日常の向こうに(5)
「はいよー! ギガマックス入りましたー!」
ここには何度か食べに来ているものの、ギガマックスを頼んでいる人は見たことがない。ここはひとつ稜希が実験台になってもらって…………。
「ふぅ〜さっぱりした。なんだ、まだ商品きてないか。そんなに時間かからなかったから仕方ないか」
「もうすぐ来るよ。楽しみにしててね」
なんだか異様にニコニコ顔の結月が不気味だ。
「っしゃーおまたせいたしゃったー。フツウ盛り油そばおもちいたっしゃったー。」
先に結月の分が来たようだ。おお、メンマ、半熟卵、チャーシュー、なると。見た目がテカテカしてめちゃくちゃアブラっぽいが、たしかにうまそうだ。
「先に食ってていいぞ、気にしないから」
「いいのいいの。あたしは稜希の分が来るまで待つよ」
「うん? まあいいけど…………」
本当にニコニコした顔が不気味だ。
「っしゃーおまたせいたしゃったー。ダブルオニクニンニクアブラマシマシのギガマックスお持ちいたしましたーっ」
ドン、と。目の前にアブラでテカテカした山盛りの物体が置かれた。
「……………………」
なんだろう。目の前の光景に理解が追いついていない。
「あのー。お客さん。大丈夫っすか?」
「……………………」
「お客さーん?」
店員さんに心配そうな顔で見つめられるが、それどころではない。
「なんじゃこりゃぁ?!?!???!!!」
見た目だけで1キロは超えてそうな山盛りの物体。このお店ではそれをギガマックスと呼ぶらしい。
「あは。稜希なら食べられるかなって。ギガマックスにしても料金は980円だからお買い得だよね」
「……………………」
「あはー。稜希?」
状況を理解することを拒絶している脳で必死に言葉をつむぐ。
「お前…………お前…………」
「大丈夫大丈夫。稜希なら食べられるって。もし残してもこのお店は追加料金とかかからないから!」
結月にひっぱたくよアンタ…………とよく言われているが、今ばかりはオレが結月を引っ叩きたかった。暴力になるからやらないけど。
しかしどう見てもすごい光景だ。麺が山盛りになっているせいで、トッピングの具材が器の縁に追いやられている。麺の山のてっぺんにとうてい具材は乗らない。
「お前、お前、これを、ぜんぶ食べろって言うのか…………?」
このギガマックスとやらは成人男性が1日に摂取するべきカロリーの何日分だろうか。少なくとも3日分はありそうだ。
「これ、お前食べろ! 普通盛りならちょっと多いぐらい大丈夫だから!」




