序
新連載です!完結まで毎日投稿します!
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私はリュカ・ムーン公爵を暗殺するために、彼のもとに嫁ぐ。
彼はこの国--アルブレア王国一番の資産家で、王に次ぐ権力を持っている。
もともとムーン公爵家はアルブレア王国の有力貴族の1つではあったが、リュカが16歳という若さでムーン公爵家を継いで、6年……22歳で現在の地位を築きあげた。
そしてリュカはとても美しい男だった。
この国では珍しい漆黒の髪に深い青の目、平均よりも高い身長に筋肉がバランスよくついている。
彼を一目見た人間は、彼のことを神が作った最高傑作だと言う。
そのため多くの女性が彼に一目ぼれをするのだった。
しかし彼は仕事の鬼で、恋愛には全く興味がなく、女性に対してかなり冷徹であるようだ。
というのも……リュカの財産と権力目当てに何度も彼に婚約者があてがわれているのだが、もって1週間。短くて1晩で婚約が解消されてしまうのだ。
しかも婚約解消は女性から。
財産と権力があると言っても、あまりの冷酷さに女性が耐えられないようだ。
そんな彼のもとに私は嫁ぐ。
ーーー
私はムーン公爵家と同じく有力貴族として並べられるケスチェ公爵家の長女リリーだ。
もともとはアルブレラ王国の財務を担当していたケスチェ公爵家だったが、リュカが公爵家を継いでから彼は一番に王国の財務面にかなりのテコ入れをし、王はリュカを寵臣とするようになった。
それ以来、ケスチェ公爵家は没落の一途をたどっている。
「リリー、お前にしかできないことをやってもらいたい。ムーン公爵家へ嫁ぎ彼を油断させ暗殺するんだ」
久しぶりに家族が囲む食卓に呼ばれたと思ったら、父親のグリスからそう言われたのだ。
ーー
私はこの家の厄介者だ。
私の母は政略結婚で父親のグリスと結婚させられた。
私の母の実家は貧乏な没落貴族だったのだが、母は優秀で美しかった。
それに目を付けた先代のケスチェ公爵は母の実家を救うことを条件に、グリスと政略結婚させたのだ。
グリスは優秀で生意気な母を嫌った。
そして生まれてきた私は母にもグリスにも似ず、青白い肌に薄気味の悪い薄い水色の髪をもち、不気味な赤い目をしていた。
グリスは母が不貞をはたらいたのではと疑った。
しばらくし、先代のケスチェ公爵がなくなり、後ろ盾がなくなった母は逃げるように家を出たらしい。そして、その後すぐに亡くなったそうだ。
母の実家もその後社交界から消えたらしい。
グリスは母は不貞をはたらいたが、私に罪はないといい、ケスチェ家においてくれた。
しかし私に罪はないが、母の償いは私がしなければならないといった。
私が5歳になると使用人の部屋で使用人と同じ仕事を一緒にするように命じられた。
その頃グリスは再婚をし、美しい義妹と優秀な義弟が生まれた。
グリスは再婚相手と義妹・義弟をとても可愛がった。
私は母の罪を償わなければならない。
たとえ食事は使用人の残飯で、侍女や使用人たちにいくら虐げられようが、私はこのケスチェ家で罪を償い続けるのだ。
ーーー
可愛らしい笑い声が食卓に響いた。
義妹のシェリルだ。
「クスクスクス、お義姉さま、あのムーン公爵さまに……リュカ様に嫁ぐなんて幸せですわね。お父様どのようにして、このお義姉さまに縁談を結んできましたの?お義姉さまがこのような……クスクス……お姿だと知っておられるのかしら?」
「実は王がムーン公爵にそろそろ実を固めるように命じてな……しかし他の有力な貴族は娘が不幸になるとわかって公爵家に嫁がせようとしなくてな、容姿などはこだわらないというから私が声をあげたのだよ」
得意そうに父グリスが答えた。
すると義弟のアレクが感動したように話し出す。
「なるほど!流石父上!それで義姉上をあいつに嫁がせ、義姉上があいつを殺してくれれば、あいつのせいで苦境に立たされている我が家も救われるし、姉上も我が家の役に立つことで罪が償われるということですね!義姉上、良かったですね」
「そうよ。暗殺……リリーがリュカを殺したと気づかれなければ、ムーン公爵家も手に入るわね。リリー、やってくれるわよね」
グリスの再婚相手が美しい顔に美しい笑みを浮かべ、そう言った。
私に選択権はない。
「……はい、ケスチェ家のためにこの身を捧げます」
でも今ここまで生かしてくれたケスチェ家に感謝をもって、必ずリュカを暗殺してみせる。
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