触れてはいけない技術に頼れば、こんな結末だ
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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コスプレ用の可愛い制服を着直した古波津百合は、目の周りだけ覆う仮面をつけた。
目と顔の下半分だけが見える百合に、囁かれる。
「この教室にも監視カメラがあるけど、利用者は金のない学生か低ランクの社会人とかで監視もテキトーらしいの! さっきも言ったけど、ここの女子はチップが主な収入だし……。私は君の提示した金額に納得できず、イチャイチャせずに帰るという体にするから! 君は別の女子が入ってくる前に、がっかりした雰囲気で廊下に出て? それなら、不自然に思われない」
上のランクが遊ぶフロアーへの行き方を教えてもらい、それを考えている間に百合が離れた。
片手を振りながら、申し訳ぐらいに仕切られた空間から立ち去っていく。
(面倒を避けるため、あの生徒会長はまっすぐ帰るか……)
百合がいると分かれば、上客に指名される恐れがあるようだ。
(どっちみち、今から大騒動だ! 帰るように言う手間が省けた……)
俺も靴を履いて、通路になっているスペースから出る。
入口に立っている黒服は、チラッと見ただけ。
気の毒そうに、すぐ視線を外す。
薄暗い廊下に出た俺は、男向けのレストルームを探した。
いったん、そこに入る。
通常の明かりで、共同のゲストハウスのように色々な設備があった。
(誰もいないな? 高い金を払って、こんな場所にいたがる男もいないか)
改めて廊下に出たら、上のフロアーに通じるエレベーターホールへ。
制服を着た仮面女子高生が、その手前の暗がりに立っている。
「サイ?」
水鏡アレーテだ。
近づけば、こっそりと耳打ち。
「こちらの身元はバレているようで、禁書による輪姦をされかかっての虐殺……。残りは、ここの支配人の金庫にあるとか」
「生徒会長に会って、とりあえず帰した。……お前が暴れたのがバレるまでの勝負か! ここの幹部がいるフロアーまで行かないと」
言いながら、ルーン文字が描かれた紙片を取り出す。
「そのフロアーまで行ったら?」
「強行だ! どっちみち、バレる」
ニヤッとしたアレーテは、俺の横で腕を組んだ。
一緒に歩いていけば、エレベーターの前に立っていた黒服の1人が近づく。
「お客様? ここからは特別な会員だけの……失礼しました」
俺が紙片を出したら、それをジッと見ていた黒服はあっさりと退く。
怪訝な顔になった、もう1人の黒服。
けれど、俺が支配人に用があると告げたら、その勢いに呑まれてエレベーターを呼ぶ。
停止したエレベーターの扉が左右に引っ込んだら――
「先客がいたようですわね?」
先にエレベーターホールに降りたアレーテは、緊張した声。
俺もエレベーターから降りて、そこに倒れている黒服を探る。
ズボンの前に突っ込んだホルスターから、グリップが見えた。
ロック解除のボタンを押しつつ、拳銃を引き抜く。
セミオートマチックで、思っていたより状態がいい。
上のスライドを後退させた後に、グリップのボタンで底からマガジンを落とす。
小さな穴から見える弾丸で、残弾をチェック。
「15発……。初弾も撃っていない?」
跪いている俺に対して、立ったままで警戒しているアレーテが言う。
「抜く暇もないほど、あっという間に殺されたんですね? もう1人も……」
「ああ……。たぶん、素手で首の骨を折られて、残りも同じように」
予備のマガジンも拝借して、両手で拳銃を握ったまま、立ち上がる。
その時に、バタンッ タッタッタッと走り去る音。
すぐに銃口を向けたが、こちらに近づく気配はなく、やがて別のドアの音へ。
銃口を前へ向けたままの俺は、臨戦態勢のアレーテに告げる。
「行くぞ! たぶん、このフロアーの奴らはもう殺された」
案内図で突き止めた一番広い部屋へ、走り出す。
――幹部の部屋
俺がドアノブに手をかければ、あっさりと開く。
全開にすると、アレーテが飛び込んだ。
「……もう殺されてますわ」
それを聞いた俺も滑り込み、後ろ手に閉める。
重役がいる執務室といった、豪勢な家具と広さ。
窓際にある役員机は血に染まっており、倒れている男が1人。
近づいて足でひっくり返せば、グチャグチャになった正面とご対面。
銃口を外した俺は、役員机の上に置いた。
予備のマガジンも放り出す。
「さっき逃げた奴か……。ショットガンだな、こりゃ?」
しげしげと眺めていたアレーテが、こちらを向いた。
「スラムファイアーの男ですわ!」
「……こいつが撃った形跡もあるし、そうだろうな?」
至近距離でショットガンを撃たれれば、ひとたまりもない。
金庫は……壁に埋め込まれている。
「この部屋の時間を経過させて、もろともに処分する!」
「久々ですわね?」
2人で部屋を出た後に、魔術で数えきれないほどの時間を経過させた。
再び入れば、内壁すら消えた空間で、魔術書が数冊。
魔術の炎で燃やし尽くし、なくなっていた窓から飛び降りる。
重力を感じさせずに着地しつつ、幹部がいた執務室を見上げた。
「アレーテ、公衆電話で通報しろ」
「……私物を回収してから、やっておきますわ」
命令してから、今のご時世に公衆電話はあったかな? と思う。
過去作は、こちらです!
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