特に意味のない学歴差別が俺を襲う!
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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俺は、ドアチェーンが切れたままの自宅で孤立無援にされた。
(アレーテまで……)
依頼主の綾ノ瀬一京と、その妹である奈々美が、対面のソファに座っている。
大学生の一京は、慎重に問いかける。
「妹の救出について、文句はない! ただ、自宅で奈々美が泣いていてね? 君の事務所……ここにいた後らしくて、何があったのかを知りたい」
彼女を探しに行ったと思われる水鏡アレーテを見るも、俺の横に座ったままで、答える気配なし。
仕方なく、一京に向き直る。
「まず、綾ノ瀬さんを泣かせたことに謝罪いたします……。お気づきかは不明ですが、俺の視点で綾ノ瀬さんに何らかの魔術的な影響が見えました。それについて、うちのアレーテが何かやっていると理解したものの、彼女から説明がないことで俺は知らないほうがいいと判断しました」
頷いた一京は、先を促す。
「そこまでは、分かった! だが、奈々美にズバッと言う必要があったのか?」
「ご指摘は、もっともですが……。現時点で、綾ノ瀬さんは『クライアントの妹』という立場ゆえ、俺が親しくなりすぎると良くない、という判断でした。そちらの報酬の支払いがこれからですし、『綾ノ瀬に入り込もうとしている』と思われても困ります」
ここで、アレーテが口をはさむ。
「ぶっちゃけ、うちは電気が止まるぐらいの状況でして! 才は、前にやった仕事で報酬を踏み倒されています……。気分を悪くされたら申し訳ないですが――」
「俺が、奈々美を口説いたとして報酬を支払わないと?」
腕を組んだ一京は、考え込む。
やがて、顔を上げた。
「話が飛ぶが、正直に答えて欲しい! 君は、奈々美のことが嫌いか? 2度と顔を見たくないほど……」
無言で身を固くした奈々美を横目に、俺は口を開いた。
「綾ノ瀬さんは、友人になれる人だと思います。男女で友情が成り立つのかという問題もありますが……。現状だと、距離感に困ります。俺の顔を見るたびに、本川高校の事件を思い出させても」
息を吐いた一京は、言葉を選ぶ。
「そうか……。君も生活がかかっていて、仕事の話だったからな? 色々と絡まっているので、1つずつ解決したい」
「どうぞ」
俺の催促に、一京は呼吸を整えた。
「君の見立て通り、奈々美は魔術的な影響下にある! その件は、アレーテくんに任せた」
「最長で数年かかるため、綾ノ瀬さんと顔を合わせないのは無理ですわ!」
アレーテの断言に、俺は腕を組む。
「それは、うちで面倒を見るとしても……。どうなるので?」
「つまるところ、数年は嫌でも関係を続ける……。だったら、今のような緊張した間柄ではやりにくいだろう?」
一京の発言に、頷く。
すると、彼は思わぬことを言う。
「才くん? 君は今、学校に通っているか?」
「いえ、探偵事務所だけで――」
「中卒というのは、自営業にしてもキツいと思うぞ?」
一京の言葉のナイフが、ザクッと刺さる。
アレーテも、それに乗っかる。
「わたくしも、それは気になっていました……。お金がないから事務所を休めないし、たまに仕事があっても報酬を支払わない依頼主ばかり。完全に、ナメられてますわ!」
「未払いの債権は、うちの弁護士に詰めさせる! それはそれとして、アレーテくんが話し相手で仕事のパートナーとはいえ、高校生ぐらいで同年代の友人がいない、幅広い知識を学ぶ機会がないのは良くない」
一京の言葉に、そちらを見た。
首肯した彼が、提案する。
「どうだろう? 君たちも魔法学校に通っては? 通学できる自宅や学費については、こちらで準備する! 今回の報酬は、金額が大きいんだ。節税対策として、なるべく現金以外で支給したい。頼む!」
頭を下げた、一京。
その横で座っている奈々美が、思い詰めた顔で言う。
「水鏡くんは……私と友達になるのが嫌ですか?」
息を吐いた俺は、奈々美の顔を見た。
「前は、言いすぎたよ……。改めて、関係を築いていこう」
「はい!」
――高級住宅地にある注文住宅
家族で暮らせそうな、立派な戸建て。
繁華街にある住居を兼ねた賃貸事務所から、とりあえず足を踏み入れた。
「いらっしゃい! どうぞ、上がってください」
我が家のように招いた、綾ノ瀬奈々美。
俺と水鏡アレーテは、一通り案内された。
「1つ、聞いていいか?」
「……何でしょう?」
振り返った奈々美に、ズバリ聞く。
「お前も、ここに住むの?」
「ええ、私の家ですから!」
…………
「えっ?」
「ちなみに、あのボロい賃貸は契約解除しましたわ!」
アレーテの発言に、遠い目となる。
「あっ、そうか! お兄さんも一緒に――」
「兄なら、引っ越しましたよ? 仕事が忙しいとかで……」
奈々美が、笑顔で答えた。
女子2人に見られたまま、提案する。
「俺だけ、賃貸を借りて――」
「そのお金は、どこから出ますの?」
アレーテの突っ込みで、俺は黙る。
パンッと手を叩いた奈々美が、嬉しそうに告げる。
「今日はご馳走ですよ! 3人で、楽しく過ごしましょう」
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