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彼女の思い出(1)

《オレは構わないが、ふたりが気にするんじゃないか?》

《まあ、適当に話を合わせておいてくれると助かるかな。なんなら、デートしてくるでもいいよ》

《そんなこと言うわけないだろ》

《あははっ。じゃあ、明日。場所はカフェベロニカでいい? 場所はわかる?》

 カフェベロニカとは、駅前にあるちょっとお高いカフェである。お高いが味はたしかだ。オレも何度か行ったことがある。

《ああ、大丈夫だぞ。何時がいい?》

《じゃあ、12時で! ちょうどランチタイムだし、食べながら話そっか》

《わかった》

《じゃあ、また明日。よろしくね!》

 そのメッセージを最後に、返信を打ち切った。

「やべえ、オレ、女の子と会う約束を取り付けてしまった」

 我ながら実に童貞臭い発言だとしみじみ思う。だが結月以外で女の子に誘われたことなどただの一度もない。女の子に誘われると、こうも心躍るものなのだな。

 まあ、どんなことを話されるのか、わからないけど。

「…………」

 心拍数が上がってドキドキしている。さっきまで鼈宮谷さんについて悩んでいたのが嘘のようだ。

「…………くそう」

 こんな童貞臭いことを考えているようじゃミトちゃんさんに合わせる顔がない。さっさと寝て気持ちを落ち着かせよう。


 翌朝。

「暑い日にクソ暑い火を使って料理…………」

「それ、この前も言ったぞ」

 結月が朝食の準備をしていた。

「なんか最近毎日あたしがご飯の準備してない? 稜希がやったっていいんだよ?」

「この3人の中で客観的に一番美味しく料理を作れるのが結月なんだから、必然的に結月に任せることになるだろ」

「うん…………うん? なんかすんごい強引な理屈を押し付けられた気がするんだけど」

「強引じゃない強引じゃない。一番美味しく作れるやつが作る。そのほうがみんな幸せだろ」

「あたしは幸せじゃないけどーーーーっ?!」

「しかしまあ、この暑い日もいつまで続くんだろうな。もう暦の上では秋なのにな」

「どうせ9月の半ばくらいまで暑いんでしょ、知ってる。毎年のことだから」

「冬になったらなったで寒い寒いって言うんだから大して変わらんと思うぞ」

「あたしがいつも文句を言っているように言わないでよ」

「はは、冗談だ」

「なんで稜希の家はIHコンロじゃないのさ。IHが熱くないとは言わないけど、直火で炙られるよりはマシなのに」

「さあ? よくわからんが、コンロのほうが安かったんじゃないか? IHのほうが楽なのはわかるけどな」

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