壊れたものは、壊れたまま扱おう!
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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時間は戻り、本川高校で平穏に過ごせる最後の日。
朝に登校した水鏡アレーテは、1年2組のクラスメイトと談笑しつつ、1日を過ごした。
放課後に仲良くなった女子の誘いを断りつつ、1年4組の綾ノ瀬奈々美が自宅へ戻って、迎えの車で観察特区へ護送されていく様子を眺める。
ブルルル
ビルの屋上のさらに高所で立っているアレーテは、スマホを見た。
“荷物は受け取った。あとは、好きにしてくれ”
連絡用のアカウントから、メッセージ。
奈々美の回収を依頼した、彼女の兄である綾ノ瀬一京から。
女子高生らしい返信をした後で、アイコン画面に戻した。
スマホを仕舞う。
「人が扱うべきではない技術は、あるべきところに……。才? いずれ、あなたにも問わなければいけません! ですが、今は――」
夜空に立ったままで体操のように跳ねたアレーテが、雑居ビルの間に落ちていく。
――1時間後
水鏡アレーテは、連続失踪の黒幕の1人であろう教師の浅岡あいかへメッセージを送った。
“疼いて仕方ないから、相談に乗って欲しい”
公園のトイレでギャルに淫紋を刻まれたと知っているからか、すぐに車で迎えに行くという返信があった。
自宅で着替えて待つと、路肩に停車する車。
後部座席の窓が開き、生徒会長の古波津百合の顔。
「こんばんは! 乗って、乗って!」
ドアを開きつつ、自身はアレーテのために横へ移動した。
自分で後部座席に乗り込みつつ、バンッと閉める。
ウィンカーを鳴らしつつ、ゆっくり車道へ戻る車。
運転席にいる『あいか』がハンドルを握りつつ、後部座席が見えるバックミラーへ視線を送る。
「今から、ちょうど生徒会の仕事で行くところなの……。あなたの悩みも、そこで解決できるわ! フフフ」
すると、百合が勢いよく話す。
「私も、ようやく慣れてきたの! 水鏡さんは初めてだから、無理しないでね?」
「……何をするんですの?」
アレーテの質問に、百合は運転席のほうを見た。
「行けば、分かるわ……」
あいかは、それっきり黙る。
やがて、どこかの地下駐車場へ入っていく。
車の中にいても圧迫感を抱く、コンクリートに囲まれた場所だ。
全員で降りて、エレベーターに乗り、階段を歩く。
(明らかに、従業員や点検用のスペースですわね?)
先導している『あいか』は、慣れている様子。
やがて、無機質ながら雰囲気の変化。
スーツを着ているゴツい男は、IDカードらしきものを出さないアレーテを見たまま。
「新入りよ! 詳しい事情は、これから」
あいかの説明に、男は頷く。
「承知しました……。どうぞ」
壁にある端末をいじれば、出入口らしきドアが開く。
「閉まらないうちに入って!」
あいかに続けば、控え室と備品置き場を兼ねたような部屋だ。
化粧台やトイレ、休憩用のベンチや自販機が並ぶ。
「今のうちに、済ませておきなさい」
それぞれでトイレへ行き、鏡を見る。
身繕いを済ませれば、あいかと百合はコインロッカーのような空間に私物を突っ込んだ。
ここのIDが必要なようで、アレーテは百合と同じボックスに入れる。
2人に続き、何かが入っている籠に手を突っ込む。
それを確認すれば――
目の周りだけ隠す、仮面だ。
仮面舞踏会でレディがつけるものと同じで、鼻の上まで隠す。
既につけている百合は、説明する。
「水鏡さんも、早くつけて? ここからはカタカナの名前で呼ぶから……。間違っても、名字や漢字では言わないようにね?」
アレーテがつけるや否や、あいかが奥へ続くドアを開けた。
薄暗い廊下を抜けた先は、ホテルのラウンジか、お酒を出す高級クラブのようだ。
少し明るくなったが、男女を問わずに仮面をつけている。
(コスプレとは思えないですわ……。そして、中高生……)
制服を着た女子は最低限だけの仮面をつけ、男の相手をする。
けれど、あいかはラウンジを抜けて、内廊下へ。
要所に立っている黒服の間を抜けつつ、とある部屋に。
「アレーテさんは、ここで待ちなさい! ユリさんは、私と一緒に」
「ハーイ! またね?」
陽気な返事をした百合に、アレーテは問いかける。
「ユリさんは……疑問を持たないのですね?」
「うん! 生徒会長として、当然だし!」
間髪入れずに答えた百合に、アレーテは微笑むだけ。
2人は出て行き、ドアが閉められた。
息を吐いたアレーテは、天井を見る。
(やはり、手遅れ……。今となっては、夢を見たままか、気づく前に死んだほうが幸せでしょう)
アレーテは、百合が乱交をしていることを察した。
けれど、何も言わない。
救わない。
介錯をしてやる気もない。
なぜなら、他人だから……。
理屈はともかく、今の百合は秘密クラブで腰を振ることを生徒会の仕事と認識している。
(好きでやっている可能性もありますし……)
ほぼゼロだが。
中にあったソファで座ったまま、待機する。
――10分後
焦れたアレーテは、ドアノブに手をかけた。
ガチャッと、開く。
薄暗い内廊下を覗けば、見張りはいない。
(今なら、探索しても言い訳できますわね?)
廊下に出て、後ろ手にドアを閉めた。
左右を見るも、ラウンジのほうから淫語まじりの会話とBGMが聞こえてくるだけ。
わざとらしく開いているドアが、近くにあった。
(罠……ですか)
しかし、アレーテは誘われるように中を覗き込み、灯りがついたままの室内へ。
事務作業をできるだけのデスクに、分厚い辞書のような本が一冊。
歩み寄ったアレーテは、それを開く。
過去作は、こちらです!
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