日常の向こうに(4)
「じゃあ、女性が喜びそうなお店…………飯屋にでも行くか? 昼どきで腹も減ったし」
「…………」
まんざらでもない表情をされた。
「うーん。正解ではないけど、間違いでもない。70点くらい。まあそれでもいいかな」
「めんどくせえやつだ…………んで、どんな飯が食いたいんだよ」
「うーん、悩むなあ」
「オレのおごりってのはなしだぞ。お金厳しいんだから」
「不正解だったから稜希に出させようと思ったんだけど〜」
「油断も隙もありゃしねえなお前」
「じゃあーどこのお店にしようかな。ありきたりじゃつまらないしー。オゾンモールに最近入った話題のお店に行ってみる?」
「最近入ったお店? そんなもんあったっけ」
「あるのあるの! 本来なら独立した店舗でやっているお店なんだけど、一般のお客さんを増やすためにオゾンモールに出店することになったらしいよ!」
「へえー。じゃあそこに行ってみるか、あんまり高いお店にはするなよ」
「まあ1,000円ぐらいかな、そこまでめちゃくちゃ高いわけじゃないよ」
「わかった。案内してくれ」
オゾンモール内を歩いていると、香ばしいニンニクの匂いが立ち込めてきた。
「なんかいい匂いがするな」
「この匂いのお店がこれから行くところだよ」
「麺屋、三郎…………なんだ、ラーメン屋か?」
「ちょっとちがう。ここは油そばのお店。ラーメンと似ているけどスープがなくてアブラが入っているの。見た目は悪くなるけど全部混ぜて食べる。まぜそばとも言うよ」
「オレは食ったことないけど、なんだかうまそうだな」
「でしょでしょ。だから一度行ってみたかったんだよね〜」
「へいらっしゃい! ご注文をどうぞー!」
席に着くやいなや、まくしたてられるように注文を急かされる。ちょっと忙しいな、ここ。
「とりあえずオレはよくわからんから、全ノーマルでお願いするよ。まずはどんな味か試してみたいしな」
「ところで稜希、トイレは大丈夫? 食べる前に行ってきたほうがいいんじゃない? トイレから戻ってくるぐらいにちょうど食べられるようになるよ」
珍しく親切な提案をされた。
「お、気が利くな。じゃあ行ってくるか。代わりに注文を頼んだぞ」
「はいはーい!」
なにも気付いていない稜希がトイレのために去っていった。
「店員さーん」
「はいよー!」
「注文いいですかー。ダブルオニクニンニクアブラマシマシのギガマックスがひとつ! 全部フツウがひとつ! よろしくおねがいしまーす!」




