奈々美の様子がちょっとおかしいんだが?
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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本川署の正面玄関から出た、水鏡アレーテ。
保護者のように付き添うのは、スーツ姿の京本香穂だ。
話しかける雰囲気の香穂に対して、アレーテは片手を向ける。
「移動しましょう……」
杖術に使いそうな長い棒を立てている警官が、立哨している。
その視線や、周りに停まっているパトカーや覆面車両にも警官が行き来しているのだ。
あまりに、目立ちすぎる。
長い黒髪をツインテールにしている、外国人っぽい美少女となれば、尚更だ。
アレーテは歩きながら、横を歩く香穂に提案する。
「わたくしは、才と合流します。用があったら、呼びますわ!」
香穂は、アレーテの前に立ちはだかる。
「ちょっ……ちょっと待ちなさい! 私、ここの刑事課長に『水鏡が問題を起こしたら責任を取ってもらう』と言われて――」
「知りませんわ! そもそも、特区警察に飛ばされた時点で、それ以上の左遷先はないですし!」
言葉に詰まった香穂。
彼女を避けて、アレーテが歩き出した。
香穂は、慌てて横に並ぶ。
「もう、11人が犠牲になっているのよ? あなたも本川高校に通っているわけで! 少しは友人の心配を――」
「先に警告しておきますわ……。これは、あなたが知るだけで気が狂う領域の話! それも、精神系のね?」
聞き入っている香穂に対して、アレーテは相手の顔を見た。
「わたくし達は、依頼を受けているだけ……。警察官ではなく、あなたの部下でも家族でもない! 1つだけ、教えてあげますわ。スラ子という二つ名は、わたくしが何でも切り裂くことでのスラッシャーから! あの特区で、わたくしを狙うやつはいない。……スマホで連絡は受けますわ。ただし、それ以上は許さない」
足が止まった香穂。
いっぽう、アレーテも立ち止まり、上半身だけ振り向いた。
「スラムファイアーの男……。やつも、わたくしの同類ですわ! 淫紋の件も、本当です。だけど、警察の報告書にのせたら、翌週に辞めるのみ! 悪いことは言いませんから、わたくしと才に任せておきなさい」
せっかくだから、ゆっくり休んで、美味しいものでも食べては?
そう言った、アレーテ。
言葉もない香穂は、その背中を見送った。
◇
俺は、本川高校の1年4組にいた。
(アレーテは、拘置所にいるんだろうな……)
わりと酷い感想だが、あいつは前日の夜に公園トイレへ行ったきり。
早朝のニュースで、銃撃事件と売春をしていた関係者が大量に捕まったとある。
(名探偵の俺にかかれば、この2つを結びつけるのは造作もない!)
俺の編入は、可もなく不可もなく、あっさりと受け入れられた。
(いわゆる、どうでもいいと……)
底辺高校らしく、授業はいい加減だ。
次のテストで赤点を心配する必要はなく、悪目立ちをしないように教科書とノートを広げて、板書きを写すのみ。
キーンコーンカーンコーン♪
前にいる教師が、全体を見た。
「じゃ、終わるぞ?」
放課後になったことで、教室は騒がしくなった。
教科書とノートを仕舞いつつ、何日かかるやら、と思っていたら――
「今、大丈夫ですか? 水鏡くん……」
落ち着いた女子の声で、そちらを見る。
綾ノ瀬奈々美だ。
「構わないけど……。どうした?」
自分のスマホをさわった奈々美は、その画面を見せた。
“あなたの妹である水鏡さんと、会いました! 不審に思われないよう、普段通りに振るまえと言われて”
「そうか……。じゃあ、先に下校して……」
要救助者を遠ざけようとしたが、下手に離して、そこを突かれたらマズい。
「綾ノ瀬? 生徒会長に呼ばれているんだ! よかったら、案内してくれ」
スマホで、“今後は、俺の指示に従うように” と見せる。
こくりと頷いた奈々美は、恥ずかしそうに頬を染めた。
「え、ええ……。いいですよ? できれば、水鏡くんの家がいいんですけど」
立ったままでモジモジした奈々美は、どこか後ろめたい感じ。
学校のカバンを持った俺は、彼女に促す。
「すぐに行こう」
「……い、今から!? いえ、大丈夫です。あっ! 自宅にご家族はいらっしゃいますか? だったら、別の場所のほうが」
話がズレているので、奈々美に訂正する。
「生徒会室だぞ? 用事が終わったら、家で打ち合わせしよう」
ハアハアと呼吸を荒げてきた奈々美は、トローンとした表情に。
「はい……。満足するまで……」
「体調が悪いのだったら、先に帰っているか? 女子の家には行けないから、俺の家の鍵を――」
「げ、元気です! ほら? こんなに動けますよ?」
その場でピョンピョンと跳ねだした、奈々美。
清楚で知的な美少女の奇行に、教室に残っていた全員が注目する。
「分かった分かった! とにかく、生徒会室へ行こう」
「はい」
返事をした奈々美に先導されて、上のフロアーにある生徒会室へ。
ノックをすると、ガララと引き戸が横へ動いた。
長い黒髪と赤目をした女子の姿。
奈々美は、すぐにお辞儀。
「こんにちは、生徒会長」
「綾ノ瀬さん! 君は……編入生の兄のほうね? 水鏡さんとは、もう会ったわ!」
入って入って、と言われて、俺たちは生徒会室の中へ。
過去作は、こちらです!
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