第3話 邂逅
読んでいただきありがとうございます!
今回から少しだけ長くなります。
まだまだ未熟ですがよろしくお願いします。
数日後の長の屋敷・・・。
屋敷に使用人が皆集められた。その中にはもちろん彼女の姿もあった。
何の話だろう?私はそう思った。私が今まで過ごしてきた中で、こんなことはほとんどなかった。
「知っているものもいるだろうが、明日この屋敷に金持ちの旅人が来る。皆の衆!もてなしの用意をしろ!うまくいけばこの小さな村にも大きな金が手に入る!気合を入れて準備しろ!」
「はい!」
使用人が声を合わせる。私もそうした。・・・怒られたくないから・・・。
解散の後、声をかけられた。
「おい!そこのくず!」
びくっ。私は無意識に体を震わせた。また、なにか失敗したのだろうか?
「・・・はい。」
「お前、確かもうすぐ16だよな?」
とても下卑た嫌な笑みで見られた。・・・すごく嫌な予感がする。
「明日で16歳です。」
「くっくっく。ちょうどいい。お前はこれから宿にいる旅人に会いに行け。」
「・・・なぜ・・・・ですか?」
「ふん。これだからくずは。決まっているだろう!旅人をたらしこんで金を巻き上げるんだよ!!」
やっぱりか。そう思った。いつもこの人はお金のことしか、自分のことしか考えていな
い。あらためてそれを実感した。
「何をすればいいのですか?」
あきらめが混じったとても暗い声。自分でもよくわかった。
「そうだな~。体でご奉仕でもしてきたらどうだ。お前の次のご主人様になる予定のやつだぞ!気に入られておけ。」
私は目の前が真っ暗になってしまった。何を言っているのかわからなかった。わかりたくなかった。次のご主人様?・・・わかってしまった。理解してしまった。この人は始めから私を自由にする気なんてなかったことに。始めから私が16歳になったらどこかへ売る気だったことに。
「・・・・・え?」
そういうので精いっぱいだった。
「さっさと行け!明日まで帰ってくるなよ!失敗したらわかっているな?」
そのまま私は屋敷を追い出された。最後に見た長の顔は・・・・笑っていた。
彼は宿のベットにいた。
「ん~。暇だな~。」
そうつぶやいた。そのままベットに寝転がり、昨日のことを思い出してみた。
昨日、村の長の屋敷に行き、長と直接話そうとした。しかし、長はいないと追い出されてしまった。俺には居留守だと分かっていた。だから受付の兵士にある袋を村長に届けるように頼んだ。そうするとほんの1分くらいで村長が飛んできたのだ。
「くくくくくく。あははははは。」
思い出しただけで笑える。あのときの村長の顔が・・・・・。本当に、あの時の俺・・・よく耐えたな。褒めたい。・・・・ちなみに、村長に渡した袋の中身はお金で金額は村の1月分くらいに達したりする。いわゆる賄賂というやつだ。
そんなこんなで、村長に宴会に招待され、詳しい話はその時にとなった。そのため、今日1日かなり暇なのだ。
これからどうしようかと悩んでいると、ドアがノックされた。・・・誰だろう?この村の住人とは仲のいい人なんていない。・・・来たばっかりだし。いるなら酒場の親父くらいだ。
「どうぞ~。」
とりあえず返事だけした。
「失礼します。」
その声は明るくなく、深い絶望をはらんでいた。
「(声だけで、その人の精神状態がわかってしまうのも考え物だな・・・)」
でも、誰だろう?そう思った。そして入ってきた人は予想外の人。
「あれ?君って?」
入ってきたのは長のところで働いていた子だった。
「初めまして。村長のところで下働きをしていたものでございます。」
何の感情もこもっていない冷たい声。
「何の用事?」
聞いてみた。
「はい。旅人様にご奉仕に参りました。」
そういって彼女は来ている服を脱ぎ始めた。
「・・・はい?」
もともと来ている服が少なかったため、止める間もなく裸になってしまった。・・・綺麗だ。素直にそう思った。
「では、ご奉仕いたします。」
彼女が近づいてくる。手も、足も、声も震えている。自分の意思じゃないことははっきりとわかった。
俺はわきにかかってあったマントを取り、彼女にかぶせた。そのまま抱き寄せる。
「無理にそんなことしなくていいんだよ。」
「でも、私・・・。」
俺の胸の中にいる彼女はとても震えていた。
「したくないなら、しなくていい。そんなことより服を着て、お話ししよう?」
「・・・・はい。」
少しの間、部屋には布の音だけがしていた。
「大丈夫?落ち着いた?」
「はい。大丈夫です。」
うん。本当に落ち着いたみたいだ。
「どうしてあんなことをしたの?」
「・・・・・・・。」
彼女は答えない。彼女の立場を考えると当然か・・・。
「村長の命令でしょ?」
彼女はびくっと震えた。・・・わかりやすい。
「俺の気に入るものを探そうとか考えたんでしょ?村長は。そして、君が気に入られたらそのまま商品として俺に売りつける。その為に体を使ってご奉仕して来い。っていうところかな?」
今度はゆっくりと彼女はうなずいた。・・・この暗さはそれだけじゃないな。何か、希望か夢を砕かれたような感じ・・・。・・・・よし。
「それじゃあご奉仕の代わりでもしてもらおうかな。」
「・・・なにをすればいいですか?」
相変わらず暗く、あきらめたような感じ。このまま、嫌なことをさせられると思ってる。だから、この子にとってこの一言は意外なはずだ。
「お出かけする準備して。」
「・・・え?お出かけ?」
くすっと笑って声をかける。
「デート、しよ?」
・・・どうしてこうなったのだろう?わからない。私は、ご主人・・・長に言われたとおりにご奉仕をしようとしただけだ。私はこのままこの人のいいようにされるのだろうと思っていた。でも違った。マントをかぶせられて、抱きしめられて、こんなことしなくていいよって言われて・・・急にデートしようと言われた。頭が混乱している。・・・でも、
「優しく抱きしめられたの、初めて・・・。」
「もう一回抱きしめてほしい?」
くすっと笑いながら、耳元でささやくように言われた。
「!!?」
声に出てた!?すごく恥ずかしい。今、私の顏真っ赤だ。
一度落ち着かないと!
「――え。ねえ?聞こえてる~?」
「は、はい!」
「聞こえて無いじゃん。」
「ご、ごめんなさい。」
無理です。今の私にそんな余裕ないです。なにせ私には初めてのことばかりなのだから。ご奉仕することも、男の人に抱きしめられることも、デートすることも。そんなことを考えていると頭に手を乗せられた。
「そんなに緊張しないで。ね?あまり考えすぎないで、目の前のことを楽しもう?」
「は、はい!」
不思議と緊張が解けていくのが自分でもわかった。それと同時に一つ疑問が浮かんだ。
「あ、あの!こういうのって慣れているのですか?」
「・・・?こういうのって?」
「私みたいな、女の子とのデートって慣れているのですか?」
ふと思った疑問だった。彼の行動はあまりにも慣れすぎている。1度や2度ではなく、おそらく何回もこういうことをしているように感じる。
「まあ、慣れっていうのは確かにあるよ~。だって君とは、根本的に生きている年数が違うのだから・・・。」
「・・・・・・。」
言葉が出なかった。生きている年数が違う?見た目は私とそんなに変わらないように見える。でも、言葉の重みが違かった。空気が、重い。全身の感覚すべてが「怖い」と言っている。これ以上かかわるなと言っている。かかわってはいけないと本能がうったえている。私には震えることしかできないでいた。
「ねえ、お昼にしよ。どこかに広くてのんびりできるところはない?」
急に言われた。さっきのは何だったのだろうと思うくらい普通の空気に戻っていた。
「向こうに公園があります。」
自然に答えられた。
「んじゃ、そこに行こう。」
「は、はい。」
「・・・。」
普段の私なら彼が一瞬後ろを見たことに気づいたかもしれない。
でも、今の私は完全にほかのことに意識が向いていた。さっきの重い空気の中、ほんの少しだけ彼の心の奥を覗けたのだ。もちろん彼には言っていない。なぜなら、一瞬見た彼の心の中は・・・・・・。
【世界の終末を感じさせる、真っ暗な闇が広がっていたのだから・・・。】
お疲れ様でした。
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