彼女の違和感(8)
30分後。
「途中から観たせいですぐに終わっちゃったな。思ったより映えるネタもなかったし」
「はあ…………はあ…………」
「…………」
オレとしては物足りないという印象だったが、結月にとってはこれでも十分すぎるぐらいだったのだろう。
「終わった…………ようやく解放される…………」
まあ、たまにはこういうのもいいだろ。本人はシャレになっていないようだけど。
「次の番組は?」
「はあ…………はあ…………うん、特におもしろそうなものはないかな…………」
「鼈宮谷さんはもはやまったく怖がってないのに、心霊番組はテンでダメなんだな」
「澪ちゃんは別に生きている人間じゃないの! もう死んでいる人たちと一緒にしないの!」
「……………………」
「まあ、生きているか死んでいるかっていう決定的な違いはあるけどな」
鼈宮谷さんが自分で宇宙人かもしれないと言及したことについては、オレから触れないでおくことにした。少なくともあの時点では結月に知られたくなかったようだし。
「でもまあ、たしかに不思議なのはわかるよ。澪ちゃんが空から降ってきて、最初は恐怖を抱いたけど。今では恐怖どころか大切なお友達になっているんだもん。
そこに恐怖感はないし、むしろ澪ちゃんと一緒にいると安心感すら覚える。なぜか、心が安らぐというか…………まるでずっと一緒にいたかのような気分になるの」
「まあ、オレも鼈宮谷さんのことを悪いやつだなんて思ってない」
「…………そう思ってもらえているのは、うれしいです」
「もしも鼈宮谷さんが幽霊だったとしたら、縁を切るのか?」
「…………ビビるかもしれないけど、縁は切らないよ! だって澪ちゃんは大切なお友達だから。お友達をむげに扱うことはできないでしょ」
「…………ビビるかもしれないけど」
そこは重要事項のようだ。二回も言った。
「…………ボクは、生きているか死んでいるかわかりません。でも…………少なくともこうしておふたりとお話できているのは、生きているからではないかと思っています」
「自分の過去がまるっきり消えちゃったんだもんね。生きているという確証がないよね」
「……………………」
また、目をそらした。今度は結月も気がついたようだ。
「ねえ、澪ちゃん。もし答えたくないことだったら答えなくていいし、都合の悪いことだったら聞かなかったことにしていいことなんだけど…………聞いていい?」
「…………いいですよ」
「さっきなにを言おうとしたか、思い出しちゃった。あのね、澪ちゃんって…………本当に記憶喪失なの?」




