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連悪幻夢

ふりむいちゃだめ

作者: DirtyTom

 


 


 ゆうちゃんはおばあちゃんのことが大好きでした。


 ゆうちゃんはとてもこわがりでしたが、遅くまで外で遊んでいて辺りがすっかり暗くなってしまっても、おばあちゃんが迎えに来てくれるので平気でした。


 いつも近所の子たちと遊ぶ公園からの帰り道に、明かりもなくてまっくらの場所があったのですが、おばあちゃんが手をつないでいてくれるのでこわくはありませんでした。


 おばあちゃんはオバケが見える人で、時々ちょっとだけこわくなるようなことをいいました。


 こわいオバケが後ろにいる時は、おばあちゃんがいいというまでふりむいちゃだめだよ。

 こわいオバケはゆうちゃんのおかあさんやおとうさんのふりをして声をかけてくるけど、つかまると食べられてしまうので絶対についていっちゃだめだよ、と。


 ゆうちゃんはこわくてしかたがありませんでしたが、そういう時おばあちゃんはゆうちゃんの頭をなでながら優しい声で、おばあちゃんがいるから大丈夫だよ、と笑いかけてくれるので、ゆうちゃんもぜんぜんこわくなくなるのでした。


 おばあちゃんもゆうちゃんのことが大好きでした。


 おばあちゃんが病気になっていなくなってしまう時も、痛くて苦しいのをがまんしながら、泣いているゆうちゃんの頭を優しくなでて笑ってくれました。



 おばあちゃんがいなくなってしばらくしてから、ようやくゆうちゃんに元気がもどってきました。



 ひさしぶりに友達と公園で遊んでいたら、楽しすぎていつの間にか辺りは真っ暗になっていました。

 みんなにバイバイをいってから、ゆうちゃんもうちに帰ることにしました。

 他の子たちと違ってゆうちゃんだけ帰り道が反対でした。


 明かりもなくまっくらけで、オバケが出そうな場所でした。


 いつもならおばあちゃんが迎えにきてくれるその道を、ゆうちゃんは一人で帰らなければならなかったのです。


 ゆうちゃんは今にも何かが出てきそうなその道がこわくてしかたがありませんでした。

「おばあちゃん……」

 泣きそうになって思わずおばあちゃんの名を呼びます。

 すると、

「大丈夫だよ」

 と、おばあちゃんが優しげな声でいってくれたような気がしました。


 それで勇気がでたゆうちゃんはこわいのを我慢して一人で帰ることにしました。


 すごくすごくこわかったけれど、おばあちゃんのことを思い出しながらゆうちゃんはがんばって歩き続けました。

 道の横や後ろでガサガサという音がすると、すごく不安な気持ちになり立ち止まってしまいました。


 その時です。


「ゆうちゃん」


 後ろからおかあさんの声がしました。


 安心して泣きそうになりながらゆうちゃんがふりむこうとすると、


「ふりむいちゃだめ」


 という声が聞こえてきました。

 おばあちゃんの声でした。


 それでゆうちゃんは思い出したのです。

 ゆうちゃんの名前を呼んだのはおかあさんにバケたこわいオバケで、ゆうちゃんをつかまえて食べる気なのだと。


 ゆうちゃんはこわくてぶるぶると震えが止まらなくなりました。


「ゆうちゃん」


 もう一度おかあさんの声がします。

 そのすぐあとに、


「ふりむいちゃだめ」


 と、おばあちゃんの声がしました。


「ゆうちゃん、ゆうちゃん」


 今度はさっきより強く大きな声でおかあさんの声が呼びかけてきます。


「わあああ!」


 おかあさんのオバケの声を振り切るように、大声で叫びながらゆうちゃんは走り出しました。

 つかまると食べられてしまうのでとにかく逃げなければいけない、とゆうちゃんは思いました。


 それでもおかあさんのオバケの声はいつまでも追いかけてきます。


「ゆうちゃん、ゆうちゃん、ゆうちゃん!」


 前よりも大きな声が、どんどん近づいてきます。


 ゆうちゃんは泣きながら必死に走り続けました。


「ゆうちゃん!」


 すぐ後ろからそう聞こえた時、ゆうちゃんは何かにつまづいてころんでしまいました。


 ゆうちゃんの両肩をすごい力で何かが押さえつけてきます。


 それがゆうちゃんのからだを持ち上げ、くるりと返しました。


 もうだめだ、食べられる!


 そう思って観念したゆうちゃんの目に飛び込んできたのは、泣きながらゆうちゃんを抱きしめようとするおかあさんの顔でした。


 おかあさんはゆうちゃんが遅くまで帰ってこないのを心配して迎えにきました。

 ゆうちゃんの姿を見かけて声をかけた途端、急にゆうちゃんが逃げるように走り出したので、おかあさんは必死に追いかけてきたのです。


 ゆうちゃんがころんだ場所のすぐ目の前に、前日の雨で増水した川が見えました。

 もしころばなかったら、ゆうちゃんは川に流されてしまったかもしれません。


「ゆうちゃん、ゆうちゃん、ゆうちゃん……」

 ゆうちゃんの名前を呼びながらおかあさんはゆうちゃんをずっと抱きしめていました。


 ふいに恐怖がよみがえり、ゆうちゃんも顔をくしゃくしゃにしながら大声で泣き始めました。


「わあああああん! わああああん! わああああん……」


 何かがゆうちゃんの頭にふれました。

 それはゆうちゃんの頭を優しくなでるおばあちゃんの手のようでした。


 おばあちゃんの声がしました。


「もうすこしだったのに……」





 いつものことながら、どこかに似たような内容のものがあったらお許しください。

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