エピソード1
「リゲル、大好きだ」
耳にタコとイカができるくらい聞いたセリフだ。
幼なじみのルーナが真顔で僕を見つめている。肩には丸々と太った巨大なイノシシをマフラーのように巻いていた。顔面に赤い斑点がついていて、おそらく狩りの時に返り血を浴びたのだろう。
「この状況でときめく男がどこにいるんだよ」
僕はため息をついて、斧を高く上げて薪割りを続けた。
「私はお前に猪突猛進なのだぞ」
「イノシシはそのセリフの布石だと!?」
思わずツッコミを入れてしまった。危うく斧を足の上に落とすところだった。
ルーナは真顔のままだ。というか、物心ついた時からコイツのことを見てきたが、真顔以外の表情を見たことがない。
「結婚式の友人あいさつはナターシャに頼もうと思うが、いいだろ?」
「お前にプロポーズした記憶はない!」
「安心してくれ。プロポーズは結婚式の後でも構わないぞ」
「式の途中もドキドキが止まらねえなぁ!!」
コイツと話すと本当に疲れる。
ルーナはいつからか、僕への求婚が日課のようになっている。いちいち反応してあげる心が広い僕は、ルーナの遊び道具にされている、そんな感じだった。
人口500人くらいの村で、娯楽がないのは分かるが、ルーナは何が楽しくて続けてるのか、全く理解できなかった。




