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捕虜は殺されないだけ

指名手配となった室矢重遠は、どこへ!?

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 水鏡(すいきょう)アレーテは、自然体のまま。


 テーマパークの賑やかなBGMと、狂い始めた人々が通りすぎるだけ。


 いっぽう、アレーテと向き合った、クラウディア・マルガレータ・エルデル。


 隠れようか、と悩むも、すぐに諦めた。


「いつから?」

「……これでも、わたくしは魔術師ですわ! 舐めないでくださいまし」


 息を吐いたクラウディアは、提案する。


「ここは、人目があります……。別の場所へ行きましょう」



 ――フードコート


 何とか、3人分の席を確保した。


 周りは騒がしく、老若男女の声。

 美女、美少女に注目する視線はあれど、ガンマイクを向けても聞き取るのは難しい。


 座っているクラウディアが、自分のドリンクを口に含み、落ち着いてから話す。


「結論から述べると、私はもう死んでいます……。いえ、そのはず」


「何があったんですの?」


 テーブルを挟んでいるアレーテの詰問に、正面のクラウディアが答える。


「私と妹のルイゼは、US軍でアイドル的な部隊にいました。士気高揚としての慰問です……。ライブのようなパフォーマンスはあれど、接待で抱かれるような行為はなし。若い女だけのグループで、前線に近い兵士たちに娯楽を提供していたんです」


「すさんでいる兵士が、それぐらいで鎮まるとは思えませんけど?」


 アレーテの質問に、クラウディアは目をそらす。


「別の女性たちが担当しているとは、聞きました。ハッキリと説明されたわけではありませんが」


 US軍として、綺麗なままのアイドル活動。


「ある日、奇襲されました……。最寄りの敵が、捨て身の突撃をしてきたんです」


 不意を突かれて、迎撃が間に合わず。


 ライブ衣装のまま、指揮車に乗り込んだ。


「表向きの所属は、機甲部隊……。対抗できる火力と装甲があるのは、私たちだけ」


 しかし、ゲリラに近い敵とはいえ、機甲部隊だけでは浸透される。


「私たちが粘ったおかげで、一部の味方は逃げられたようです。代わりに、私たちは捕虜になりました」


 うつむいたクラウディアが、小さく震え出す。


「そこで、私は……」


 話そうとするも、歯をガチガチと鳴らし、明らかに様子がおかしい。


「もう、いいですわ! 自分が死んだと思える理由を言えるのなら」


 アレーテの発言に、クラウディアは顔を上げた。


「撃たれた気はしますが……。なにぶん、死ぬのは初めてだったので」


 二度も、ありませんよ?


 心の中で突っ込んだ綾ノ瀬(あやのせ)奈々美(ななみ)は、考える。


(捕虜……。それも、これほどの美人が)


 奈々美の視線に気づいたクラウディアが、苦笑する。


「ご想像の通りです……。ゼロから、一気に経験人数が増えました! 数える気にもなりませんが」


「ご……いえ、捕虜にした勢力に心当たりは?」


 反射的に謝ろうとした奈々美は、言い直した。


「戦力を整えた友軍が反撃に転じて、かなり残酷に殺したようです。というのも、私が死んだ後の話だったので! 把握している範囲では、妹は無事だったはず」


「そ、そうですか……」


 奈々美は、返す言葉が見つからない。


 代わりに、アレーテが問いかける。


「クラウディアさんは、どうしたいんですの?」


 悩み始めた本人が、ポツリと呟く。


「私は、もう死んだ人間です。妹が……ルイゼが幸せに生きてくれれば」


「あなたは、どうなっても構わないと?」

「……ええ!」


 アレーテの質問に答えたクラウディアは、迷いなき表情だ。


 女子2人の視線を集めたアレーテが、自分のドリンクをすする。


(さい)は、ルイゼを殺すかもしれませんよ?」

「……それが、妹の幸せであれば」


 奈々美は、指摘する。


「才くんに、対処できるんですか?」


 向き直ったアレーテが、事もなげに言う。


「才は、わたくしの主人ですわ! タイムループと分かった以上、あとはカップラーメンを作るようなもの」


「そ、そこまで!?」


 驚いた奈々美に、アレーテは頷く。


「問題は……才がルイゼを気に入って、この永遠を維持するほうに回った場合」


「アレーテが止めては?」

「……無理ですわ! わたくしは、逆らえません」


 再び驚いた奈々美は、しみじみと頷く。


「そうですか……。ちなみに、どういう調教をされたので――」

「お話の途中で申し訳ないけど、才くんが妹に篭絡されたら終わりと?」


 クラウディアの突っ込みで、脱線をまぬがれた。


 そちらを見たアレーテは、首肯する。


「ヘタレ童貞ですから、色仕掛けでイチコロだと思いますわ!」

「……私、けっこう誘ってるんですけど」


 ボソリと呟いた、奈々美。


 それに対して、笑顔のアレーテが答える。


「OKサインがあるのに応じないヘタレだから、童貞ですの!」

「……なるほど」


 引きつった顔のクラウディアは、相談する相手を間違えたかな? と思うも、妹が才に執着している以上、どうすることもできず。


 真剣な表情になったアレーテが、タイムリミットを告げる。


「才は、わりと気が短いですわ……。夕方か夜には、ルイゼを抱いて、共にこの狂った世界を繰り返すか、あるいは殺すかを決めるでしょう」

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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