女を侍らせていた男子が魔法学校にやってくる!
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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魔法学校に通っている泉佳乃は、高級マンションの一室で目覚めた。
日光のような目覚ましによる、穏やかな目覚め。
ルーティンで登校する準備をしながら、長い黒髪にブラシをかける。
タイパで、同時にサンドイッチをもぐもぐ。
前髪を横にざっくりしつつ、両耳の前にデザイン的なもみあげがある、姫カットだ。
学生証によれば、高等部1年。
中学生どころか、小学生に見えそうな童顔で、琥珀色の瞳の顔写真が張り付けられている。
ブウウウッと震えた、卓上のスマホを手にとる。
同じ魔法学校に通う、友人から。
“編入生が来るんだって!”
そうなんだ?
“本川高校で売春クラブの元締めをしていた幹部の1人が、うちに来るって! 首席の綾ノ瀬さんも、すっかり言いなりだとか! 自宅に住まわせているっぽいから、毎日ヤッてるんじゃない? 清楚な見た目だけど、すっごい性欲だったわけ!”
ひえっ!?
何で、そんな男子を入れたの?
佳乃は憂鬱になりつつも、適当に返信しつつ、朝の準備を急ぐ。
“一部の生徒が、その男子を追い返そうと待ち構えるってさ! 面白そう!”
友人の無責任な発言に、佳乃は溜息をついた。
「まったく……。でも、何で入れたんだろ? いくらウチが特区の学校と言っても、理事会が黙って……綾ノ瀬のゴリ押し? 嫌だなあ……」
独白しながらも、両手は動き続ける。
魔法学校のブレザーを羽織り、正面玄関へ向かった。
◇
綾ノ瀬奈々美を狙う人物を特定できないまま、ラッキースケベは10回を超えた。
彼女の上下のバリエーションを知ったうえ、うっかり部屋を間違えた彼女が同じベッドで寝ていたことも。
起きたら、上下逆さまの奈々美がいて、頭と正反対の場所に挨拶したという。
念のために言うと、彼女はパジャマを着ていた。
脱いでおくべきでした、という、ボソッとした呟きは、気のせいに違いない。
俺は、非常に落ち着かない。
どこが? とは言わないが……。
ともあれ、ボロくて治安が悪い繁華街の雑居ビルの一部屋より安全で快適だ。
(女子2人との同居は、気を遣う!)
やっぱり、賃貸で一人暮らしをしたい。
でも、お金と信用がないのだ。
魔法学校に入るため、通信制の高校に入り、そこから編入する形だ。
(観察特区だから、異能がある子供の受け皿だな!)
唯一の救いは、そこも新しい施設ということ。
魔法陣のような丸いマークがついたブレザーを着て、俺は義妹の水鏡アレーテと共に、ここの優等生である奈々美に案内されて、正門を通る。
遠巻きにしている生徒たちが、何やら話している。
奈々美は、笑顔で指し示す。
「ここは自習に近いので、才くんとアレーテも自分のペースで――」
「綾ノ瀬さん! そいつが、例の編入生ですか!?」
俺たちが見ると、そこには同じ制服を着た男子が1人。
敵意にあふれた目つきで、俺を睨む。
いつの間にか、剣呑な雰囲気の生徒が出てきた。
(男女……。学年も、バラバラか?)
特区だからか、わりと国際色が豊か。
声をかけてきた男子は、後ろに控えている奴らの代表らしい。
「風紀を乱すような奴を入れることは、たとえ理事会が認めても、ボクたちが認めない!」
ムッとした奈々美が、抗議する。
「伊田くん!」
「綾ノ瀬さんは、騙されているんだよ! こいつに何をされたか知らないが、一度落ち着いて――」
「水鏡だ! 俺に用があるのなら、俺と話せ」
俺の割り込みで、顔をゆがめた伊田が、こちらを向いた。
「聞いての通りだ! お前は歓迎されていない! 分かったら、とっとと帰れ」
「……願いを叶えてくれたら、そうする」
思わぬ発言だったようで、伊田は不審そうな表情へ。
「才くん!?」
傍にいる奈々美が驚くも、伊田はニヤリとする。
「何だ? 聞くだけ聞いてやる」
「……賃貸契約の保証人になってくれ」
ポカンと口を開けた伊田が、聞き返す。
「は?」
「賃貸の保証人だ! 俺はいい加減に一人で暮らしたいが、引っ越し先がなくて――」
「ま、待て待て! お前はいったい、何を言っているんだ!?」
慌てる伊田にジリジリと迫りつつ、説明する。
「なら、こうしよう! とりあえず、お前の家に泊まらせてくれ!」
「嫌に決まっているだろ!? いい加減にしないと、ボクの後ろにいる……いない!」
巻き込まれないように、伊田の仲間は退避したようだ。
遠巻きになりつつ、事態を見守っている。
その時に、低いイケボで男子の声。
「何を騒いでいるのかと思えば……。君たちの一存で彼の進退を決めるわけがないだろう? これは、魔法学校としての決定だ」
全員が見ると、オシャレな眼鏡をかけた、同じ制服の男子。
そちらを向いた伊田が驚く。
「せ、生徒会長……」
メガネ男子は、息を吐いた。
「君とお仲間も、一緒に来たまえ! 逃げてもムダだぞ? 正門の前に監視カメラがないと思うか?」
その発言に、フェードアウトしかけていた連中がピタリと止まる。
観念したように、こちらへ近づいてきた。
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