日常の向こうに(6)
ひょいひょいと、ニクの塊と麺を結月の器に移した。結月の器もちょっとした大盛りぐらいの量になった。
「あーっ。ズルしちゃダメなのにー」
「勝手にギガマックスで注文を取るようなやつには当然の報いだ」
「ったく。あたしだってカロリーとか体脂肪率とか考えないといけないんだからー」
「そのセリフをそっくりそのままオレが言いたいわ」
しかしまあ、いつまでも結月に文句を言っていても仕方がない。出されたものは食べる。これは一般的なマナーだ。
「…………と、その前に」
ひょいひょいと、輪切りにされたネギを結月に押し付けた。
「オレはネギが嫌いだ」
「好き嫌いしちゃいけないの。まあ、ネギだけだったら大したカロリーにならないからいいけど」
カロリーを気にするぐらいなら、なぜこのお店に来たんだろうか。カロリーなんてくそくらえ! という客層しかいないような気がするのだが。
それとも、そのデメリットも押しのけるほどこのお店がおいしいのか…………食べたことがないからわからない。
「あーっ。せっかく品物が届いたのに飯テロするための写真を撮るの忘れた」
「お前の器に移したりしてもう見た目はぐちゃぐちゃだから、今回は仕方なかったってやつだな」
「あたしの友達の女性陣にこの光景を見せてあげたかったんだけど」
「これで女性陣の共感が得られるのか…………?」
さて。頭の中が整理されてきたところで改めて目の前の怪物と向き合う。結月に多少あげたとはいえ、それでも山盛りであることに変わりはない。
お金を払って食べに来ているし、なにより残すのは作ってくれた人たちに申し訳ない。どうにかしてこれをやっつけるしかないようだ。
「じゃあ、いくよ。せーのっ。いただきま~す」
混ぜるのが一般的だそうで、それに従ってオレも混ぜる。
ギトギトのアブラがたしかに食欲をそそる。量が問題なだけで。
「…………ふん、ふんっ。おいしーよ、これ!」
「きたねーから飲み込んでからしゃべってくれ」
「早食い競争でも大食いチャレンジでもないから、自分のペースで食べるといいよ。ただ遅すぎると満腹中枢で食べられなくなると思うけど」
「つまりそれなりのペースでそれなりの量を食べ続けなければならないわけか…………大変だ」
「はい、頑張ろう!」
「うるせえ」
「大丈夫大丈夫! 稜希なら必ずや完食できるから! 応援してるよ!」
他人事やなあ、コイツは…………。
「まあ、味はたしかにおいしいな。人気店になった理由もわかった気がするな」




