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二人のフィーナ  作者: ねこまんまときみどりのことり


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4/12

類似

 「私はお母様が居なくなったから探していたの。

 1日中お父様のいる邸を眺め、お父様の名前を呼んで泣いていて、ある日いなくなってしまったの。

 きっとずっと邸にいたから、お散歩に行って迷子になってしまったのよ。

 私が見つけてあげなきゃ。

 きっといつまでも、1人で泣いてるわ………」



 フィーは母親を探してさ迷っていたと言う。

 共に探していた乳母のマリアは、追いかけて来た邸の使用人の男に棒で打たれて動かなくなったそう。

 その前にマリアは、フィーに叫んだそうだ。


「フィーナ様、お逃げください。首にかけてある巾着にお金が入っています。お腹が空いたらそれで食べ物を買って…………ガツンッ「余計な手間をかけやがって! 旦那様はお怒りだ。裏切り者は生かしておかないと言って。あいつを連れていかないと、俺まで殺されるんだ。てめえ、こっちに早く来い!」逃げ、逃げて……「うるせえ、離せマリア!」


「きゃ、きゃああああああああ」



 マリアの頭部は夥しい血で染まり目は瞑られたままで、殴られた体は起き上がることも出来なそうだ。

 それでも男のズボンを離さずに、しがみついていた。


 フィーの叫び声で、人が僅かにこちらを見て近づいて来るのが分かり、男は棒を投げ捨てて逃げ出した。


「ちくしょう!」


 フィーも駆け寄ってマリアに声を駆けたいと思ったが、男が戻って来るかもしれない恐怖から動けない。

 そして脳裏にマリアの最後の声が響く。


「逃げてください、フィーナ様!」と。


 そう思った瞬間、フィーは雨の街を駆け出した。


 その後恐怖で買い物もできず、路地の隅の軒下で隠れていたと言う。

 何日も雨が続き水だけを飲んで過ごしていたが、空腹で朦朧としふらついていた時に、フィーナに見つけて貰ったと言う。




◇◇◇

 フィーナは嫌な予感がした。

 私はフィーナ・ブラルケットで、ブラルケット公爵家の第二子。


 父はティアジル・ブラルケット

 母はキンバリー・ブラルケット


 父の平民の愛人はランテ、その娘はブルガリ。

 父が愛しているのは、その愛人の母子だけ。


 お母様のキンバリーは、公爵家内では護衛騎士と姿を消したと言われているが、公には病で寝たきりだと発表されている。

 私は母の病気の療養の為に、一緒に別荘にいることになっているが、実際には山の中の家にいる。


 もうすぐ………………。

 半年後には国王の側妃となり、子を産んで死ぬ運命だ。


 フィーは、自分と似ている気がする。

 震えながら私を見るマリアも、よく見れば幼い時の私にそっくりだと呟いていた。


 私の赤い瞳とプラチナの髪は、魔力が多くなってから変化したが、幼い時は黒髪と薄紫の瞳をしていたのだ。  

 彼女はまさにその色を纏っている。


 混乱の中で状況を整理しようと考えた。




◇◇◇

「フィー。貴女の両親の名前は言える?」


 恐る恐る聞くと、フィーは元気良く答える。


「うん。お父様はティアジルで、お母様はキンバリー。 

 私の本当の名前はフィーナ・ブラルケットよ。

 ちゃんと言えて偉いでしょ? うふふっ」


 得意気に答えるフィーに、フィーナとマリアは信じられない思いで顔を見合わせた。


「フィーナ様、この子は幼い時のフィーナ様ですわ。

 どうしたことか分かりませんが、確かに」

「…………私もそう思うわ。この子が妹である可能性はないわ。だってお母様は見つからないままですもの。

 じゃあ、この子はいったいどうしてここに居るの?」


 混乱は収まらず、二人はフィーナを見た。

 もうすっかり体調は良くなり、母を探しに行くつもりのようだ。


 幸いにしてこの部屋には、フィーの着替えをさせに来た私とマリアとフィー以外にはいない。


 ニコニコと笑うフィーは、まだ残酷な運命を知らない。

 そしてそんな運命が、彼女に襲いかかることが許せない。

 こんな幼くて可愛い子なのに。



 自分なら仕方がない。

 そう思いながら生きてきた。

 けれど、ここにいるフィーは自分ではない。

 そんな残酷な運命をこの子に辿らせたくない。


 話を聞けばマリアと邸を出て、マリアはたぶん殺されたと言うし頼れる人もいないようだ。

 彼女が元の邸に帰ったら、逃げないように監禁や虐待も受けるかもしれない。

 国王に側妃として嫁ぐまで………………。


「彼女を元の場所には戻せない。私が守ってあげたい」

 決意してマリアの方を見ると、頷く彼女。


「ここにいるフィーは、フィーナ様と縁のある者のように思えます。

 詳しい出自は分かりせんが、もしかしたら旦那様の庶子という可能性もございます。

 私の命はフィーナ様のものです。

 フィーナ様の思うことに私は従いますわ」


 涙ぐんでフィーナを抱きしめるマリアは、母親のように温かかった。


 フィーは不思議そうに、首を傾げてこちらを見ていた。


 フィーの持つお金の入っている巾着には、ブラルケット家の家紋が刺繍されていた。



◇◇◇

 (フィーナ)のまわりには護衛ダドリーと侍女マリア、馭者ロンダ、他に父が私に付けた執事と言う名の監視者ケアンフトがいる。


 ケアンフト以外は私に同情的なので、もしかしたら協力してくれるかもしれない。

 どちらにしても、半年後の婚姻までは監視は外れないだろうが、干渉もして来ないようだ。


 フィーの思う通り、翌日からお母様の調査をして行こう。

 昔の私なら動けなかったが、今なら自由に動けるし探偵ギルドにも頼むことができる。

 母の嫁ぐ前の足跡を辿ることも。


 取りあえずフィーには、両親の名前は他の人に言わないように口止めした。

 幼い彼女も、醜聞として広がるには不味いと思ったのだろう。


「よろしくお願いします。お姉ちゃん、マリアさん」

 私とマリアは目を細め、勿論よと微笑んだ。





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