―短編童話― 四人の若者
『冬の童話祭』参加作品です。
とある村に四人の若者が住んでいました。
彼らは、そこそこ不自由のない家庭で育ち、同じような教育を受けていました。
彼らは、とても似ていました。金持ちにも見えないけど、貧層にも見えない服装と礼儀を持ち、顔もハンサムではありませんでしたが、ブサイクでもありません。
そんな似ている四人にも、違っているところがありました。
彼らが住んでいる村は、荒れ地が多い反面、旅街道の要所の町に近く、商業が盛んな村でした。
人と物が多く行き交う村には、農民や漁民がいなくても不便がないほど物で溢れていたのです。
四人の若者が働ける年齢になった頃、村で大事件がおきました。
なんと、旅街道の要所の町に関所が出来てしまい、今までの人と物の流れが変わってしまったのです。
人と物で溢れていた村は、少しずつ昔の豊かさを失ってしまい。お店も新たに人を雇う余裕は無くなってしまいました。
四人の若者の内の一人、半兵衛は自分の夢だった仕事をあきらめて、村にあるお店を一軒一軒訪ねては自分がどれくらい頑張れるか主張して回りました。
四人の若者の内の二人目と三人目、平太と貫次郎は自分の夢だった仕事をあきらめられず、色々なお店の手伝いをして生活費を稼いでは村にある自分の希望に合うお店を一軒一軒訪ねて、自分がどれくらい頑張れるか主張して回りました。
四人の若者の内の最後の一人、荒太は村の景気が良くなるのを待って良いお店で働ける機会を探すと親を説得し、しばらく親に食べさせてもらうことにしました。
半兵衛は村で目立たないが悪い噂も立たないお店で働けることが決まり、一生懸命に働きました。
平太と貫次郎はなかなか自分の希望と合うお店が見つからず、未だに一軒一軒お店を訪ねていました。
荒太は未だに何もせず、双六や小川で釣りをして遊んでいました。
どんな人間にも春は来ます。
半兵衛はお店で働いていた女性と恋をしました。真面目に働いていた半兵衛は貯えも有った為、すぐさま祝言を上げ恋人と一緒になりました。
平太は幼馴染と恋をしました。今まで夢をあきらめずにいましたが、このままでは良くないと考え、希望とは違うお店で働くことが決まり、少し時間が掛かりましたが恋人と一緒になることが出来ました。
貫次郎は、とある店の手伝い先で知り合った女性と恋に落ちました。しかし、夢をあきらめられない貫次郎は働き口が見つけられず、そんな貫次郎に愛想をつかせた女性は貫次郎から離れていきました。
荒太は遊んでいた小川で、洗濯物をしていた女性に恋をしました。しかし、すでに村で噂になっていた荒太に女性は見向きもしませんでした。
どんな人間にも別れは来ます。
半兵衛の両親が他界しました。立派な奥さんと真面目に働く半兵衛をずっと見ていた両親は、何の心配も無く天へと昇って行きました。
平太の両親が他界しました。ずっと心配をかけられてきた子供も、奥さんを貰って不慣れな仕事でも頑張っている姿を知っている両親は、後ろ髪を引かれる思いをしながらも天へと昇って行きました。
貫次郎の両親が他界しました。ずっと心配ばかりかけられてきた子供のことが、未だに心配で天にも昇れず、幽霊になって地に残ることにしました。
荒太の両親が他界しました。ずっと子供を甘やかしてきた罪に問われ、地獄に落ちることになりました。
その後、貫次郎は決まった仕事にも付けず、奥さんもいない孤独な老後を送りました。
荒太は両親が他界した後、その姿を見た者はいませんでした。
半兵衛と平太は孫にも恵まれ大小色々な不幸にも合いましたが、奥さんと一緒に乗り越え、幸せな老後を送りましたとさ、めでたし、めでたし。