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彼女の思い出(3)

 女性と話すのさえ緊張するのに、襲うなんてコミュ力を使うようなことができるわけがない。

「暑いな…………」

 今日も清々しいほど晴れている。この暑ささえなければ、天気がいい日だなとしか思わなかったのに。

 今日はパソコンを持っていかないので、貴重品だけ入れたショルダーバッグで出かけることにした。

 そのショルダーバッグには、好きなゲームのキャラクターがプリントされたアクリルキーホルダーと、クッションキーホルダーがついている。

 オタクであることを隠さないスタイルだ。オタクである程度で切れる縁なら切れてしまえと常々思っている。

 結月も、鼈宮谷さんも、このアクセサリーたちをつけていてもなんのコメントもしていないし、特段問題はないのだろう。

「ミトちゃんさんになにか差し入れたほうがいいのかな」

 この暑い中来るわけで、凍った飲み物でも差し入れようかと思ったが…………場所が飲食店なのでやめた。自分のお店以外のものを持ち込まれるのは嫌だろうからな。

「ま、ミトちゃんさんもオレも暑いのは同じだからいいか…………」

 下手に気を使うより、ありのままで接したほうがいいのかもしれない。現に結月とはそれでうまくやっているわけだし。無神経にならない程度に、自然に。


「ふう…………」

 駅前に着いた。駅の付近は影になっていて、直射日光があたることはない。オレと同じように、暑さでうなだれている人がちらほらと見られる。

「人類ははやく空間を制御する技術を獲得するべきだよなあ…………」

 暑いとか、寒いとか、場所の移動とか。そういう手間を省く技術が開発されたら…………きっと世の中の仕組みがガラッと変わるはずだ。

 頭の悪いオレには、どうすれば実現可能なのかわからないけど。

 ガチャンガチャンと重めのベルが鳴る。

「おや、高嶺くんじゃないか。だいぶ久しぶりかい?」

「はい、久しぶりに来ました。半年ぶりくらいですかね」

 爽やかな挨拶をしてくれたのは、このお店のオーナーだ。愛想も良くて人からの評判は悪くないが、お人好しすぎるところもある。

「高嶺くんが受験勉強のときに毎日通ってくれていたのは助かってたんだけどねえ。また来ない? サービスするよ」

「ちょっと今お金が厳しくて…………毎日通うのはきついです」

「そうか、残念だなあ。誰か知り合いも誘ってきてくれな」

「はい、わかりました」

「ところで、今日はどうしたんだ?」

「今日は待ち合わせをしているんです。あとからひとり来ますので、テーブル席でお願いします」


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