委員会決め
[ホームルーム]
俺がここ、星空学園に入学してから数日…俺は衝撃の光景を目の当たりにしていた。
なんと生徒同士が闘っているのだ。
普通の学校ならケンカなどはよく見られるだろう。
だがこれは…教師公認の闘いだ。
正闘委員…この学校特有の制度である。
クラス間の騒動を討論によって解決できない場合、最終手段として用いられる生徒を男女二名各クラス決めることとなっている。
風紀委員会はそれを抑制する義務も兼ねているので、風紀委員会も強い男女二名を選ぶことになっている。
「せやあああっ!!」
「「「ギャアアア!!」」」
竹刀を持った礼侍が男子生徒を吹き飛ばす。
などと考えながら俺も拳を振るう。
ちなみに女子は風紀委員に柔道部の軽量級のホープの矢原亮子さん、正闘委員に同じく柔道部の重量級のホープの楠寺松子さんが激戦の末に選ばれた。
うちの学校で正闘委員や風紀委員はかなり内申点の上昇に繋がる生徒会に入りやすくなることで有名だ(もちろん内面は選挙で見られるが)。
それ目当てに闘う者は少なくない…だが、それ以外の理由のために闘う者もいる。
礼侍は部活のレギュラーに近づくためである。
俺はといえば…
〜回想〜
[今朝の食卓]
「我が眷属よ…そろそろ委員会を決める時期だな。」
トマトをよけつつサラダを頬張る姉貴。
「そんな時期なのかよ。」
俺は昨日録画していた[かまされた大賞](街中で偶然発生してモロに人に危害を与えてしまった特集)を見ながら返した。
「ヒロッピラ(井口先生)のやり方では男女個別で一番強いヤツが風紀委員になるそうだ。」
「へー…あははっ!」
街中で偶然お婆さんが力士に巴投げをかける…これはありえない!!
「風紀委員に入れなければ…我が剣、日が沈んでから昇るまで受けるのを生涯続けてもらうぞ。」
…あ、ありえねえ。
〜回想終わり〜
俺は…負けられない!!
目の前の肥満男を投げ飛ばす。
そして残った俺と礼侍の目が合った。
礼侍は…迫る!
突きが俺の喉めがけてくる!
だがこの時、なぜか時が止まったように感じた。
何度も姉貴に付き合った練習…姉貴の真空裂弾(改造エアガンのライフル)に比べれば…遅い!
右回りに回転して突きを逃し…左回りに回る!!
「猪狩美紗姫流…テンペスト!!」
振り切った右膝が鳩尾に入り、さらに回転は続き、左肘がアゴに、左かかとが膝に、右拳が鳩尾に、右膝が金的に連続で当たる!
「ぐっ…まだだ!胴!!」
ほぼ野球の左打ちのような形のがむしゃらな一撃が迫る!
「猪狩達也流…インビンシブルアーマー!!」
説明しよう!
インビンシブルアーマーとは…
ばしこーん!!
…やせ我慢である。
「なっ!?」
(インビンシブルアーマーは姉貴が自分には無理だから、とか言って俺に押しつけた技なんだよな。)
動揺した礼侍の動きが鈍る!
ここだ!
「猪狩美紗姫流…ミョルニルインパクト!!」
俺の胴にめり込んだ竹刀と礼侍の胸ぐらを掴む…本来は鈍器で相手を殴る技だがこの場合は違う。
礼侍を鈍器に見立て、教卓めがけて叩きつけた。
がしゃあん!!
「ぐっ…はあっ!!」
叩きつけられてのびている礼侍を見て、エセ関西人(井口先生)は俺の手首を持ち、掲げた。
「勝負アリや!勝者、猪狩達也!」
「ふっ…我は負けぬ!日が昇るがごとく勝ち、日が沈まぬごとく負けぬ!…はっ!?」
キメ台詞を口にしてしまった俺をクラスの皆はニヤニヤして見ていた(一部痛々しい視線もあった)。
…う、伝染った?
「それでこそ我が眷属だ…我が愛しきジャック=セレナーデよ。」
いつの間にか姉貴もギャラリーにいたようだ。
「ブラコン発言をするな!変なあだ名を付けるな!観戦のために教室を訪れるな!」
「思い上がるな。我はこのクラスの委員会名簿を受け取ることを建前に我が愛しき眷属が風紀委員会になれたかどうかの確認に来たのだ。」
「結局観戦のためじゃねえか…。」
「何だ。眷属のクセに主君に逆らうのか?」
姉貴が俺をギロリと睨み、周囲から歓声が起こる。
『おおっ!姉弟ゲンカか!?』
『生徒会VSうちのクラスの正闘委員よ!』
俺の前後の席の真面目クン真面目さんは手遅れらしい。
だが俺は剣道部のホープと闘い、勝利したのだ。
今まで以上に良い勝負ができる…いや、勝てるかもというぐらいの自信になっていた。
俺は姉貴に飛びかかった。
「姉貴!俺は今日、アンタを超えてやる!!」
「ようやく来たか…楽しもう!ジャック=セレナーデよ!!」
…瞬殺されました。
朝倉礼侍
♂
身長175センチ
体重70キロ
日焼けした感じの外見であり、髪は短め。
剣道部のホープであり、中学では全国大会常連。
趣味はマニアショップ巡り