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The Eternal Dance

元凶の女子2人を調べるため、キャンパスライフ♪

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

「だずけて、翔花(とか)……」


 目の前で、親友が倒れた。


 正面から伸ばされていた手は届かず、血まみれの制服は力尽きたように倒れた。


 その頭には黒い針のようなものが深々と刺さっていて、絶え間なく痙攣する女子の口から発せられる言葉はもう意味を成さない。


 その女子の後ろで羽交い絞めにしているのは、巨大な虫だ。


 無自覚に座り込んだ自分は、それを眺めるしかできない。


「ギッ!?」


 次の瞬間、その虫は、悲鳴と共に四散した。


 かすかな希望を抱いて、倒れた親友を見るも、口から泡を吹いたまま、焦点の合わない目つきのまま。


 背中を抉られ、ピクリとも動かない。


 知らずに泣き出した自分に、同年代の男子の声。


「加減が難しい……。仕方ない、事態の収束を最優先にするか!」


 淡々とした呟きに、そちらを見上げた。


 短い黒髪に紫の瞳をした少年が、立っている。


 見るからに安そうな私服で、オシャレとは言えない。


 優しい雰囲気だが、この惨状では逆に怖く感じる。


「お前は、無事か? 俺の邪魔をするなよ……」


 言うや否や、その男子が背を向けた。


 そちらへ手を伸ばしつつ、かすれた声で呼び止める。


「ま、待って……」


「アレーテ、殲滅を優先しろ! 警察が集まるより早く、済ませるぞ?」


 携帯電話で話しつつ、小さくなっていく背中を見ながら、私は気を失った。


 ・・・・・

 ・・・・

 ・・・

 ・


 火野平(ひのひら)翔花(とか)は、無機質なマンションの一室で目覚めた。


 安いベッドで上体を起こして、寝癖がついた明るい茶色のショートボブに、まだ眠そうなオレンジブラウンの瞳を瞬かせる。


 美人系だが、可愛い系の雰囲気も。


 薄暗い寝室で、背中に透明な羽がある小さな妖精が飛ぶ。


「おはよう、翔花!」


「おはよう、フルール……。伊沙花(いさか)市の様子は?」


 翔花の周りを飛びつつ、フルールが息を吐く。


「太陽東(たいようひがし)高校なら、いつもの調子だよ? ミリア女子高等学校とは状況が違うから――」

「分かってる! だけど、このままじゃ……」


 沈黙で満ちる。


 ため息をついたフルールは、注意する。


「魔法少女アンジュソニアとして無理ができると言っても、翔花の精神はそうじゃないから!」


「うん……」


 肩を上下させた翔花は、全てが狂った日を思い出す。


 母校だったミリア女子高等学校が巨大な虫の群れに襲われた惨劇は、いつまでも夢に出てくる。


「あいつが……」


 ベッドの上掛けを握りしめる。


 あれ以来、何を食べても味がしない。


 自分でいじっても、何も感じない。


 ただ、同じような化け物を屠(ほふ)ってきた。


 言わば、命尽きる時まで終わらないダンス。


 全ては、力がなかったことへの後悔で――


「あいつを殺してやる……。苦しんだ皆の分まで」


 翔花の見開かれた瞳にあるのは、殺意だけ。


 慌てたフルールが、取り成す。


「あ、あの! 私、新発売のスイーツを食べたくて……」


 気遣いを悟った翔花は、笑顔を作る。


「分かった! じゃ、行ってくる」



 ――1時間後


「ありがとうございましたー!」


 火野平翔花は、箱に入ったスイーツの重さを感じつつ、路上へ出る。


 本能が剝き出しになる寝起きと比べて、だいぶ落ち着いた。


(フルールに、悪いことしちゃったな! せっかくだし、今日はご馳走に――)


 立ち止まった翔花は、向きを変える。



 高校生と思われる男子は、立ち止まった。


 手の平から砂のような物体を落としつつ、何かを唱えている。


 地面に落ちた物体は、生き物のように動き出し、外側のサークルから複雑な文様を描き出す。


 翔花が、その横を通り過ぎる。


 その気配と足音に振り向いた男子は、すぐに視線を下へ戻す――


 カァアアンッ!


 鼓膜がやられるような金属音が響き渡り、驚いた男子がそちらに向き直る。


 黒い物体をブレードのようにしならせたのは、長い黒髪をツインテールにした少女だ。


 赤い目を輝かせる。


 縮んだ物体は、少女の片腕に戻った。


「油断ですわよ、才(さい)?」


「おおっと! 今、攻撃されたのか!? いや、そのためのお前だろ?」


 呑気な声を上げたのは、翔花が探し求めていた男子。


(見間違えるはずがない!)


 瞬間的に、異世界ファンタジーの女騎士のような姿へ変わり、右手のレイピアでその男子を串刺しにするための突き。


 けれど、必殺の攻撃は、黒い帯のようなもので防がれた。


(今のを!? 白い肌……。それに、体の一部?)


 殺気がない、体をよじることも不可能な距離での攻撃に対応されたことで、翔花は焦った。


 吸血鬼?


 だとすれば、白昼にこれだけ堂々と――


 翔花を見つつも作業している水鏡(すいきょう)才(さい)の前に立った水鏡アレーテは、獰猛(どうもう)な笑みを浮かべた。


「才に泣かされた女子ですの? あいにく、兄は忙しいので……」


 足で地面を蹴れば、相手を見たままのバックステップ。


 ザザザと、ブーツの底で止まる。


 改めて、レイピアの切っ先を向けた。


(どうする? 今の動きを見る限り、体そのものが武器! あいつも、何かをやっているし……)


 時間が経つほど、不利になる。


 腹をくくった翔花が、先手を打とうと――


「お前は、俺をいったい何だと思っている?」


「才が、どんどんフラグを立てるから!」


 翔花は固い地面を削りつつ、大きくジャンプ。


 雑居ビルの外壁を蹴り続けることで、2人からの視界を切った。


 変身を解いて、人ごみに紛れる。

 

(ようやく、会えた! ようやく……)


 翔花の狂気を感じさせる笑みが、通行人を遠ざける。


 フルールのために買ったスイーツの袋は、才を襲った現場に落としたまま。


 それを気にすることなく、彼女は歩き続けた。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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