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第1話 路地裏

「僕たちは互いに神域から追い出された、邪魔者だ」

新宿、歌舞伎町の路地裏。降りしきる雨は、かつて山を駆けていたレオの金色の毛並みを泥色に染めていた。目の前のゴミ捨て場、異様に整った銀色の髪を持つ女――雌鹿の化身であるイオリが、コンビニの廃棄パンを不本意そうに口に運んでいる。

「……言い方。せめて『自由を求めた放浪者』と呼んでくれないかしら、レオ」

「腹を壊しそうなパンを齧ってる奴が、よく言うよ。お前のいた神域はどうしたんだ」

イオリは細い指で雨を払い、冷ややかな瞳でレオを射抜いた。

「過疎化よ。信心を失った人間が来なくなり、社が崩れた。神様は『後は若いもんで』って書き置きしてパチンコ屋に消えたわ」

「俺のところは、ゴルフ場の開発で山を削られた。主様は怒る気力もなく、今じゃ隣町のペットショップでポメラニアンのふりをしてる」

二人は顔を見合わせ、深いため息をついた。かつては雲を裂き、大地を揺るがした神使たちが、今やネズミも避けるような路地裏で肩を寄せ合っている。

「ねえ、レオ。私たちだけで、新しい神域を作らない?」

「はあ? ここはコンクリートの塊だぞ。土もなけりゃ、清らかな水もありゃしない」

「神がいなけりゃ、捕まえてくればいいのよ。この街には、役目を忘れて遊び歩いている『元・神様』が腐るほどいるわ」

イオリが不敵に微笑む。その瞬間、彼女の背後にうっすらと、かつての神域を象徴する巨大な角の幻影が浮かび上がった。

「その神を、私たちがこの街のどこかに閉じ込める。そこを私たちが管理する、新しい『聖域』にするの。人間のルールにも、古いしきたりにも縛られない、私たちだけの場所をね」

レオは鼻を鳴らし、雨の中に混じる、わずかな「神性」の残り香を嗅ぎ取った。

「……面白い。その神様、どこにいる?」

「目と鼻の先よ。あそこの雑居ビルの地下――今は『占い館』を自称している、落ちぶれた龍神様がいるわ」

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