不思議な女の子(3)
「…………今は、わからないです」
「そっか。じゃあ仕方ないね。これからどうしよっか。あたしたちは警察を呼んで保護してもらおうと思っているんだけど。そのほうが安全だし」
「…………警察は、ちょっと…………」
「どうして? 行くあてがどこかにあるの?」
「…………ないですけど…………ちょっと…………」
「うーん、困ったなあ」
「鼈宮谷さんなんて聞いたことのない名字だな。オレは初めて聞いた」
「そんなことよりこの子をどうするか考えてよ。警察に行くのが嫌なら、行くあてがないじゃん」
「……………………」
頭の中でアレなことを思いついてしまった。だが、それを口に出すわけにはいかない。口に出したら、オレが大変なことになってしまうから。
「困ったなあ。うーん…………じゃあ、稜希の家に行く?」
「え!?」
オレの考えていたことがピタリと言い当てられてしまった。おかしい、顔には出していなかったはずなんだけど。
「ああ、稜希ってのがこっちの図体のでかい男ね。高嶺稜希。この人なら一人暮らしだし、部屋数もたくさんあるから少しは居候できるよ」
本当なら素直に警察へ連れて行ったほうが断然いいに決まっている。だが、この子からは…………警察へ行ってはまずい事情を抱えているのかもしれない。
いや、警察に行ってまずい事情を抱えた人間をウチに招き入れるのは普通に嫌なのだが。
「稜希、今は両親がいないから一人暮らしじゃん! 細かいことを気にせずに居候できる環境はそこしかないよ」
「待て待て。オレの家を下宿代わりにするんじゃない。別に親だって帰ってこないわけじゃないんだから、家に知らないやつがいたらやばいだろ」
「そこは彼女とでも言い張ればいいじゃない。同棲の準備してるんだ、とか適当にホラ吹いて」
「なんじゃそりゃ!」
「じゃあ決まりね! ただ、警察に行けない理由もいつか教えてね?」
「…………わかりました…………」
「じゃあ、行こっか」
「…………うん…………」
「ほら、帰りは稜希が運転するんだから、ちゃんと帰るんだよ」
「はいはい…………って、いつの間にかオレの家に来ることが決定してるし」
「それ以外どこに行けって言うのよ。住む場所すらないのはかわいそうでしょ?」
さっきまではずいぶんと怖がっていたのに、ちゃんと会話が成立してコミュニケーションが取れたからといって安心しているようだ。
まだここからトランスフォームしてバケモノになる可能性だって捨てきれないのに。