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2、お前の正体は女神だろ!

竜の遺骸ともなれば使い道はかなりある。

特にこれほど魔法耐性の強い竜なら、対魔法用装備の良い材料となるだろう。

もっとも、竜の遺骸の所有権は我々にはなく、派遣会社にある。

まぁ、それでも、記念に少し貰っていくことは黙認される。


俺は、鱗を一枚もらっておくことにした。

鱗は光加減で、青色になったり白色になったりと不思議な輝きをする。

付近の山々は、森林限界点を超える高さの山も多く、雪がなくても白っぽいといえる。

空にも山にも溶け込める色といえなくもない。

爽快な青空と雪を抱えた連山を連想させる、そんな綺麗な鱗だった。

マイケルと佐藤君もそれぞれ鱗を1枚とっている。


後は、この竜が討伐対象の竜か確認できれば気持ちよく帰れる。

が、竜のような活動範囲が広い生き物の場合、確認が非常にメンドイ。

こういう場合、広域索敵能力のある専門化にまかせる。

占い師や式神使いなどの能力者個人や、忍者などの索敵専門職種のパーティーなどだ。


まぁ、たいていコーディネーターが討伐パーティーとセットで用意しておいてくれる。

そして、今回の場合なら、そう、俺だ。

あの女、ふざけた所はあるが、仕事はきっちりできる。

なので、用意してくれていれば、事前にちゃんと説明があるのだ。

つまり、説明がなかったということは、必要な場合は俺にやれと言っていることになる。


これは、手負いという情報を聞いて、

広域索敵確認作業は無いとかってに思ってしまった俺のミスだ。

戦闘開始前の状態で手負いと確定できる情報を発見できなかった以上、

地道に確認するしかない。

俺の索敵範囲は半径30km、竜の活動範囲は半径50km。

竜の襲撃があった所を中心にして半径20kmの円周上を移動しながら索敵することにする。

一週間くらいかかるなぁ、ぱぱっと確認できる占い師に頼もうかなぁという考えが頭をよぎるが、

ケチな会社ではないので、ちゃんと給料はでるだろうと思い留まる。


マイケルと佐藤君には先に帰ってもらう。

倒した竜が討伐対象の竜ではなかった時、

2人の力が必要になるが、その可能性は確立的に低い。

確率的に低いのに索敵するのは、会社の経営方針といえる。

さすが顧客満足度の高い会社だ。


転移時に活動資金は支給されていなかったが、ポケットにメモが入っていた。

”お金が必要な時は佐藤さんに借りてください。最大、大金貨1枚分までです。”

ということで、佐藤君に借りる。お釣りの面倒をなくすために、大銀貨20枚にした。


一週間の索敵活動は、特に問題なく終わった。

やはり倒した竜が討伐対象と考えて、まず間違いない。

ご当地料理と酒をたっぷり堪能し、俺が、竜討伐のメンバーであると、

どこからか聞きつけた人々から感謝と尊敬の言葉を受け、

有意義な日々となった。


「ただいまぁ」

「おかえりなさい」


今回の報告先は、美人コーディネーターなので、直接、この女の席にいく。

この会社は、営業が外回りをして仕事を取り、

コーディネーターが内勤で、受注した仕事を派遣社員に割り振る。

力のない者に難しい仕事を割り振り、

力のある者に簡単な仕事を割り振ってしまわないようにするのが仕事だ。

営業から上がってくる情報の精度は高いとはいえないし、

担当派遣社員の能力や適正をしっかり把握しておかなければならないので、

なかなかに難しい仕事といえるだろう。


短期の仕事の場合、報告先は担当営業か、担当コーディネーターになっている。

他所の会社と違うという人もいるが、これが、この会社のルールだ。


「借金完済おめでとうございます。」

「ありがとう。」


笑顔で言われ、俺も笑顔になる。こういう時は美人が担当でよかったなぁと思う。


「振り込み額は索敵分の給与も加えて520万円です、

 いよいよ女性に持てる能力の取得ですか?」

「そうだねぇ。」


おや、この女から言ってくるとは思わなかった。何か嫌な予感がする。

ちなみに会社の借金に利子は付かない。この会社のこういうところも好きだ。


「さっそくとっちゃいますか?」

「え、いやぁ、どういう能力がいいか佐藤君と相談したいし、

 生活の本拠をこちらに移す方法とかもよくわからないし、

 とりあえず今日は帰ります。」

「えええ、帰えっちゃうんですかぁ?グナーは寂しいです。」


甘えた声で引き止めてくる。これは絶対何かある。罠以外に考えられない。

グナーとはこの女の名前ではなく、翻訳魔法が選んだ名前だ。

神や、神に近しい者の名は翻訳対象になる時があり、

翻訳魔法が、俺の知識から似た立場の名称を選ぶ時がある。

本名は、挨拶の時に魔法をカットしてもらって聞いたが、忘れてしまった。


「じゃぁですねぇ、今日、取得してくれたら、取得費用はこっち持ち、

 さらにこちらの生活の本拠もご用意しちゃいます!」

「あやしすぎます!」


思わず本音がでる。

女の表情が鳩豆になる。仕事はできるやつだが、こういう勧誘には向いてない。


「そんなぁ、実は能力を取得してもらって、

 三ヶ月ほどの中期の仕事をしてもらいたいんです。」

「んー、それはどんな仕事ですか?」

「こちらの指定する能力を取得した時にお教えすることになっています。ごめんなさい。」


美人のシュンと反省した表情は、けっこう萌えるなぁ。

もえ~と思ったせいか、仕事内容に興味が湧く。

この女、勧誘に向いてるかもしれない。

中期かぁ、中長期の仕事で多いのは拠点防衛や街道巡回、

魔物以外にも、山賊狩りなどの任務が発生することがある。


異世界の人間、そして、犯罪者、さらには機兵を使用するから直接ではない。

とはいっても、殺人は殺人だ。はっきりいって嫌である。


「討伐系ですか?」

「どちらかというと護衛です。

 佐々木さんなら妖精型機兵を使用すれば余裕だと思います。

 それに万が一護衛対象が死亡しても責任は問われません。楽な仕事です。

 給与も破格ですよ!基本、食っちゃ寝で、500万円です。」


「ほほー、人を殺さなければならないようなことはありますか?」

「佐々木さんに殺人命令が出ることはないです。

 その当たりは先方の了解を得ているので安心してください。

 もっとも、佐々木さんが確保した襲撃者のその後は保障できません。」


ちゃんと登録シートに記載した殺人不可の項目は見ていてくれたようだ。

さすがに襲撃者のその後までは気にならない。仕事も楽そうである。


「あとは、給与面ですかねぇ。

 3ヶ月だとけっこうな数の討伐依頼が発生しますからねぇ。

 竜の討伐依頼の頻度も上がってますし。

 俺は、みんながやりたがらない、索敵のめんどうな

 討伐依頼も得意ですからねぇ」


なんでもこの世界は人口爆発期にあるらしく、

人跡未踏の地を開拓し、魔物と接触する機会が増えているらしい。


「そこで、女性にもてる能力の費用をこちらがもつというわけです!

 ちなみ費用はおいくらかご存知ですか?」

「そういえば、知らないですね。いくらですか?」

「佐々木さんの場合、10億円です!」

「えええええええ!」


なんでやねん!と思わず突っ込みたくなる。


「てか、俺の場合?」

「そうです。女性にもてる能力などは人によって値段が異なります。

 佐々木さんの場合ですと、そのぉ言いにくいのですが、元の外見がそのですからねぇ」

「ぐはぁ」


たしかにブサメンだが、10億かよ!

てか500万の仕事で、10億円を会社が負担するってどうよ?

本当に費用は10億円なのか?

そもそも能力付与の原価ってどうなっているんだ?

社長がちんからぷいって感じで、

あっさりなんの苦労もないような感じで力をくれるんだが。

それに、社長の名前はフリッグって翻訳される。おまえらの正体は女神だろ!


さて、どうしたものか?

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