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勢いよく部屋にやってきたマリーは、明日リュカが公爵家に帰ってくると教えてくれた。


リュカが帰ってくる。

私は覚悟しなければならない。

手に持っていた毒をぎゅっと握りしめる。


マリーは、3週間もほったらかしにしたリュカを後悔させるため、いつも以上に私をピッカピカに磨いてみせると鼻息荒く出て行った。

私は苦笑しながら、最後になるならピカピカに磨いてもらいたいなと、その身をマリーたちにまかせることにしたのだ。


そして、私はマリーたちに隅から隅まで磨かれた。

ケスチェ家にいた頃の私ーー肌はカサカサ、ボロボロ、髪は絡まってぼさぼさ、青白く不気味なリリーは今ここにはいない。

肌は真珠のようにツルツルで白く美しく発光しており、髪は艶やかにきらめいて良いにおい、美しい貴婦人にしか見えない。

でもこれは、本当の私ではない。

本当の私は罪人だから。本当はここにいてはいけないの。


ムーン公爵家での日々は本当に夢のようだった。

優しい使用人たち、楽しい食卓、初めての教育の機会、美しいドレスにジュエリー、そして童話から出てきたような心優しく美しい王子様。

あ、王子様ではなく、公爵様ね。

彼の温かい優しさによって、私の固く閉ざされた世界が開かれていった。

そして彼にエスコートされて行った夜会は完璧だった。

彼とのダンスは本当に楽しくて、幸せで、この瞬間が一生続けばいいと思うほどだった。

あの思い出だけで、私はもう十分だ。


握っていた小瓶を見つめる。

毒が手に入ったのはラッキーだった。

私の手元には、ペーパーナイフか紐くらいしかなかったので、殺傷能力にかなり不安があったのだ。


リュカが帰ってくるのは、夕方だということで、今日は夕食を一緒に取れる言うことだった。

今日は赤く美しいエンパイアドレスを選んだ。


彼が帰ってくるまであと少し。

窓の外を見つめると、リュカが乗っているであろうムーン公爵家の紋章が描かれている馬車が走っているのが見えた。

私は大きく息を吸い込み、手の中の小瓶をぎゅっと握りしめる。


さあ、さよならを始めましょう。

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