日常の向こうに(7)
「でしょ。あたしは何回か食べに来てたんだけど、稜希も連れてきたくなっちゃったから」
「その出来心にオレを巻き込むな」
「おいしいものをおいしくたべる。この上ない幸せだよねー。食べ物に困る日々だったらこんな幸せは噛みしめられないからね」
「オレは油そばのおいしさよりも目の前の量に驚愕しているよ」
15分後。
「もう腹いっぱいなんだが…………」
どうにかして3分の2程度まで食べた。アブラでギトギトの麺は、胃にダイレクトに攻撃を加えてくる。
「あとたった3分の1だよ! 33.334%! あとちょっと!」
「お、おまえ、その3分の1がどれだけ大変か…………」
「がんばれがんばれファイトだよっ」
「そんなに応援するぐらいならお前が食え!」
「あたし、もうお腹いっぱい。入らない。だから稜希が頑張るしかないの」
悪魔だ。結月は悪魔だ。だが、どんないたずらをされても叱るに叱れない自分がいるのも事実だ。
くそう、うざったい一面がなければ良い幼馴染だと思うのだが…………。
結月は本当に嫌いな相手には関わろうとしない。わざわざ関わってこんないたずらをしてくるのは…………悪くは思われていないのは間違いないんだろうけど。
「くそう、注文したからには食い切ってやるよ! うおおおおおおおお!!!!」
「いっけー!! その調子!!」
40分後。
「胃が、お、も、い」
なんとかギガマックスを制覇することができた。あまりにも量が多いものを食べたため、お腹の胃のあたりがぽっこり膨らんでいるのがわかる。
「アブラの攻撃が凄まじいんだが、アレはなんのアブラなんだよ」
「背脂とか? ラー油とか? ごま油とか? ついでににんにく油とか?」
「ぜんぶすさまじいもんばっかじゃねえか…………」
「まあ、何日分の食事かわかんないけどしばらくはごはん抜きでいいね? お腹すいたら言ってね」
「ああ、この調子なら3日ぐらいなにも食わなくても過ごせそうだ…………」
「さ。食べ終わったから退散しよっか。料金は980円がふたり分で1,960円。このボリュームでこれなら安いもんだよね」
「安さと引き換えにいろいろなものを失っているような気がするぞ…………」
「今回はあたしのいたずらでやったことだから、あたしが全額出してあげる。それで許してね」
「…………けっ」
金額の問題じゃない。結月がいたずらをしたあとは、必ずなにかしらのフォローをしてくれる。それで許してしまう自分も大概なのはわかってはいるんだが。




