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リュカとの夕食が始まった。
いつもより豪華な夕食だった。
ここに到着した当日はマナーがわからず食べることができなかったが、今は自信をもって食べることができる。とてもおいしい。
リュカの方をちらっと見る。
日焼けの薬が効いたのか、リュカの耳は普通の色に戻っていた。
良かった。日焼けすると赤くなるタイプなのだろう。
自分も同じタイプだからわかる。赤くなるタイプは肌がとても痛むのだ。
そんなことを考えていたら、リュカから話かけられた。
「この家で不便はないか?」
「特にないどころか、とてもよくしていただいて……感謝してもしきれません」
「それならよかった」
「リュカ様は遠征に行かれていたと伺ったのですが、どちらに行ってらっしゃったのですか?」
「今回はマーシア王国だ」
「マーシア王国!?海のある友好国ですよね?お魚が美味しくて、美しい海岸が有名と聞きました。先日大雨による災害があったと聞いたのですが、その影響で遠征に行かれたのですか?」
リュカがぽかんとこちらを見ている。
何か変なことでも言ったのだろうか?と不安になる。
仕事に首を突っ込んだのがいけなかったのだろうか……。
「あの出すぎたことを申し訳ござい……」
そう言おうとした時、リュカがその言葉を遮った。
「すごいな。もうそんなことまで学んだのか。まだ1か月だぞ」
良かった。怒っていたわけではないのね。
安心して、また話始める。
「はい。地理や歴史は特に興味深くて……国によって文化や風習が違うのも、文字や言語が違うのもとても面白いです。先生にお願いして、言語の授業も増やしてもらったんです。リュカ様はマーシア王国以外にどんな国に行ったことがありますの?」
リュカは少し笑って色々な国の話をしてくれた。
でも私はその話をあまり聞けなかった。
なぜなら彼のその笑顔があまりに優しくて……真っ赤になってしまった顔を隠すのに必死だったから。
「……聞いてるか?」
聞いていないことがばれた!とりつくろわないと……そう思っているのに、口からは正直な言葉が紡がれる。
「申し訳ございません。あまりにリュカ様の笑顔が素敵で……恥ずかしくて……聞けませんでした。せっかく話してくださったのに申し訳ございません。もう一度お聞かせくださいますか」
「……っ!……そ……そうか……!」
リュカが口を腕で押さえて顔を隠した。
怒っているのだろう。
「……本当に申し訳ございません」
しばらくしてリュカが腕をおろし、こちらを向き、一つ咳払いをしてこう答えた。
「問題ない。行った事のある国だが……」
もう一度話てくれるようだ。ほっと胸をなでおろし、つぎこそ一言一句聞き漏らさないようにうんうん話を聞く。
時々気になったことを質問すると、嬉しそうに答えてくれる。
楽しい。こんなに楽しい夕食は生まれてから初めてだ。
笑いながら思わず涙がこぼれた。
リュカが驚く。
「どうした!何か失礼なことでも言ったか?」
「いいえ、いいえ」
「どうした?何か嫌なことがあるなら何でも言え」
「いいえ、いいえ」
初めて感じる胸の暖かさにいいえしか答えられない。涙がとめどなくあふれてくる。
リュカは少しおろおろしたのちに、私の方に近寄り、そっと手を掴んでくれた。
「何かあったら、なんでも言え。俺にできることであれば力になるから」
「……はい、ありがとうございます」
目の前のこの優しく美しい人は私が暗殺しなければならない人。
女に冷酷でケスチェ家を没落させようとしている悪い人。
この人を油断させて殺すんだ。私がケスチェ家に負った罪を償うためにも。
そして食事が終わり部屋に戻る。
少し冷静になると、とても恥ずかしくなってきた。
泣いてしまった。
もう涙など出ることはないと思っていたのに。
胸の中で凍っていた氷が解けるかのように、暖かさが広がって涙がでた。
冷酷だと噂されていたけれど、きっと優しい人なんだ。
食事が終わって別れる瞬間までずっと私のことを心配してくれていた。
深く美しい青の目が私を心配そうにじっと見つめていて……。
ドキン。
胸が不思議な音を立てた。
なんの音だろう。
でもこの音の正体はなんとなく知らない方が良い気がした。