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まぶしい世界(9)

 それがどうだ。人々を異なる世界に追いやり、優れた人間だけが残る世界を幸せと言えるのだろうか。

 それならば、《外》を知らないこの世界のほうがよっぽど幸せだ。なにも知らなくたって、生きることに困ることはない。むしろ、知らなくていいことを知るストレスがない。

「むにゃ…………オニクダブルニンニクアブラマシマシたべたい…………」

「…………本当に、眩しい」

 ボクも、最初からこの世界に生まれ落ちていれば、きっと幸せに生きることができただろうに。

「…………」

 ぱたりとノートパソコンを閉じ、薄明かりに照らされた天井を見上げる。

 夜とは言っても、屋外の街灯などで部屋が真っ暗になることはない。暗闇に目が慣れてきたところで、部屋の様子がしっかりと見えてくる。

「…………目の前にそびえ立つ、すさまじい高さの壁…………」

 なんの取っ掛かりもない、そびえ立った壁。今のボクには、それを乗り越えることはできない。

「…………それを打破するためには、まだまだ…………時間が、足りない…………」


「ん。んんーーっっ。ふああ…………よく寝た。って、今何時?!」

 時計を見ると、まだ7時だった。

「あら、思ったよりもはやく目が覚めちゃった。昨日いつ寝たんだろ? 澪ちゃんと例のアレ動画を見ようと思ってたのに」

 自分がいつ寝たのか、記憶にない。澪ちゃんと一緒に見た記憶もない。

「ま、いっか。寝ちゃったものは仕方ないし。7時かあ…………どうしようかな」

 今日は澪ちゃんの試験の日だ。起きるには早いが、二度寝するほどの時間もない。

「しゃーない、起きよっかな」

 あたしの隣で澪ちゃんがすやすやと寝ていた。今日はタイマーでエアコンの電源が入るようにセットしていたため、ジリジリと干からびることなく安眠することができた。

「ご飯でも作っておけば稜希が喜ぶでしょ」

 料理は嫌いではない。むしろ、作った料理を食べておいしいと言ってもらえるとすごくうれしい。

 材料費や光熱費は稜希の生活費の中から出しているし、あたしは料理の手間を提供しているだけ。お金はかかっていないし、料理をするだけで喜んでもらえるから正直うれしい。

 稜希のそばに居たいという理由で家に押しかけたのは事実だけど、稜希のありがたがる顔を見たかったのも理由のひとつにある。

「さて、準備しよっと」

「…………すん」

「ん? 澪ちゃん起きた?」

「…………あ。結月さん。おはようございます…………よく眠れましたか?」


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