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6th 二度と混じり合わぬ……ジャムと小さな歯形

作者: 遍駆羽御

二度と混じり合わぬ……ジャムと小さな歯形


詩:遍駆羽御



虚ろな瞳で歩く少女の唄はボクの心には悲しく響いた

ビール瓶で切れた足を見る度に 革靴はキミが履きなよ?

そう少女の手に引かれて呟いた


だけど……少女は唄を詠うだけだった


<世界は優しい人々で溢れているよ

 困った人がいたら助けてあげよう

 そうすれば 幸福の道が開けるさ>

微かに耳の奥底に痛みと共に眠る幼き子どもの唄


脆弱な者が明日さえも見られずに 壊されるだけの世界ならば

ボクはあの日 あの時 あの瞬間……引き金を引くべきだった

少女を失うことと、自分の死とを天秤に掛けた

ただ 降りしきる雨から冷たくなった顔だけのキミを守っていた


ジャム缶に細い指を突っ込んでは一つのパンに塗った

幼いボクが少女に贈れる唯一の ラブソングのはずだった

けど少女はボクよりも細い手で


髪を撫でてくれたボクの片思いの全て


<お姉さんよりもキミは賢くなれる

 だから私の分まで栄養をとってね

 それだけで 私は幸せになれるの>

微かに耳の奥底に痛みと共に眠る幼き頃の記憶は


ボクの犯した罪を許しはしない

亡霊のように 少女を売った幼い子どもを責め立てる

金が全てだ 愛なんて幻だ そう 信じていた馬鹿な子ども


脆弱な者が明日さえも見られずに 壊されるだけの世界ならば

ボクはあの日 あの時 あの瞬間……引き金を引くべきだった

少女を失うことと、自分の死とを天秤に掛けた

ただ 降りしきる雨から冷たくなった顔だけのキミを守っていた


晴れた日に俺は銃を手にした幼く白い少女に出逢った

鋭利な物で切れた足を見る度に 死んだ少女を現実に見た

優しい錯覚はヒトの涙を与えた


白い少女はあの日のことを笑いぐさに


俺はあの日のことを再生の朝日にした


「どうして泣いているの?」

「セフティーの掛かった銃でこの街では生き残れない」

「知ってるよ! そんなの。猿だってバナナを損ねるんだから!」

「猿も木から落ちるだろう? スラム街の新入り」

「……やっぱ、目立つかな? この肌の色……それでも私は生きたい。どんなことを――」

「来い。人の殺し方を教えてやる……愛する人間をいつか、守れるように」

「ねぇ、どうして泣いているの?」

「それは――」  


虚ろな瞳で歩く少女の唄はボクの心には悲しく響いた

ビール瓶で切れた足を見る度に 革靴はキミが履きなよ?

そう少女の手に引かれて呟いた


だけど……少女は唄を詠うだけだった


<世界は優しい人々で溢れているよ

 困った人がいたら助けてあげよう

 そうすれば 幸福の道が開けるさ>

微かに耳の奥底に痛みと共に眠る幼き子どもの唄




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