明日の昼すぎまでは平和
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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綾ノ瀬奈々美の自宅は、高級マンションだった。
俺の魔術によるゲートで移動して、水鏡アレーテを含めた3人での話し合い。
ポカンと口を開けている奈々美が、俺を見ての一言。
「本当に……魔術師なんですね?」
「特区に住んでいるのは、伊達じゃない! 言うほど便利じゃないぞ? 代償も大きい。……悪いが、すぐに本川高校の連続失踪を振り返る! 今後の対応もな?」
「はい! お弁当を買ってきたので、良かったらどうぞ」
女子らしいパステルカラーの家具を見つつ、示されたラグに座る。
リラックス用らしく、背の低いテーブルやクッションがあった。
テーブルの上には、名店の持ち帰り弁当が積まれている。
(さすが、金持ち! 金銭感覚が違うな……)
そう思っていたら、台所へ行った奈々美が慌ててドリンクの準備。
彼女の姿を確認してから、語る。
「おそらく、禁書がある! 禁書は、いわゆる魔術書で――」
魔術の方法や、様々なモンスターの召喚や使役といった説明がある。
ただし、禁書を読むことで正気がなくなり、読んだだけでアウトの場合も。
禁書そのものが自我を持っていることも、珍しくない。
「具体的に、とは言うなよ? 今の説明も、あくまで簡易的だ! とにかく、本川高校にいる誰かが禁書を手に入れたか操られて、連続失踪につながったと……。別の高校にも、被害者がいるよな?」
奈々美は、頷いた。
「はい! 2つか、3つほど……。でも、うちと比べれば、比率が少ないです」
「な? それこそ、本川が震源地だって証拠だ! 怪しい人物は、この連続失踪に首を突っ込んでいる奴ら」
アレーテから話を聞いた俺は、結論を言う。
「さっきのファーストフード店で、俺は3年の炭八馬佳守からこう言われた! 『生徒会長と一緒に連続失踪を解決してくれたら、綾ノ瀬を君の彼女にしよう』とね?」
場の雰囲気が変わった。
アレーテは、ピリピリした口調。
「どういう風に?」
「自信たっぷりに! その前には、『僕は生徒会長と釣り合わないだろう?』ともあった」
弁当を食べているアレーテは、断言する。
「決まりですわね? その炭八馬が禁書を持っているか、または、使いました!」
「だろうな……」
しみじみしている俺たちに、奈々美が騒ぎ出す。
「なっ!? でしたら、すぐ生徒会長に――」
「お前、今の気持ちは偽物ですと言われて、納得する?」
スマホを手にした奈々美は、固まる。
「そ、それは……。だけど、放っておくわけには!」
「俺たちが受けた依頼は、『綾ノ瀬奈々美の回収』だ! ついでに、本川高校の犠牲はどうでもいいと言質をもらっている。……禁書については持っているやつを倒し、無効化する予定だ!」
シュンとした奈々美は、スマホを置いた。
「あなたに従うと決めました……。生徒会長は?」
「んー? たぶん、なあ……。炭八馬はもう生徒会長を抱いたというか、抱いてもらっただろうし」
「手を出さない理由もないですからね? 綾ノ瀬さん! あなたは、知らないほうがいいですわ! おそらく、いい気分になりません」
アレーテの警告に、俺のほうを見た奈々美は息を吐いた。
「分かりました……。水鏡くん? 私は、どうしましょう?」
「俺とアレーテで、明日の夜から売春の線で追ってみる! 仕切っているヤーさんと、それを取り締まっている警察、一枚かんでいる政治家の先生が一気に怒りだす……。明日に登校したら、心の中で別れを告げておけ! 忘れ物もしないように! お前の事情は話すなよ? 放課後に直帰したら、貴重品だけで特区へ帰れ。明日の夜からは、お前の安全を保障できん」
「承知しました! 兄に相談しておきます……」
◇
同じくゲートで仮の自宅へ帰り、俺と水鏡アレーテは同時に息を吐いた。
「生徒会長と一緒にいた浅岡あいか……。魔術師は、あっちだよな?」
「憧れの生徒会長で童貞を捨てた陰キャの炭八馬佳守よりは、可能性が高そうですわね?」
それぞれに、就寝する準備を始める。
「ゆっくりできるのは、明日の昼過ぎまで! 綾ノ瀬が特区にたどり着くか、兄が派遣した護衛がエスコートするまで張り付け」
「分かっていますわ……。明日は綾ノ瀬さんを見送るのと、情報収集ですね? 浅岡先生に『淫紋のせいで疼く』と相談しても?」
少し考えたあとで、アレーテに返事をする。
「いいぞ! あいつも売春に噛んでいそうだし、探りを入れてみるのもいいだろう! 俺も、あの高校で女子を買っている男子に接触してみる」
「あら? わたくしがいるのに?」
「からかうな……。お前らでは、女を買うわけにもいかんだろ? これまでの情報を整理すれば、連続失踪と売春は明らかにつながっている」
ニヤッとしていたアレーテは、真面目になる。
「公園トイレの売春は、いかにも場末……。警察もマークしていたでしょうし――」
「この街のどこかに、もっとハイクラスの売春がある! 政治家や社長とか、金を出せて立場のある奴らだけの」
アレーテの外見なら、公園の便所ではなく、会員制クラブでHをさせるだろう。
奈々美も、ハイクラス向けだが……。
綾ノ瀬のイメージを失墜させるため、あえて公衆便女にさせるつもりだったと思われる。
浅岡あいかが主犯の1人でアレーテに食いつけば、会員制クラブに潜入して、そこの幹部から情報を得るだけ。
過去作は、こちらです!
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