大変な問題が残りましたわ……
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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一連の事件が解決して、無自覚の男子には真綿で首を締める責めが待っている。
それはいいが――
水鏡アレーテは、観察特区の自宅――ドアチェーンが切られたまま――で冷や汗を流した。
「それは、間違いないので?」
『……はい! さんざん心配をかけたので、兄に秘密にしているのも心苦しく』
恥ずかしそうに告げたのは、依頼主の妹であり、救出対象だった綾ノ瀬奈々美だった。
息を吐いたアレーテは、確認する。
「あなたの下腹部に、まだ淫紋があると……」
『え、ええ……。その、順番はどうしましょう?』
禁書は、全て消したはず。
しかしながら、依頼主に黙っているのは非常にマズい。
「問題が問題だけに、才を抜きにして、3人で話しませんか? 報酬の支払いを含め、納得するまでの説明が必須です」
沈黙が続くも、アレーテの返事。
『淫紋の件は、先に兄へ話しておきます……。ただし、水鏡くんは絶対に同席させないでください。可能なら、顔を合わせないように』
「心得ています」
やがて、メッセージで打診。
それに返信すれば、ちょうど自宅に兄がいたから話す、とのこと。
――数時間後
繁華街の雑居ビルから高級車で送迎され、どこかの応接室へ。
(完全に、事務所へ連れ込まれた感じですわね?)
焼き菓子とコーヒーを出されつつ、向かいに座る兄妹を見た。
「最初に、わたくしの不手際によるトラブルにお詫び申し上げます! 話をさせていただければ、最初から説明いたしますが……」
腕を組んでいる綾ノ瀬一京は、妹である奈々美の視線を受けて、しぶしぶ応じる。
「分かった……。できるだけ、結論と事実でお願いしたい」
「ご理解いただき、ありがとうございます! 発端となった禁書は消したので、わたくしが追加した条件が原因でしょう。許可をいただければ、綾ノ瀬さんの淫紋を魔術的に削っていきますが、影響を最小限にする場合は長くて数年です。こちらの不手際なので、アフターサービス。報酬から引くのであれば、そちらでどうぞ」
アレーテの説明に、一京は呆気にとられた顔。
てっきり、グダグダと感情論や、報酬を引っ張るものだと考えていたようだ。
気を取り直した一京が、奈々美を見る。
「お前は、どう思う?」
「本川高校で水鏡さんに応急処置をされなければ、私は自分であの売春クラブや公衆便所に足を運んだと思います」
キッパリと言い切った奈々美に、一京は考え込む。
「こちらが対応できるレベルで教える気は?」
「……悲劇を繰り返す可能性があるため、拒否します」
アレーテは、すぐに補足する。
「魔術の行使には、精神力や代償を伴います……。わたくしが行う分には自己責任となりますが、他の方では発狂するのがオチ! それに、人を自由にできる力は歯止めが効きません」
「なるほど……。報酬については、テロ集団からの人質救出の相場で払おう! そちらは担当者から連絡させるが――」
「お兄様? これだけお世話になって、もう会えないのは……。水鏡くんにお礼を言っても?」
困った一京は、向かい合って座るアレーテを見た。
「そ、そうですわね……。依頼主が良ければ……」
一京が聞きたいのは、才に会わせた場合の影響だ。
しかし、会わせてみないと分からない、という話。
会わせるか、会わせないかの決断だけ。
一京は、ため息をついた。
「分かった……。ただし、水鏡くんと2人きりになることは許さない。例外なく、だ」
「……承知しました」
◇
俺は、帰ってきた水鏡アレーテを見る。
「それで、約束してきたと……」
後ろめたそうなアレーテは、視線を外しつつの返答。
「え、ええ……。ほら? これで会うこともないでしょうし」
「お前、何か隠していない?」
俺を見たアレーテが、ダラダラと汗を流す。
「別に……」
「依頼主の1人だから、いいけどさ? 迎えの準備は、お前がやってくれよ?」
――数日後
ピンポーン
相変わらず、壊れたままのドアチェーン。
インターホンの画面を見ると、余所行きのワンピースの綾ノ瀬奈々美だ。
「いらっしゃい! アレーテ、買い出しに行っているけど?」
『……そうですか。中に入れていただければ、助かります』
水鏡アレーテは、自分が帰ってくるまで開けるな、と言っていたが――
「どうぞ」
『はい、お邪魔します』
昼でも、特区の繁華街は治安が悪い。
目立つ女子高生の奈々美を立たせておくと、余計なトラブルを招く。
ガチャッ ギィイッ
「久しぶり! もう1人は、すぐに帰ってくると思う」
「……失礼いたします」
奈々美を中に入れて、閉めた玄関ドアの内鍵をかけた。
ソワソワしている彼女は、しきりに室内を見ている。
「あ! 魔法学校の写真を見ますか? 手土産もありますし……」
片手で下げている紙袋は、やっぱり高級店だ。
俺に断りを入れてから、簡易キッチンでお茶の用意を始めた。
一応は、探偵事務所。
応接用を兼ねたソファもあり、並んで座った。
自分のスマホで写真を表示した奈々美が、嬉しそうに教える。
「この子は、USから留学している魔法使いで――」
ぴったりと寄り添う奈々美が差し出したスマホを見ると、金髪碧眼のロリのような女子高生が1人。
巨乳で、にこやかな笑顔だ。
過去作は、こちらです!
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