彼女の違和感(1)
夏真っ盛りはとうに過ぎたが、まだセミはけたたましく鳴いている。だが、その鳴き声も、だんだんと力が弱くなってきている気もする。
「あつい…………」
「ほら、もう学校の敷地内に入ったんだからしっかりしろ。鼈宮谷さんからの返事はないのか?」
鼈宮谷さんの試験が終わる時間よりも20分ほどオーバーしてしまった。鼈宮谷さん、待たせてるよな…………。
「あっ、澪ちゃんから返事が来たよ。1号館のロビーで待ってるってさ」
「急ごう、待たせているのも悪い」
急いで1号館のロビーに到着すると、意外なほどきょとんとした顔で鼈宮谷さんが待っていた。
暑い中急ぎながら歩いてきて若干息が上がっている。ああ、疲れた。
「…………どうして、そんなに疲れ切っているのですか? それよりも、どうして待たせたと思っているんですか?」
「ああ、ちょっと近くのオゾンモールに行っていたんだよ。それでちょっと遅くなって急いできたというわけだ。オゾンモールっていうのは、簡単に言えばお買い物をする店だ」
「…………」
鼈宮谷さんは首をかしげた。
「…………そうではなくて、どうして、待たせたと気に病んでいるのですか…………?」
「え?」
「…………もともと、今日はボクの用事だけで、おふたりはお休みだったはずです。待たせたと謝るのは、ボクのほうではないでしょうか…………?」
「…………」
なるほど。そういう見方もできるのか。まったくもって待たされたと思っていなかったから、意外なところを突かれた。
「…………なので、待たせてごめんなさい、ふたりとも」
「いやいやいや! あたしたちは待たされたなんて思ってないし、むしろ終わる時間に間に合ってなくてごめんねって感じ!」
「まあ、待っている間にレポートもお出かけも済ませられたし、まったく不満とか感じていないから安心してくれ」
「…………そう、ですか。安心しました…………」
「ところで、試験の様子はどうだったんだ、手応えはあったか?」
「…………大丈夫だと思います。特におかしなことが起こらなければ、問題なく入れると思います」
「ひゅー。余裕だね! この学校にギリギリで受かった稜希とは大違いだ!」
「うるせえな、受かってるんだから同じだろ」
「余裕で受かるのと、ギリギリで受かるのでは根本的に違うんだよー。残念でした!」
「…………けっ」
「結果発表はいつだっけ? 自信があるなら、さっさと結果も聞きたいよね」
「…………合格かどうかは明後日発表だそうです。編入するかどうかをその日のうちに決めて、3日後には手続きを始めるそうです」




