まぶしい世界(6)
「…………結月さん」
「うん?」
「…………面白い動画をありがとうございました。ボクはこのパソコンでやらなければいけないことがありますので、先に寝ていてください」
「やらなきゃいけないことって?」
「…………まあ、大したことではありません」
「ううん? 気になるなあ」
食い下がられるとボクとしてもやりにくくなる。少し強引な手段だが、朝までぐっすり眠ってもらうことにしよう。
「…………結月さん」
「なに?」
「…………ボクの目を見てください」
目が合った瞬間。結月さんの意識が自分の中に流れ込んでくるような感覚がした。この行為自体に有害性はない。眠らせるだけで、朝には今まで通り目を覚ましてくれるだろう。
「…………ごめんなさいね」
《友人》である結月さんにこんなことをするのは申し訳ない。でも、こうするしかないんだ。
「すー…………すー…………」
身体を揺さぶっても、声をかけても起きることはなかった。これなら隣で黙々と作業する分に支障はなさそうだ。
「…………こちらの世界にも、コンピュータというものがあるのですね」
ボクには、この世界の情報や、空から降ってきたあとのことは本当になにも知らない。一切知らない世界に放り出された。
でも、ボクはボクの本質を見失ってはいない。ボクの主目的はこの世界に来て情報を集めることであり、その責務を背負っていることは事実だ。
ボクの知り得ることができる範囲で、この世界のことについて調べた。この世界は《外》を知らない。この世界の中だけで完結している環境だ。
それはそれで幸せなのだろうなと思った。稜希さんや結月さんをはじめとして、なにも知らないまま豊かに暮らすことが…………こんなに明るいことだとは思わなかった。
「…………ごめん、なさい」
ボク個人としては、稜希さんや結月さんになんの恨みもない。むしろ感謝しているぐらいだ。あの水卜さんもきっと優しい人だろう。
だが、ボク個人がそう思っていても、ボク以外が同じ感情を持っているとは限らない。ボクが《生贄》になったからこそこの程度で済んでいるのであって…………。
そうでなければきっと、大変なことになっていただろう。ボクはボクの責務を全うしなければならない。そのためには、まだまだ情報を集めなければ。
「…………」
黙々と、パソコンとインターネットを駆使して情報を集める。実際に起こった出来事から、信ぴょう性のかけらもないオカルト情報まで。




