な方で選択してきた。

そんな選択は間違いだったか?


結果的には、大きく稼げる今の職と出会えたが、

楽な選択ばかりしてきたことに後悔はある。

ここで断って、今後、干される立場になるのも簡便だ。

実際、何度か、そういう経験はある。


前の会社でもあった。真面目な俺を気に入ってくれた上司が、

正社員への登竜門的仕事を任せてくれようとしたことがある。

そういう仕事は、普段の仕事より責任があり、ややっこしい、

俺はびびって断った。その結果、前の会社は、俺が長く働く気はないと判断し、

今まで任されていた仕事もさせてくれなくなり、

最後は契約更新なしで解雇となった。


今回も同じ轍を踏むことになりそうな気がしてきた。

しかし、勘は囁く。止めておけと。

それはなぜか、こういった突発依頼は評判が悪いのだ。

突発依頼は死亡率が高い。本来やるべき人間の代わりに別の人間がやるからだ。

基本的には、余裕をもった人選をするから、受けた人間にとって、

簡単すぎる仕事の方が多い。しかし、どうしても人がいなく緊急性のある仕事だと、

ぎりぎりの人選になる。そして、そういう仕事の結果はたいてい死だ。


ついさっき終わった竜退治も突発依頼だ。

マイケルと佐藤君がいなければどうなっていたことか。

俺の能力的に死ぬことはなかっただろうが、

機兵の核を破壊され痛い出費が出ていた可能性は非常に高いだろう。


あれ、そういえば、女は、俺の機兵なら余裕だといっていた。

仕事内容と能力的に相性がいいのかもしれない。

死ぬことはなさそうだ。それに必要な能力はくれるともいっている。

今後のことを考えれば受けるのが吉だ。

討伐依頼は増えているが、派遣登録している人間も増えている。

仕事を割り振るコーディネーターに恩を売っておいて損はない。

このまま突発依頼専門なんかにされてしまうのは簡便願いたいが。


けっこう長い間考え込んでいた俺を、嫌な顔一つせず女はじっと待っていてくれた。

こういう女を嫁にしたい。


「良いでしょう、この仕事、お受けしましょう!」

「ありがとうございます!」


笑顔が良い。美人だからとか関係ない素敵な笑顔、人の心を幸せにする笑顔で女は感謝を述べた。


「でわ、社長室にいきましょう。」

「ちなみにどんな能力をくれるんでしょうか?」


歩きながら話す。

俺の言葉使いは適当だ。営業関係の仕事はしたことがない。

一応、仕事関係の話をする時は丁寧語にしようと思っている。


「まず、外見変更ですね。あと、効果小の魅了能力、

 男性に効果があると嫌でしょうから女性限定にしときますね。

 さらには、若返りと不老です。若い体力じゃないと楽しめませんからね。」


と、少しおばちゃんっぽいしぐさでからかうようにいってくる。

この女の年はしらない。外見からもわからない。

22から26、28だろうか?同僚と話しているときは若く見え、

キリっと仕事をしているときはそれなりの年に見える。

まぁ、女の年なんてこの仕事をする前から、外見で判断することはできなかった。

ましてや人外の年なんぞ興味もない。


若返りかぁ、たしかに地球に戻った時は、体が重い。

せっかく金が入っても遊ぶ体力がないよなぁと思っていたのでありがたい。

しかし、いきなり不老かぁ。嬉しいといえば嬉しいが、不気味でもある。


「外見変更はどんなふうに?地球での生活に支障はでますか?」

「外見はいま流行の草食系とのことです。詳細は社長に聞いてください。

 ある程度の要望は聞いてくれるかもしれません。免許証の写真は変えておきます。

 卒業アルバムとか他の映像記録まで変えるのは、めんどいのでしないそうです。

 コミュ障の佐々木さんは、うちの派遣仲間以外に友達がいないから問題はないでしょう。」


草食系って流行っているのか、具体的にどんな外見になるんだ?

それに、なんで俺のプライベートを知っているんだ?俺は別にコミュ障ではないぞ!

たんにめんどいから卒業後とか退職後に連絡を取らなくなるだけで、

在学中や勤務中はちゃんと友達はいたぞ!


「それもコミュ障っていうんですよ。」

「人の心読むの止めろよ!」

「表情に出ていただけです。」

「まじかよ!ってかめんどうがらずに全部の映像記録も修正してくれよ。」

「わかりました、佐々木様のご要望は社長に上申させていただきます。」


上申しておしまいだろ!っと心にだけ思っておく。まぁ、実際、この会社以外に交友関係ないしな。


「能力追加はそれだけ?」


もう、タメ口でいいや。


「他にも細かい点はいろいろありますね。種族変更じゃなかった外見変更すると

 すでにお持ちの能力と矛盾しないような調整とかいろいろ必要ですし、まぁ、細かい点は変更後に」

「え、種族変更?」

「さあさあ、社長は忙しいんですから速く速く。」


そう言って女は社長室に入っていく。


「お母さん、じゃなかった社長、例の案件の希望者を連れてきました。」


ぷっと吹くと、女が軽く睨んでくる。素で間違ったことが恥ずかしいようだ。

社長は、さすが豊穣の女神の名で翻訳されるだけあり、

実り豊かな胸をしてらっしゃる。

30前半にも見えるが、肌が綺麗でもっと若くも見える。

年齢不詳であるが、熟女の色香もする良い女だ。


変更する外見について詳細をつめるべく口を開こうとすると


「あら、それは良かったわ。よろしくお願いね。」


と言い終わるまでに、俺の姿は変っていた。

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