【通話系短編ホラー】秘密基地
「あーもしもし、A? 俺だけどさ……どーよあの秘密基地」
「あっ、先輩! 最っ高っっスよ!! っていうかあんなのどうやって作ったんですか? 裏山の木の上に木と藁の古屋って……もう大学生が用意する秘密基地ってレベルじゃないっスよアレ」
「おう、もっと褒めろー。あの山、管理者が教授なんだよ。で、俺の弟は大工の見習いだろ?」
「すっげ……でも俺たちが使っちゃっていいんですか? 俺たちただの飲みサーっスよ。だらだら部室みたいに使うにはちょっと気がひけるんですけど……」
「あーそれは気にするなよ。俺たちの時もそんな使い方しかしてねぇって。俺ももう社会人だし他県に出るからな……管理がてら好きに使ってくれよ」
……
「お? Aかこんな夜中にどしたー? 元気してたかよ」
「先輩、ちょっと聞きたいんですけど良いですか?」
「……おう、どうしたー改まって」
「いえ、大した事じゃないんっスけど先輩があの秘密基地使ってる頃に変なことって起きた事……ないっスか?」
「変なこと? あー夏だもんな肝試しでもすんのか! 羨ましいねぇ、でも悪い! 急に言われてもネタ浮かばないわ」
「あっ、いえ……そういうのじゃないんです。ただ、ここ誰かに見られてる気がしたり置いてあった物が動いていたりするんですよ」
「あーまぁセキュリティはガバガバだからなぁ。なんせ梯子上がれば誰でも入れるし、貴重品置いたままにするのはお勧めしないぞ?」
「そうじゃないんですよ。そうじゃなくて……上からなんです。木の上の古屋より上から、覗かれてるんですよ」
「はぁ?」
「気のせいじゃないっスよ。だって今もほら、屋根の上をガッガッガッって……あああああ、なんですかアレなんでここに来るんですか!?」
「え、ちょっA? なんだお前今秘密基地にいるのか!? こんな時間に?」
「俺だって帰りてぇよ!! なんで出れないんだよこの山ぁ……ああ、来る。あいつずっと俺を狙ってる。もう、だめだぁ……」
「おいA? どうしたよこんな夜中にする冗談じゃねぇぞ? おいっ!!」
「………………」
「おい、なんか言えって!! 流石に俺も怒るぞ?」
「………………………………………」
「……切るからな?」
「………………」
「………………本当に切るぞ?」
「ガガッ……ザ……ザザ……ザガガガガガガッ&@¥#**#/#)#=#=*#*#/#*-(;#-(ッ」
「うわああああっ!! んだよ、ちくしょう……悪ふざけ、だよな?」
……
「ん、もしもし? あ、先輩ですか」
「ああ、そりゃ寝てるよな……こんな夜中に悪いんだけどさ、B子ってAと付き合ってたよな? 今日あいつが何してるかとか知らないか?」
「ん……A君なら今日は講義終わったら秘密基地で飲むとか言ってましたよ? 私も行くって言ったら男には良い景色を肴に1人で飲みたい日もあんだよとか言ってたんで多分秘密基地に行ったんだと思いますけど……」
「あー秘密基地に行ったのはマジ話か」
「どうかしたんです?」
「いや……多分悪ふざけなんだと思うんだけどさっきAから秘密基地で、なんつーのかな襲われたとかホラー的なっていうのかな電話かかってきてさ。悪ふざけだとは思うんだけどほら、Aらしくないだろ? 目上にそういう悪戯とかしないタイプだし時間もおかしい」
「んーそうですね。でも……お酒に酔ってたならあるかもですよ? A君酒癖悪いから」
「ああ、飲むって言ってたもんな。って事はアレか……酒飲んで酔って電話して、オチ言う前に寝落ちした的な?」
「プッ……そうじゃないですかね。それならちょっとA君らしい気がします」
「ったく人騒がせなヤツだな……俺明日も仕事だってのに」
「お仕事お疲れ様です。お疲れのところ気にして頂いて……先輩って本当に優しいですよね。ありがとうございます」
「ん? ああ、そうかな……とにかく、悪かったなこんな夜中に」
「いえいえ、A君が原因ですし先輩と久しぶりにお話しできて嬉しかったです」
「ん……おう、そう言ってもらえると助かる。じゃあ……おやすみ」
「はい、おやすみなさいです。今度はA君と3人で飲みにでもいきましょう」
「あ、そうだな……3人でな」
……
「ん? B子からメール?」
『夜分すいません。やっぱり気になるので今から秘密基地に行ってみます。風通しがいい場所なのでA君が風邪ひいちゃうかもしれないし」
「お、マジかよ……今2時だぜ?」
『いい奥さんしてるな。夜中だし気をつけてな』
『ありがとうございます』
……
「……せ、先輩……助けてください!!」
「B子? どうした?」
「秘密基地、ついたんですがA君いなくて秘密基地が真っ赤で……」
「え……冗談、じゃないよな!?」
「冗談じゃないですっ!! 中が血で真っ赤なんです!! A君もいないし!! 私、私どうしたらいいか分からなくてっ!!」
「分かった! とにかく落ち着いて、不審者かもしれないし警察には」
「連絡しました。でも、まだ来てくれないんです。私心細くて……」
「そうだよな……今から車飛ばしても他県だしな、電話繋いだままでいいから。今の状況教えてくれ」
「とにかく真っ赤で、床も壁も……屋根も血でべっとりなんです。あと、さっきから変な声が……子供の笑い声みたいな声がしてます」
「子供? 意味わかんねぇけどB子、とにかくそこから離れろ!!」
「……先輩、多分もうだめです。さっきから声、近づいてきててああ……ああああっ梯子の下に何かいます!! 黒い泥みたいなのがっ」
「っB子、暗いから見にくいだけだ!! とにかく落ち着けって!!」
「そんなこと言ったって、ここ木の上なんですよ!? 上がって来てるんです……もう半分くらいっ!!」
「ああっ、そうだ。B子なんか投げつけてやれ!! 梯子で手は塞がってるし出来るだけ重いもんぶつけて叩き落としてやれっ!!」
「……」
「B子? おいB子どうしたんだよ!? 返事しろよっ!!」
「先輩……さようならです。あれ、不審者じゃないです……お腹にもう一つあるんです。A君の顔が、お腹から飛び出ててて、て……てててててて」
「おい、何言ってるんだよ……それじゃあまるで幽霊でもいるみたいじゃないか」
「先ぱい、来て下さい……助け」
「B子? なぁ、本当は冗談なんだよな? あり得ないだろ幽霊なんて……おいって、今なら怒らないから冗談だって言えよ。おいっ!! Aもそこにいるんだろ!? いい加減にしろって!!」
「……」
「おい、なんか言えよ……」
「せん……」
「……ぱい」
「A? B子!? はは、なんだよ冗談キツイぜ……」
「せん輩、て……」
「……は?」
「;¥%@輩、もこ#%に来/¥#」
「嘘……だよな?」
「先輩先ぱ<}_※……先輩%$+※€_£先$_+|¥€¥%#@《€£££〆※※+€※※※※》」
「う……わああああああっ」
……
あの後俺は電話を切ってしまった。
翌日は仕事なんて行く気が全然起きなくて、その癖もうほとんどそんなわけないって分かっているのにこの結末が『後輩に担がれてビビって仕事休んだ』とかだったらいいなとか『ドッキリとかマジかよ。俺そーゆーの苦手なんだよ』なんて言える感じだったらいいのにとか……そんな風に思ったんだけど全然ダメ。
2人は行方不明になってて、B子の電話でもう警察が動いてた。
秘密基地に落ちていた2人の携帯電話に俺との通話履歴があったから警察に呼び出されたけど、幽霊だか化け物だなんて信じてくれる訳なくて、でも他県にいたのがアリバイで容疑者にはならなくて済んだ。なんだっけ、重要参考人とかいうあつかいらしい。
警官が言うには2人は秘密基地で行方不明になった。
これは間違いないみたいだが、俺の話と一つだけ食い違うのが秘密基地が血まみれになっているはずだってことだ。通報を受けた警官が向かった時には秘密基地は綺麗なものでまるで舐めた様に埃ひとつない綺麗な現場だったらしいが……俺はその舐めた様に綺麗ってのが本当にアレがそうしたからなんじゃないかって思えて仕方ないんだ。
それでな、実はこの話はまだ終わってないんだ。
俺が警察署にいた時にB子が……B子って名乗るヤツが俺の職場に来たらしいんだ……。
「先輩いますか」
って聞いてたらしいけど、いないって分かったらすぐに帰ったらしい。
なんなんだろうな。
彼女が言うには子供の声で黒い泥のような、その腹からAの顔……いや、今はB子の顔も覗いているんだろうか。多分秘密基地が血みどろになるくらいだから丸呑みじゃないだろうし、食った物を腹の中でぐちゃぐちゃつなぎ合わせて見た目変えたり喋ったりも出来るっぽい。俺の職場に来たところを見るとAの記憶も自分のもんにしてるみたいだし幽霊にせよ怪物にせよとにかくマジでヤバいヤツだ。
ただ、もうそいつが俺を探す事はないと思う。
俺も行方不明になるのは嫌だし、戦う気もしないからな。とりあえずあの立地、裏山について教授に聞くとこれがドンピシャ。昔山小屋で妊婦が自殺してるらしくて、しかもその鎮魂の地蔵とやらが最近の土砂崩れでぶっ壊れていたんだとか……だからそれを修理することが決まった今、もう俺は安心だ。2人の事は残念だけどこれ以上俺に出来る事は無いと思う。
さて、そろそろ仕事に行かなきゃいけない。
結局警察の取調べもあって3日も職場を休んじまった。所長には一本電話しておいた方が良いかな。
「あ、俺です。急に3日も休んですいませんでした。今日は出勤できますからよろしくお願いします」
「あ@¥%ああ、待っ€£よ……」
さて、今のは電波不良……だよな。




