表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/272

彼女の違和感(3)

「ねえ、澪ちゃん」

「…………なんでしょうか?」

「澪ちゃんって、本当に記憶喪失なの?」

「……………………」

 鼈宮谷さんが無言で顔をそらした。

「えっ!? 夕立!? あーもう!」

 その瞬間。叩きつけるかのような雨が降り注いできた。まるでシャワーだ。

「うわーどうしよう! この辺は個人宅ばかりで雨宿りできるところもないし!」

「走るか?」

「走っても走らなくてもずぶ濡れには変わりないよ! …………あ。あたし折りたたみ傘持ってるんだった」

「それに早く気付け!」

 30秒後。すべてを諦めたオレは素直にゲリラ豪雨に晒されることにした。

「本当にいいの? 風邪ひきそうだよ?」

「お前や鼈宮谷さんに風邪を引かせるわけにはいかねえだろ。それにオレはパソコンの入ったリュックさえ濡れなきゃなんだっていい」

 さすがにパソコンの入ったリュックは結月に押し付けることにした。ふたりは傘を差しているとは言え、濡れないのはせいぜい上半身と荷物くらいだ。下半身は見るまでもない。

「まあ、どうせ帰ったらすぐ着替えるし。パソコンがおじゃんにならなければ大丈夫だよ。洗濯物が増えるのが面倒だけどね」

「…………結月さん。さっきはなにを聞こうとしたんですか?」

「えー。あー。なんだっけ。この夕立のてんやわんやで忘れちゃった。まあ思い出したらまた聞くよ、ごめんね」

「……………………」

 そのとき。鼈宮谷さんの視線がわずかに泳いだのをオレは見逃さなかった。


「ただいま…………」

 ふたりは下半身がずぶ濡れ、オレは頭から足の先までずぶ濡れ。まあ、こういうときこそ女性が優先だよな。女の子がずぶ濡れとかかわいそうだし。

「お前は正式にこの家で暮らしていいとは認めていないんだけどな」

「いいの。ここはあたしの第二の家。だからただいまなの」

「やれやれ…………」

「着替えなきゃ…………澪ちゃん、部屋着でいい? 今日、外に出る用事はほかにある?」

「…………ありません」

「そっか。じゃあパジャマで用意するね」

「お前ら真っ先に風呂に入ってこい、夏だとは言えこのままじゃ風邪を引くぞ」

「うん。わかってる。じゃ、あたしは澪ちゃんとお風呂に入ってくるから。じゃね」

 本来であれば全身ずぶ濡れのオレのほうが風邪を引きそうなのだが、レディーファーストだ。

「ふう…………」

 バスタオルで頭をガシガシと拭き、ソファーに敷いてから座り込む。そのまま座ったらソファーが濡れてしまう。

 学校からの帰り道。鼈宮谷さんに違和感を覚える点がいくつかあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ