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宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった  作者: 初雪空
第二章 魔法学校への編入
27/29

女心が分からないにも程があります!

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 俺の隣で寄りかかるように座っている綾ノ瀬(あやのせ)奈々美(ななみ)は、嬉しそうに自分のスマホを俺が見られるように持つ。


 けれど、その胸元は大きく開いており、肩から伸びる紐とその物体が丸見えだ。


(……まったく、気づいていない?)


 奈々美は気にした様子もなく、魔法学校での日常を語る。


「世間が思っているよりも、ウチは魔法を使っておらず――」


 スマホを見ようとすれば、自然に胸元が目に入る。


 指摘しようか悩むも、時間は過ぎていく。


「あ! ちょっと、お待ちください……。学生証を」


 奈々美は、自分の横に置いているバッグに手を伸ばした。


 そして、上体を戻すが――


「ほら? 私、本当に魔法学校の生徒ですよ?」


 顔写真付きのカードを見せられたが、それどころではない。


 奈々美の胸元にある肩紐の1つが、下にずり落ちていたから。


(え? 片側は丸見えで、気づかない……)


 いっぽう、奈々美は上体を動かさないままで学生証を仕舞った。


「フアッ! 私、眠くなってきました……。少し、仮眠をとってもいいですか?」


 俺のほうに体を預けた奈々美は、すうすうと寝息を――


 ピンポーン♪


 バッと上体を起こした奈々美は、玄関ドアのほうを向く。


 俺もソファから立ち上がりつつ、インターホンへ。


「アレーテか? 綾ノ瀬さんは……もう来ているぞ?」


 内鍵を外し、玄関ドアを開いた。


 勢いよく入ってきた水鏡(すいきょう)アレーテは、犯人を探しているように見回す。


 ソファに座っている奈々美を見つけて、ホッとする。


 俺は玄関ドアを閉めて、内鍵をかけ直す。


「おかえり」

「……寿命が縮まりましたわ」


 今の特区で、まだアレーテに手を出す奴がいるのだろうか?


 全員が揃ったから、本題に入る。


 具体的な原理を除いて、一通りを説明。


 息を吐いた奈々美は、脱力する。


本川(ほんがわ)高校の古波津(こはつ)さんは、USへ旅立ちましたか……。依頼にないことをお願いして、申し訳ありません」


 奈々美の胸元は、中が見えない状態だった。


(さっきの今で、ブラの紐が落ちていたことに気づいた?)


 アレーテの視線を受けて、探偵事務所の所長として応じる。


「こちらも、古波津さんと面識がありましたから……。依頼人はあなたのお兄さんで、俺の隣にいるアレーテが成功報酬などの交渉を担当しています。そちらに質問がなければ、あなたへの説明は終了です」


 対面のソファでモジモジした奈々美は、俺を見た。


「あの……。水鏡くんと、また会えますか? 私、これでお別れは嫌です」


「申し訳ございません……。あなたは依頼人の妹さんですし、何よりも――」


 ――現状で何らかの魔術的な影響を受けている方の意見は、拒否します


 その返答で、和やかだった空気は凍りついた。


 同じく固まっていた奈々美が、ゆっくりと話す。


「ア、アハハ……。そうですよね? すみません、私の気持ちは偽物だから――」

(さい)っ!!」


 俺の隣に座っていたアレーテが立ち上がり、俺を睨みつつ、絶叫した。


 いっぽう、小さく震えながら俯いた奈々美は、泣き出す。


「……失礼しますっ!」


 横に置いていたバッグをつかみ、逃げるように走り去る奈々美。


 俺は、胸倉をつかんだアレーテに持ち上げられるも――


「……後にしますわ」


 乱暴に放され、自分のスマホをつかみ、出て行くアレーテを見送るのみ。


 息を吐いた俺は、誰もいない自宅に取り残される。



 ◇



「ただいま……」


 高級住宅街。


 注文住宅に帰ってきた綾ノ瀬一京(いっきょう)は、妹が出迎えないことに不審がる。


「……妙だな?」


 ブルルルと震えたスマホを見れば、新着のメッセージ。


 それを確認することなく仕舞った一京は、左腕に巻いた時計をさわる。


(防犯装置に異常はない、か)


 持っていたビジネスバッグを置きっぱなしに。


 玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えることなく、摺り足でリビングダイニングへ……。


 センサーで明かりがつくはずだが、暗いままのリビングダイニング。


「……奈々美?」


 ダイニングから続く台所に、人の気配がある。


 明かりをつけた。


 片目を閉じていたことで、半分の視界。


 死角を警戒しつつ、片目は閉じたまま。


 これは、急に暗くなった場合の備え。


 ジリジリと進み、今度は台所の明かりをつける。


 壁を背にしたまま、綾ノ瀬奈々美が座り込んでいた。


 周りに、誰かが潜んでいることもない。


 息を吐いた一京は、妹を見て……固まった。


「お兄様……」


 おずおずと見上げた奈々美の両手には、包丁が握られていた。


 どう見ても、これから食材を切るとは思えない。


「奈々美!」


 とっさに動いた一京は、両手の上から柄を握りしめ、切っ先を誰もいない方向へ向けつつ、魔法を発動した。


「あっ……」


 ベクトルを与えられた包丁が飛び出し、その先にある壁に突き刺さった。


 ビイインッと、刃が震える音。


 片膝をついた一京は、妹の両肩をつかんだ。


「何があった!?」


 緊張が解けたのか、泣き出す奈々美。


 落ち着くのを待つ間に、スマホの新着メッセージを確認する。


 やがて、奈々美はヒックヒックと泣いたまま、事情を説明した。


 全てを聞いた一京は、正面から妹を抱きしめる。


「大丈夫だ、奈々美……。俺に任せておけ!」


 ようやく顔を上げた彼女は、不思議そうに呼びかける。


「……お兄様?」


「安心しろ! 全て上手くいく……。全てな?」

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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