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シェリルがリリーとリュカに話しかけようと近づいて行った時。

王太子殿下がリリーとリュカのもとに現れた。


え?王太子殿下が何故?

何やら親しそうに話している。

そう思っていたら、なんとリリーが王太子殿下に手を引かれダンスフロアに向かっていくではないか。


ギリッ……。

歯を噛みしめる。


王太子殿下もムーン公爵も年頃の令嬢の憧れの人だ。

ムーン公爵は女性に冷たく、そしてどの婚約者とも長続きしないという噂で、その美しさや有能さに憧れている女性は多いけれど、誰も近寄れないでいた。

いや、近寄って行った強者もいたけれど、無視されて終わりだったという。


王太子殿下はムーン公爵ととても仲が良いが、ムーン公爵と違い、誰にでも愛想がよく、誰に対しても優しい。

またムーン公爵とは違った雰囲気で美しく有能な男だった。

そのため彼は公務や留学でとても忙しく、なかなか社交界に現れることはなかった。

そのため夜会やパーティーに参加するという噂が流れれば、その夜会やパーティーで王太子殿下に見初めてもらおうと多くの令嬢がとびきりに着飾って参加する。

もちろん私もそのつもりでここにやってきた。


だがしかし、今日の夜会を見てみるとどうだろう。

たくさんの令嬢が誰よりも美しくあろうと着飾っているのに、噂になっているのはリリーひとり。


そして王太子殿下が誰を一番最初にダンスに誘うのか……多くの令嬢が王太子殿下に挨拶に行くもダンスに誘われる令嬢は誰もいなかった。

だから彼の動向を多くの女性がうかがっていたのだ。


そして、王太子殿下がついに令嬢をダンスフロアに連れだしたのだ。

そうリリーを。

そうして、また周りが噂を始める。


「まあ、王太子殿下とケスチェ公爵令嬢のダンスを見て。とても美しく踊られるのね。眼福だわ」

「王太子殿下のあのお顔。珍しく少年のように楽しそうなお顔をされていますわ」

「ムーン公爵様の婚約者ですから、間違いは起きないと思いますけれど……嫉妬してしまうわね」

「ええ本当に。ケスチェ公爵令嬢は本当に意味で今日の主役になってしまいましたわね」


悔しい。


なんで王太子殿下はあの罪人とあんなに楽しそうに躍っているのだろう。

みすぼらしくて不気味で汚らしいお義姉さまがなんでみんなの注目を浴びているのだろう。

あの罪人がムーン公爵家の婚約者になった時から我が家の歯車は狂いはじめた。

そして私は今壁際で一人佇んでいる。


全てリリーのせいだ。

リリーがムーン公爵家の婚約者になったから、全てがおかしくなったのだ。

リリーが許せない。

リリーではなく、私がムーン公爵家の婚約者になれば、すべてが上手くいくはずだ。


「全部正しいところに戻してみせるわ」


シェリルは壁際でリリーを見つめるリュカの方に向かって、歩き出した。

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