第6話:対ゴブリン②
そこからは、彼の独壇場だった。亮太は、不意打ちで攻撃をしてきたオークの腕を掴み、自分の方へ引き寄せて顎に肘をぶち込んだ。
「……スゲェ、思った通りに身体が動く!?」
亮太は、近くにいたゴブリンの頭を片手で掴み、飛び膝蹴りを食らわせた。
亮太は、既にすっかりハイになっていた。自制が効かないほどに。
ゴブリン達は、怒りどころか恐怖すら感じていた。武器が意味をなさないと悟り、逃げ出す者もいた。
だが、亮太はそれを逃がすことなく、肋に放った三日月蹴りがクリーンヒットし、怯んだ所を下段回し蹴りで地面に叩き付けた。
2匹の勇気あるゴブリンは、叫びながら大きな木槌を振りかぶる。亮太はそれをダッキングで躱し、アッパーをお見舞した。
もう1匹を、亮太は片手で顔を掴み、思い切り壁に叩き付けた。
そして、右足を背中に着く位後ろに反らし、渾身の膝蹴りをお見舞した。その蹴りは、ゴブリンの内臓を潰し、口から出た血が亮太の手のひらに吹きかかった。
「害獣の分際で、汚ったねぇなァおい」
それから、亮太は耳障りな笑い声を上げながらゴブリン達を殲滅していく。レベルが上がっていることも気にならない程、夢中になって。
そして、とうとう残り3匹となった。亮太は、決死の覚悟で同時に襲いかかってきた2匹の頭に手を置き、逆立ちの体制に入った。
ゴブリン達は、何が起きているか判断する前に、着地の動作の途中で繰り出される両膝蹴りが無惨にも振り下ろされ、顔面に的中しててしまった。
最後の1匹は、死を悟ったような表情で、されども亮太に襲いかかる。亮太は地面に片手を着き、左足でゴブリンの横っ面を蹴り飛ばす。
壁に叩きつけられたゴブリンは、スルスルと力なく地面に倒れ込んだ。
そこに亮太は、子供がプールに飛び込むかの如く、腹部を両足で踏み付けた。
ゴブリンは、血の涙を流しながら、最後の力で亮太の両足を掴んだ。
亮太は、両手でゴブリンの首を掴み、顔面に頭突きを食らわせた。
20匹ほど居たゴブリンを一掃すると、ふと我に返った。
亮太は、恐る恐る更に奥へと進むと、行き止まりかと思いきや、横を見ると小さな部屋が存在した。
亮太はそこを覗くと、1匹のゴブリンが、1匹の赤ちゃんゴブリンを泣きながら抱きしめていた。
「……アイツらは、ただ、守りたかっただけなんだな」
亮太は、2匹のゴブリンには手をつけず、血みどろの地面を踏みしめ、来た道を引き返した。
引き返す途中、亮太はステータスウィンドウを開いた。
「うわ凄い。知らない間にレベルが上がってるし、スキルが3つも増えてる……」
亮太は、1つずつ獲得スキルを確認することにした。
「まずは、《火焰耐性》か。これは分かりやすい」
「……えっと確か、レベルアップ時に、新たなスキルを獲得する場合以外に、既存スキルがグレードアップする場合もあるんだっけ。これがグレードアップしたら、火焔無効とかになるのかな」
亮太は、洞窟まで向かう途中、暇つぶしにガイドを読んで、既に新しい知識を身につけていた。
「次は……《暗視》か。確かにさっきよりも見やすくなった気がする」
「最後に、1番よく分からないやつだ。《髪変化》。何なんだこれは」
説明文には、『好きな髪色、髪型にいつでも変更出来る』と書かれていた。
「ここには鏡も無いし、後で試してみよ」
そうこうしてるうちに、外に出ることが出来た。
「……結局、洞窟はどこにも繋がってなかったか……あ、まずいぞ。日が落ちかけてる」
亮太は、急いで他の人間が居そうな場所を探すことにした。