日常の向こうに(3)
ま、真剣にやっているのはいいことだ。余計な口を挟まないでおいたほうがいいだろう。
1時間半後。
「ん。んんーっ。終わったあ! よし、これでレポートの締め切りに悩まされることはないね!」
「おい、大切なことを忘れているぞ」
「うん? なに?」
「書いたレポートをインターネットから提出するのを忘れているぞ。せっかく頑張ったのに提出忘れで期限が過ぎたらもったいない」
「だーいじょうぶだって! そういうのは忘れてないから! …………ちょっとしか」
「ちょっとしか忘れていないってなんだ…………」
「よし、これでレポートはやっつけた。あとの3時間半でちょっち頑張るぞ」
「頑張るって、なにを?」
「今から行くんだよ、稜希も!!」
「お、おいっ!!」
主語もなく連れてこられたのは、学校の近くにある複合型商業施設。ウチの学校からも、帰りに寄っていく人がものすごく多い、たまり場スポットだ。
「オゾンモールに来るのも久しぶりな気がするな」
「ここ最近は暑くて出歩く気にならなかったし、そもそも澪ちゃんが来てからまともに外出をしてないからね。たまには息抜きしようと思ったんだ」
「それなら、試験が終わってからでもよかったんじゃないか? 鼈宮谷さん、こういうところに興味を持つだろうし」
「…………」
露骨に呆れた表情をされた。
「…………本当にアホだね、稜希」
「なんだよ。別に間違ったことは言ってないじゃねえか」
「ふん。別になんでもないよっと」
なんだろう。本当に間違ったことを言ったつもりはなかったんだが。謝っても無駄だろうから黙っておくことにしよう。
「で、オゾンモールに来たはいいもののどうするんだよ。オレは特段用はないぞ」
「さあ。あたしがどういう行動を取りたいか当ててみて。当てたらあたしのおごりでなにかするから」
くそめんどくさいやつだ。《アタシがなにを考えているかわかる?》と同じくらい面倒だ。当てても当てなくても不満を言われそうだ。
「んなもん知るかよ…………と言いたいところだが、当てないとお前が不機嫌になるんだろ」
「そうねー。口に出てるけど」
じゃあ、どうするかな…………。
女性が喜びそうなお店や好みをまったく知らない。一般的な女性ならまだしも、結月のことはさっぱりわからん。
どこへいこう…………?




