1、設定説明的な回
俺は、今、日雇い派遣で生活している。
派遣先は異世界だ。派遣元の本社も異世界にあるらしい。
支店は地球にはないとのことだ。
しかし、俺はネットで派遣登録をしたし、給与は銀行振り込みだ。
どういう仕組みか気になって、一度、担当の美人コーディネーターに聞いてみた。
極上の笑顔だったっが、返答は、気にするなとだけ。
それ以来、不思議なことがあっても気にしないことにした。
派遣先への出勤方法は普通郵便で送られてきた普通のA4コピー用紙に書かれた転移陣を使用する。
コンビニのコピー機でコピーが簡単にできた。
オリジナルの転移陣はカップラーメンのスープをこぼしてしまったので
すでに捨てている。今は、コピーした方を使用しているが特に問題はない。
オリジナルの再送付には500円かかるというので、コピーしておいてよかったと思ったものである。
転移だから、通勤時間は0分だ。かなりうれしい。
勤務中の作業服的なものには転移中に支給され自動で換装される。
だから、転移前の服装は自由である。裸待機でもかまわない。
着ていた服には帰りの転移中に戻される。
持ち込み袋があり、それに入れれば、地球世界の物を持ち込める。
A4サイズのノートパソコンが余裕で入る大きさだ。携帯ゲーム機を持ってくるやつがけっこういる。
勤務時間は俺の場合日本時間で指定される。
日本が昼間で派遣先は夜ということもあるが、まぁ気にはならない。
米国東部在住なら、当然、東部時間で指定される。けっこうな人数の地球人が登録してるらしい。
派遣先では不思議な力で米国のやつだろうがどこの国のやつだとうが、普通に会話ができる。
そこで、知り合って、地球にもどって一緒にネトゲをして遊ぶこともある。
翻訳ソフトを起動しながらだったらゲームチャットくらいは余裕だ。
仲が良くなれば、一緒に同じ仕事を請けるようになる。
次の派遣の開始時間は何時だっけという質問に、日本時間なのか東部時間なのか?
さらにサマータイムなのか?最近は、しっかり確認するようになった。
さて、今日も元気に働くか。
トランクスにTシャツ1枚という格好で転移が始まる。
持ち込み袋には携帯ゲーム機が、ソフトはモンハンが入っている。
今日の仕事は、定番のゴブリン退治だ。
1匹退治で、手取り800円。20匹前後いるらしい。
今回の参加人数は俺一人なので、報酬総額は16000円前後となる。
一人で20頭となるとたいへんな仕事のようにも思えるが、
異世界ときたら、これまた定番のチート能力だ。
派遣元の社屋に行けば有料だが能力が取得できる。
能力の使用は、異世界限定なので、地球に戻ったときには使えない。
能力取得の初回料金は、けっこうな額まで貸与してくれる。
後から、必要となった能力も借金で取得できるが、
仕事に関係ない、例えば女にもてる能力とかは初回時にしか借金できない。
能力は一覧表から選んで取得するのではなく、どんな能力が欲しいか自分で考え想像し、
こんな能力が欲しいと要求する。その要求内容に対して、細かい能力の仕様内容や値段が説明され
納得がいけば取得となる。
俺の主な能力は自己修復機能付の魔導機兵召喚である。直接、戦闘はしたくない、
自分は安全な所に隠れていたいという気持ちから、おれの代わりになにかを戦闘させる能力となり、
召喚獣とか生き物は死なせたくない、ロボットのメンテナンスや修理はしたくないという気持ちから
核さえ壊れなければ、魔力の供給により自己修復する自律型の魔導機兵を召喚する能力になった。
核が破壊された場合は、派遣元で有料修理となるらしいが、今のところ壊したことはない。
召喚できる機兵の種類は、人型40体、人馬型20体、妖精型20体である。
人型、人馬型は武器防具の換装で、用途に合わせて軽歩兵や重騎兵にできる。
妖精型は偵察索敵をメインにしつつ簡単な攻撃防御回復魔法も使用できる能力となっている。
まぁ、後で気づいたんだけど妖精型がけっこう優秀なので妖精型だけでもよかったかもしれない。
この召喚能力と、計80体を丸3日同時運用できる魔力、そして、魔力を変換して
身体強化や、身体再生できる能力を、俺はしめて3000万円で取得した。
借金は給料から天引きとなる。天引き率は仕事によってことなる。
例えば今回のゴブリン退治だと、天引きがなければ、本来の収入は1匹あたり2万円だ。
なので、1匹当たり1万9200円の借金を返していることになる。
おおざっぱな計算で、3000万円の借金は、ゴブリン1500匹分ってことになる。
そう考えると3000万円の借金もたいした事ないないように感じないだろうか?
とりあえず、1500匹なら余裕ですよと美人コーディネーターに説明されて、
3000万円分まで能力を取得した。
少し後悔している。
さらに後悔しているのは、女にもてる能力を取得しなかった点だ。
地球にもどったら使用できないから無用ですよと説明されたのだが、
普段の生活の本拠を異世界にすればいいだけのことである。
実際、同じ日本出身の佐藤君は、普段は異世界で生活して、たまに買い物しに日本に戻るらしい。
佐藤君の担当コーディネーターは男性で、性活面でのアドバイスもよくしてくれるそうだ。
担当が美人でラッキーとか思っていたが、美人でよかった点は目の保養になるという点だけで、
他は、いまのところない。
転移が終わると、小さな村が目の前にある。服装はこの地域の一般的な村民の格好になっている。
武器は所持していない。太陽は真上にあるので現地時間で正午だろう。この世界でも太陽は1個だけで
東から出て西に沈む。というか太陽がでる方角を東と翻訳しているのだろう。
村の中に入り、村人に村長さんの居場所を聞く。村長さんに会い派遣元の名前とゴブリン退治に来た旨を伝え、
ゴブリンが概ねどの方向にいるか聞く。
村長さんは、俺の格好を見て、どうやってゴブリンを退治するんだって表情をしているが無視する。
相手のそういった不安、不満を細かく解消するコミュ力があったなら派遣なんかしていない。
小さな村だが一応酒場があるとのことなのでそこに向かう。
酒場に行く途中、妖精型機兵を16体召喚する。召喚の時点ですでに、姿は見えない状態にしてある。
体長は30cmほどで、7頭身、昆虫タイプの翅が大1対、小1対ある。羽音は基本ないが相手を威嚇するときに
蜂のようなブーンという羽音をわざと出すこともできる。今は見えないが、体色は銀一色で裸体である。
小悪魔的かわいさのある顔で、表情もころころかわるが、一色だし小さいので、よく見ないとわからない。
髪は極細で、一本一本あり、ストレートのロングだ。
16体にゴブリンの索敵指示を出し、ゴブリンがいるという方向に向かわせ、俺は酒場に入る。
ズボンのポケットを探ると食費として支給された銅貨20枚と帰還用の転移陣が印刷された紙が入っている。
銅貨1枚で約100円分の購買力があるらしい。小銀貨1枚が1000円、大銀貨1枚が5000円、
小金貨1枚が1万で、大金貨1枚が10万円とのことだ。
俺にとっては寝起きの飯だが、ちょうどランチタイムらしい、もっとも小さな村なので
利用者はそんなに多くない。相席せずにすんだ。シチュウーと酒とつまみを頼む。
シチュウーは肉は少なく、野菜が大目だがけっこう美味い。
酒は、ビールみたいなものがきた。ぬるいが致しかたない。つまみは、串焼きとナッツ類だ。
30分ほどすると脳内にアラームが響く。機兵からの、
ゴブリンの集団を発見したという知らせだ。24匹いる。
この世界のゴブリンは体長1メートル、力は人間の大人よりは少し弱い程度。
武装は石器で、防具は毛皮。やっかいなのは弓の装備率が高い点だ。腕前も良い。
性格は臆病で、人間と遭遇した場合は基本的にはゴブリンの方が逃げる。
今回も村人が最初に発見した時はゴブリンの方が逃げ出したとのことだ。
しかし、村の周囲からは逃げず、夜中に農作物を荒らしているらしい。
最初は村人だけで退治する予定だったが、数が10以上だったので、領主に退治を依頼したとのこと。
数が少なかったら村人で退治するつもりだったという話を聞いて、少しびっくりした。
4,5匹だったとしても、弓相手に挑むのはぞっとする。この世界の村人はけっこうたくましいようだ。
領主から下請け、下請けと話が流れてうちの会社に仕事がはいったんだろう。
但し、1匹あたりの値段は、退治して報酬部位を領主に持っていった値段と変らない。
この世界には、中抜きという発想はないようだ。
ゴブリンはまだこちらの機兵に気づいてない。ゴブリンまでの距離は約100メートル。
ちょうどよい広さのくぼ地に2/3が寝て休んでいる。
残りは子供の世話をしたり、飯の準備だろうかなにかを煮ている。
数がこちらより多いが気にせず攻撃準備を始める。機兵召喚は便利なことに俺の周囲だけでなく、
機兵の周囲にも召喚できる。まぁ、今回は妖精型だけですませてしまうがね。
攻撃方法はマジックアローという魔法攻撃。通常のサイズは30cmほどの矢だが、魔力を大目にこめれば
こめるほど矢は大きくなり、速度、射程、威力もます。ヒットしたときに爆発はしないが誘導性能は高い。
避ける時は盾や武器で矢を破壊する必要がある。初歩の攻撃魔法である。
16体が一斉に魔法を準備する。魔導機兵だからなのか不明だが、
詠唱はない。そもそも発声器官がないんだけどね。
矢のサイズは1m。狙いが被らないようにして一斉発射。ゴブリンの頭か胸の中心を見事に貫通する。
全弾命中である。起きていた8体を優先しているので、生き残ったゴブリンはまだ寝ている。
次弾発射までに2秒ほどかかるので寝たままなのは助かる。次弾発射。全弾命中。戦闘終了。
子供ゴブリンを殺すことには若干抵抗があるが、
2年で成体になるというので、いたしかたないと思うことにする。
ゴブリン退治はこれで終了ではない。このくぼ地以外に出払っているゴブリンがいる可能性は高いのだ。
妖精型機兵を4体づつの4グループにわけ、1つをこのくぼ地を中心に索敵開始。
1つは村を中心に、1つは高高度から全体的に索敵させ、残り1つはくぼ地に待機させる。
村からくぼ地までの距離は8km。機兵は俺から最大30kmまで離すことができる。
妖精型の最高飛行高度も30kmだ。
この世界も高所にいくほど空気が薄くなり気温も下がっていくが、
魔法の力なのかなんでかわからないが、高高度でも問題なく飛行できる。
報酬部位の剥ぎ取りは今回は行わない。会社への報告は機兵の視点映像の提出で終わりだし、
うちの会社は信用されているらしくて、派遣先への報酬請求に報酬部位はいらないとのことだ。
約3時間ほどの索敵の結果、さらに3匹、4匹の計7匹を発見し、
マジックアローで駆除し、今回の依頼を終了とする。
支給された銅貨もなくなり、そろそろ帰れよという店員の視線も気になっていたのでちょうどよい。
村長さんに終わった旨伝える。酒くさいやつが何言ってやがるんだという顔をしていたが気にしない。
転移は別に見られてもいいので、村長の目の前でさっさと転移する。行き先は派遣会社の社屋だ。
派遣会社の外観はけっこうでかい洋館だが、建物内は普通のオフィスである。
入ると来社した人用の椅子とテーブルが20セットとけっこうな数あり、無料自販機もある。
休憩所も兼ねているのだ。自販機はなぜか日本製のみである。
数組の人々が、椅子にすわり談笑や、携帯ゲームで遊んでいる。
遊んでいるのは佐藤君と米国東部在住のマイケルだ。
モンハンをしているようだ。2人は大型魔獣退治が専門の派遣だ。
リアルでもゲームでも狩りをしていると思うと少しにやっとしてしまう。
まず2人に挨拶し、30分ほどで戻ることを伝えておく。
了解の旨とそれに合わせて2人でクエに言ってる旨が帰ってくる。
受付においてある内線で、今回のゴブリン討伐の担当営業に連絡する。
担当は外回り中とのことなので、終了手続きは担当の美人コーディネーターがしてくれることになった。
報告のために、社内の中に入っていく。
機兵を報告用の魔方陣の上におくと、今回の戦闘映像が抽出されるらしい。
機兵を持たない人は、本人が魔方陣の上に立つことになる。
なんか関係無い記憶まで抽出されてそうであまり気分はよくない。
どうしても嫌ということで、報酬部位をもってくる人もいる。
今回の報酬で借金も残り500万だ。以外と早いなぁと思っていると
コーディネーターが声をかけてくる。
「佐々木さん、この後お暇ですか?」
お、デートのお誘いかと思っていると、
「デートの誘いではなく、仕事の依頼です。」
顔に出ていたかと反省しつつ
「内容は?」と質問に質問で返す。
「竜退治です。20メートルクラス。言葉は解さないということですから、獣種の竜ですね。報酬は約3000万円です。」
と嫌な顔一つせず答えてくれた。てか、質問に質問で返すのは失礼とか誰がいいだしたんだ?
まぁ、それはさておき、竜といっても種族はけっこうある。
人語を解し高度な魔法を自由自在に操る種族から、
単に洋風のドラゴンの外見をしていて、火を噴くくらいしか能のない種族まで様々だ。
俺からみると、似たりよったりなんだが、わかるやつがみれば、サルと人間ほどに外見も違うらしい。
もっとも、鱗の輝きがどうのこうのと言っていたので、やはり形状に差はないようにも思える。
報酬の3000万円と、俺の能力獲得費用の3000万円という額には実は関係がある。
俺の獲得した能力はだいたいこの竜の能力と同程度の能力ですよということであり、
特に俺が獲得した能力は戦闘系の能力のみだから、まさに戦力は同格ですということになる。
「一人じゃきつそうですね。休憩所に佐藤君とマイケルがいたので2人も行くようなら受けます。」
「佐々木さん一人でだいじょぶですよ。すでに2頭倒しているじゃないですか。それも30メートル以上のを!」
「いやぁ、前は6人パーティーと、4人パーティですし、それに2回とも佐藤君とマイケルは、いましたよ」
「えー、佐藤さんは別の課だし、マイケルさんは私の担当じゃないから私のノルマにならないんですよねぇ」
こ、この女は自分の都合で俺を殺す気か!いくらかわいい感じに悩んでみせても騙されんぞ!
「無理なものは無理です。」
「じゃ、せめて同じ課のマイケルさんだけってのはどうでしょうか?」
「マイケルも俺も竜の翼を破壊できる能力をもってないんですよ。飛ばれたらおしまいです。」
「あちゃー、じゃぁしょうがないですねぇ」
この女は自分の担当の派遣の能力を把握してないのか?それともわざとか?
討伐期間に余裕があったら、翼破壊用の能力をとらせされそうな気がする。
「時間があったら、能力を取得してもらうんですけどねぇ、今回は時間がなくて残念です。」
「はははは、ですよねぇ。」
不興を買って仕事がこなくなるのも困るので愛想笑いはしておく。
「じゃ、佐藤君とマイケル呼んできますね」
「はい、お願いします。」
佐藤君は、魔法使いだ。発動するチャンスさえあれば、
20メートルクラスの竜など一発で倒せるかもしれない。
マイケルは、大剣使いである。長さ3mの両刃の大剣を自由自在に使いこなす。
好きな漫画は言わずもがなだ。
マイケルは能力獲得の時に、外見変更を行ない身長2mの筋肉ムキムキにもなっている。
外見変更は地球に戻ったときも変更後の外見だ。
生活に不便はないか聞くと、顔は変えてないから免許証とかは問題なく、不便はないとのこと。
但し、今まで住んでいたとこからかなり遠くに引越しはしたとのことだ。
二人が二つ返事で了承してくれたので、さっきの女の所に戻り、仕事を受注し、早速転移する。
竜相手なので、さすがにモンハンは置いていこうとおもったが、
マイケルがアイテムボックスの能力持ちなので
マイケルに預けることにする。佐藤君も持っているようだ。
サイズと値段は、100立方cm100万円からで、1立方cm拡大するごとに1万円さらにかかる。
生き物でもなんでもサイズ内ならいれられるが、空気もそのサイズ分しかない。
腐敗防止の能力を付加しないと生ものは腐るが、付加すればまったく腐らなくなるので冷蔵庫より
優秀である。腐敗防止の費用も100万円だがサイズには関係なく、
後々サイズを拡張しても問題はないとのことだった。
今回の報酬は3人で頭割りして、一人1000万円となったので借金を完済し、
アイテムボックスを獲得してもいいかな。
転移先は、山の中腹で、アルプスって雰囲気がするとこだ。牧畜してる農家も見える。
感じとして早朝だろうか。放牧し始めたようなので夕方ではなく朝だろう。
竜が家畜を襲っており、すでに人の犠牲も出ているとのこと。
領主配下の騎士が数名で挑み手傷は負わせたそうだ。
手負いということで、俺一人でもいいだろうと思ったと女はぬかしていた。
まぁ、手負いの程度による話だ。手負いの獣ほど恐ろしいものはないという話もある。
あの女は、俺がそう思うと考えたから、手負いの情報を最初に言わなかったのだろう。
佐藤君によると、獣種の竜は知能は低いが回復力は高いそうだ。
傷が回復すれば人間に報復するのは間違いないと、
だから今回のような緊急の依頼になったのだろうとのことだ。
いくら知能が低くても、竜は、逃げるときに巣の方向に飛び出すことはない。
なので、竜の逃げた方向を聞き取りはせず、妖精型16体を索敵にだす。
竜と騎士との戦いは3日前にあったそうだ。まだ、巣の中で休んでいてくれればいいのだが。
竜の活動範囲は半径50kmなので、下手をすると索敵にかなり時間がかかるかもしれない。
と思っていたらあっさり発見した。残念ながら巣ではなく飛行中ではあるが。
サイズは20mクラス。但し、どこに手傷を負ったかは不明な状態だ。
別の竜かもしれないと思えてきた。そう思いつつよーく観察していると、
竜が機兵に気づいて威嚇してきた。勘のいいやつである。
これはこのまま俺たちのいる所に誘導してしまった方がいいだろう。
その旨を2人に伝え、戦闘準備を始める。
俺は人馬型にまたがり二人から離れる。人馬型は体高2.5mとでかい。
人部分のフォルムに特徴はない。一応、頭、首、手、胴とあるが、銀一色で顔には目鼻耳口はない。
安物のマネキンといった感じだ。まぁ。このマネキンに鎧を装着していくので中身はどうでも
いいと思ったのである。
今回は重騎兵になるように、人体部はフルプレートメイル。馬部分にも馬用重鎧をつける。
大きな盾とランスも持たせる。
俺も鎧を装備する。フルプレートだ。これは人型機兵用の装備である。
装備を流用できるように、人型の身長は
俺と同じ165cmで体型もほぼ一緒にしている。外見は人馬型と一緒で安物のマネキンだ。
今回、人型は召喚しない。
人馬型をさらに4体同じ装備で召喚。妖精型は、
竜をおびきよせている1体と別の3体を残し格納してしまう。
話はそれるが、俺を中心に30km以内なら好きに格納でき、俺か別の機兵の傍に瞬時に召喚できる。
一種のテレポートのようなことができるので、戦闘場所が複数のときは便利。
召喚数を減らすのは1体当たりに注入する魔力量を増やすためである。
注入量を増やせば、能力も上がる。上限はあるかもしれないが、今のところ1体に80体分注入しても
壊れることはない。単純に80倍とはならないが。
機兵本体だけでなく武器防具にも魔力を注入できる。したがって、俺が装着している人型用の鎧は
魔力を込めるだけ良い性能となる。
俺が準備している間に、2人もアイテムボックスから武器防具を出し準備している。
マイケルはいつもの大剣と、フルプレートだ。
俺のもだが、このフルプレートは地球の西洋中世時の鎧より、稼動範囲、
防護範囲が優れたものになっている。兜は隙間のない完璧なフルフェイスだが、
中は兜を被っていない時と同じように全周囲を見渡せるようになっている。
胴体部も表面は全て金属で覆われていて、隙間は皆無。
なのに、動作を妨げる形状は一切ないという優れものだ。
ドラゴンブレスの一発や二発余裕で耐えれる仕様となっている。
但し、俺とマイケルの鎧にパワーアシスト機能や、軽量化はついていない。装甲分の重さはある。
佐藤君の方をみると同じ様なフルプレートだ。はっきりいって、魔法使いだといっても竜相手に
ローブ装備とかありえない。佐藤君の鎧はさらにパワーアシスト、軽量化、魔法攻撃力上昇などの
能力追加もされている。その分値段はかなり高くなる。手にはいかにもという杖を装備。
距離と飛行速度から、後5分ほどでここらに到達すると判断し、その旨を二人に伝える。
佐藤君が魔法発動の準備をしだす。
準備詠唱が終わり、発動詠唱のみとなったところで、マイケルが話しかける。
「ひゅー、ミスター佐藤が呪文詠唱するなんて、一発でしとめる気ですか?」
「うんや、ここらへんの竜は魔法抵抗がかなり強いんすよ。竜は羽から魔力を放出して飛ぶ関係上、
竜の羽は体の中で一番魔法抵抗が低いんすが、それでも、詠唱して威力を上げた呪文じゃないと
羽すら破壊できないほどっす。」
「うへぇ、そういえば、私はここらへんの竜とやりあうの初めてです。」
と、山頂に竜が姿を現す。中腹までは1000メートル。妖精型を追ってこちらにいっきに滑空してくる。
距離200メートルで、佐藤君が魔法を発動する。暴風と雷の魔法だ。風と雷が竜の羽を切り刻んでいき
竜が墜落し、その顔面を山腹に埋める。魔法の効果範囲は竜の全身だ。
羽が折れまがり、皮膜が切り刻まれ、全身の鱗に傷が入り、所々の鱗は剥がれている。
血も流れ出ている。佐藤君はああ言っていたが、十分なダメージを与えているように見えた。
「ワーオ、あの呪文でこれしかダメージが与えらねないとは」
と、マイケルが驚く。
「なんとか羽が破壊できて良かったす。後はお二人に任せるっす」
そういって、佐藤君は俺の側にやってくる。
佐藤君用の人馬も出しておく。
と、腹に響き、心を鷲づかみにするような咆哮が、ドラゴンハウリングだ。
大型魔獣討伐になれている2人も一瞬ビクっとしているから、かなりすごいといえる。
俺は自分の側に妖精型を1体召喚し、精神ダメージを回復する魔法を使用させる。
下位の回復魔法なので、全回復とはいかないがかなり楽になった。
てか、全回復しないとかどんだけぇ
すでにマイケルは竜に切りかかっている。
4体の妖精型は竜の上方からマジックアローで牽制。さすがに目を狙われるの嫌なようだ。
ドラゴンブレスを妖精に向かって吐く。
白色の焔だ。直撃を余裕でかわしたのに熱で羽が溶けていると情報がくる。
魔力を注入して瞬時に治すが、飛行が一瞬ふらつく。
そこにもう一発ブレスがきたら初のコア損壊になっていただろう。
幸いマイケルに注意がいっており、ブレスはこなかった。
4体の人馬は、2体づついい感じで、竜の左右後方に移動していた。
脚とランスをメインに魔力を注ぐ。いわずもがなのチャージだ。ランスの長さは10メートルを超える。
これが4本ぶっすり刺されば、かなりのダメージを与えられるだろう。
4体が同時に突撃を敢行する。殺気を感じたのか竜が尾を一振り、
これを人馬たちは華麗に跳躍してかわす。
が、これでチャージの威力が削がれる。それでも各槍は30cmは突き刺さっただろう。
刺さったままランスから手を離し離脱する。
左右1本づつを格納する。各人馬の手にはすでに別の人馬用ランスを装備。
刺さったままがいいか、抜いた方がいいか確認する。
いかに回復力が高いといっても、ヒドラ並ではないようだ。
ランスが抜けた後からは血がでている。もっとも噴出すほどでもない。
攻撃の邪魔になりそうなので残りの2本も格納する。
意識をマイケルの方に向けると竜の右前脚を切り落としていた。
と、竜は後ろ脚2本で立ち上がり、首を伸ばし、顔を下に向け、2回目のブレスを吐こうとする。
目標はマイケルか?そのまま横なぎだと、俺と佐藤君の方にもきそうである。
が、竜の腹はがら空きだ。そして、妖精型から左前脚で守っていた目もがら空きになっている。
マイケルはブレスなにするものぞと、大剣をがら空きの腹に突き刺し、
抜き胴の形で一気に竜の左手側に駆け抜ける。
妖精型も、がら空きの目にマジックアローを放つが、竜は目を閉じる。
まぶたどんだけ硬いんだよとつっこみたくなるが、矢は全て跳ね返された。
だが、この機会に、俺と佐藤君を乗せた人馬は、
マイケルとは正反対になる方向に移動し、竜の正面から逃れる。
そこで、竜は目を閉じたまま。先ほどまで俺らがいた所にブレスを吐く。
射線上の草は火を噴くことなく灰になり、射線から数メートル離れた草が一気に燃え上がる。
山火事にならなければいいんだが。
佐藤君もそう思ったのか、大きな水玉を魔法で作り、火を消していく。
竜の横に抜けたマイケルは、竜の左脚に切りつける。渾身の一撃だ、
ゲームであればスキル発動といった感じの一撃だろう。
ぶっとい左脚も半分以上が切られ、踏ん張りをなくし、竜はそのまま自身の左側に倒れ込む。
マイケルは華麗に、竜の体をよけ、下敷きにならない。
さすがに一息つくのかそのまま竜から距離をとる。
倒れ込むタイミングで、人馬型は2度目のチャージ。背面から2体、腹側から2体が一気に突撃。
背側はあまり深く刺さらない。だが、竜の右前脚はすでになく、左前脚は体の下にあり、
腹側のチャージを妨げるものはなにもない。2本とも深々と刺さる。
特に1本は心臓の位置だ。だが、竜の目にはいまだ光があり、戦意は失われていない。
突き刺さった4本のランスを格納すると、心臓部の穴から大量の血が吹き出る。
これで勝敗が決し、竜の目からいっきに力が失せる。
マイケルが竜に近づき、大剣で見事に首を刎ねた。
これで、今日の仕事は終わりだ。