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「公爵様、どうしてここに……!?」
ダンスのレッスン中に突然現れたリュカに私は尋ねる。
しかしリュカは目を丸くして私の方を見たまま止まっていて、何も答えない。
何か変な恰好でもしてしまっているのだろうか?
自分の姿を見直すが、変なところは見当たらない。
マリーの方を見ると、リュカを見てニヤニヤと笑っていた。
どうしたんだろう?やっぱり何か変なところでもあるのだろうか?
「公爵様、何か私に変なところでもありますか……?」
戸惑って再度質問するとリュカが慌てて答えた。
「いや、1か月ぶりだなと思って……」
1か月も会っていなかったのか……!
1か月も会っていなかったのに、特に何もリュカに対し反応しなかったから、リュカは戸惑っていたのか。
普通であれば、寂しかったや会いたかったなどというのだろう。
しかし私は初めての教育の機会にどっぷりはまってしまい、本来の役割ーーリュカ・ムーンの婚約者、そして髪が作った最高傑作であるこの美しい男を暗殺すること――をすっかり忘れていた。
あまりに毎日が楽しすぎて、すっかりあなたのことを忘れていた……とは絶対に言わない方がよいだろう。
まずは教育の機会をくださったお礼をしよう。そして思っていないけれど、寂しかったと言った方が良いのかもしれない。
そして暗殺するには油断させなければならない。
油断させるにはどうすればよいか……。
マナーの講師には食事マナーは完璧だと言われた。
一緒に食事をするのはどうだろう?女から誘うのはマナーの観点からも問題ないはず。ダメもとで誘ってみよう。
「……公爵様。お帰りなさいませ。勉強の機会をいただけたこと、感謝しております」
「……セバスからかなり優秀だと聞いている。好きなだけ学ぶと良い」
「公爵様に1か月会えなくて、寂しく思っておりました。もしよろしければ、本日ご一緒に夕食を食べる機会をいただけないでしょうか?」
「……しょうがない。今日はお前と一緒に食べよう」
「ありがとうございます!公爵様!」
にっこりとリュカに笑いかけると、顔をふいと背けられた。
そして……
「公爵様はやめろ。婚約者なのだからリュカでいい」
「わかりましたわ。リュカ様。それでは私のこともリリーとおよびください」
「……わかった」
そう言って、リュカは部屋を出て行った。
リュカの耳が赤くなっていたが、日焼けでもしたのだろうか?
あとでマリーに日焼けの薬を持っていくように伝えよう。
ーーー
女というものは恐ろしい。
あの女ーーリリーは見違えるほど美しくなっていた。
背筋がピンと伸び、肌も髪もピカピカに光って、燃えるような赤い瞳がキラキラと輝いていた。
たった1か月。たった1か月でこんなにも美しくなるのか。
この1か月の変化を見逃したのがもったいなく感じる。
俺が彼女の一番そばで、彼女が花開いていく様子を見ていたかった。
ちっぽけなプライドのせいでその様子を見逃したのが、口惜しいと感じる。
彼女と話をしてみたい。
まっさらな彼女がこの家にきてどのようなことを感じたのか聞いてみたい。
燃えるようなあの赤い瞳に自分を映してほしい。
女に対してこんなことを思う日が来るとは思わなかった。
何故彼女にだけこんなにも惹かれるのか。その理由を知りたい。
そうして彼女との夕食の時間になった。