第5話:対ゴブリン①
仲間が攻撃をされた事に気が付いたゴブリンの群れは、続々と姿を現した。
「……は、話せば分かりますって……蹴っちゃった事は、不可抗力で……どうもすみませんでした!」
亮太は、両手を合わせて謝罪をした。ゴブリンは、問答無用では近づいてくる。
「あ、貴方達に危害を加える気は無いですよ!?」
両手を広げて頭の上に上げ、攻撃する意思がない事を示した。ゴブリンは奇声を発しながら近づいてくる。
他の個体より少しばかり大きいゴブリンが、亮太の目の前に立ち、木槌を振りかぶった。
「───こっちに来るなよッ!!!」
亮太はゴブリンを突き飛ばした。ゴブリンは体制を崩し、後ろへ転ぶ。
その隙に、亮太は全速力でその場から逃げた。しかし、地面に捨ててあった骨に躓き、転んでしまった。
絶体絶命のピンチ。そこで亮太は、さっき会得したスキルの事を思い出した。
───そうだ。武術修士……今なら活躍するはずだ……!
亮太は、恐怖を押し殺し、立ち上がってゴブリン達に立ち向かうことにした。
「掛かって……来いッ!」
亮太は、様になっていない構えをとった。
……亮太は、油断していた。住処へ戻ってくるゴブリンが居るだろう。という事を、一切気にかけていなかった。
背後から、大きな木槌の重い一振が脳天に直撃し、亮太は白目を剥き、地面に倒れた。
トドメの一撃を食らわそうと木槌を振り上げたゴブリンは、次の瞬間、ギュッと首を捕まえた。
「───痛ぇじゃねぇか」
亮太は、目をかっぴらき、頭から血を流しながら狂気じみた笑顔をゴブリンに向けた。